チームの立ち位置を見える化する「関係マップ」ITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(10)(2/3 ページ)

» 2014年06月02日 19時00分 公開
[エディフィストラーニング 上村有子,@IT]

状況を把握するために、組織関係のマップを描いてみよう

 状況把握のために、まずは人間関係や部署間の関係を正確に把握するところから始めましょう。このとき、リーダーが考える組織関係が間違っていると意味が無いので、上司の協力を仰ぐようにしてください。

 頭の中で考えるだけでは自分の考えもまとまりにくいし、上司の意見をもらいにくいので、マインドマップ風に図解しましょう。

 まず、A4の紙を用意し、横長に置いて、自分のチームを紙の中央に書き入れ、○で囲みます。その周りに放射状に、仕事上の利害関係者や部署を書き入れましょう。

 自分のチームの○の左側に自分たちが影響を受ける主体を、右側に自分たちが影響を及ぼす可能性がある主体を書き、それぞれを○で囲みます。影響を強く受ける主体ほど近くに書きます。影響の大きさを○の大きさで表すのもよいでしょう。

 次に、それぞれの主体の脇に、自分たちのチームとどんな関係にあるのか、具体的に書き入れます。影響を受け、同時に影響を与えるという主体もあるでしょうから、左に置くか右に置くかは、そんなに厳密にこだわる必要はありません。

 これが静的なマップです。現時点でどんな関係の中で自分たちが仕事をしているのかが、つかめます。忘れているところや自分で気付かないところを洗い出す目的もあるので、直接影響が及ぶと思う範囲だけではなく、間接的に影響が及ぶと思う範囲まで、なるべく書き入れるようにしましょう。

 この時点で一度、抜けがないか、関係性に間違いはないか、上司にチェックしてもらうと良いでしょう。特に間接的な主体については、上司からより詳しい全体像を聞くことが、人間関係や組織全体への窓を開く良いきっかけになるはずです。

動的な情報を書き入れる

 次に、ペンの色を変えて、直接影響のある主体に対して、現在行っているアクション、またはすでに計画済みの予定をそれぞれ書き入れます。例えば「メンバー3人が常駐で作業」「月に1回、定例会議実施」「週に1回、メールで進捗報告送信」といった具合です。

 1枚の図に並べて書き出すと、ある主体とは密に連絡を取り合っているけれど、もう一方の主体とは関係が薄いというように、客観的に比較できます。関係の薄い相手に対しては、必要に応じてこちらから働き掛けて、ミーティングの回数を増やすなり、話をする相手を増やすなり、アプローチを工夫すると良いでしょう。

 この書き込みは、状況に応じてどんどん増やしたり減らしたりして、変更を加えてください。1週間に1回は情報交換の頻度の部分を見直して、「最近連絡が減っているな」などのチェックをします。これが動的なマップです。何度も書き換えることになるので、静的なマップはコピーをとっておきましょう。

キーパーソンを把握する

 マップの中には、キーパーソンの名前を書き入れます。なるべく肩書や、どういう意味でキーパーソンなのかも書き入れます。

 この辺りは、上司に特に細かくチェックしてもらってください。なぜその人がキーパーソンなのかをリーダーがよく理解できていないために、失敗を犯すケースがたくさんあります。特に自分と直接接する担当者だけではなく、その人の上司、その人のエンドユーザーなど、背後で力関係に影響を及ぼす存在を明確にしましょう。例えば納品先の顧客のシステム部の担当者だけを把握するのではなく、そのシステム部に大きく意見するのは、企画部なのか、実はエンドユーザー部門の営業部の渉外担当なのか、経理部門の出納係なのか、できる限りたどって明らかにしましょう。

 最後に、キーパーソンの中でも長く付き合いがある人や部署については、今の仕事だけではなく過去にさかのぼって、自分の前任者がどんなふうに関わっていたのか、会社として過去にどんな経緯があったのか、そのマップをきっかけにして上司からいろいろと聞き出すとよいでしょう。協力会社とは長い付き合いがあり、互いに助け合いながらよい関係を築いていることも多いはずです。普段、ことさらに表立って話を聞く機会は珍しいかもしれませんが、マップを前にすれば、ひょんなきっかけで「そんなことがあったんですか!」と、重要な情報を聞き出せるかもしれません。

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