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» 2014年07月04日 20時00分 公開

@IT読者1000人くらいと識者に聞きました(2):初めてのクラウドサービス 見方・選び方・調達の仕方 (2/2)

[原田美穂,@IT]
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クラウドサービスの波と、いまこれからのIaaS導入はどうするべきか?

編集部 安心感と言ったときに、前回の記事ではSLAや各種セキュリティ認証といった条件が挙がっていましたが。

川田氏 主要なクラウドサービス事業者はPCIDSSやISMSなどの認証を取得しており、一定の信頼性を担保できています。

 こういったサインが見られないその他の事業者でも、シンプルに事業者の事業継続性や資本の状況そのものを見るような、コンサバティブなチェックをすれば委託先としての信頼性をユーザーが判断することは十分可能でしょう。

 多くの場合、一般的なIaaS事業者が提供しているSLA99.95%という数値は十分なスペックなんです。それでも不安を感じる場合は、同一事業社サービスでHA(Hight Available)構成にして可用性を高めたり、複数事業者を利用して「コンテナ」単位でポータビリティを持たせて運用したりといったことも考えられます。クラウドのコストメリットを享受しながら、より高い可用性を得る手段もいろいろとそろってきています。

 一般論として、きちんとした事業者と付き合う限り、「クラウド利用の不安」というものは今や都市伝説に過ぎないといってよいでしょう

単なる置き換えではなく、“最適化の達人”の知見を引き出す

編集部 一方で、既存環境の「置き替え」だけでは、IaaSのコストメリットを理解しにくいかもしれません。クラウドの、いつでも「使いたい時に使いたい分だけ」という特性を理解しない調達では、案外、コスト高になるケースもあり得るのではないでしょうか?

川田氏 これもその通りです。オンプレミスシステムの設計は、資源規模が固定であることを前提に、制約時間内に全ての処理が完了するようにサイジングされていました。

 この考え方はクラウド利用の場合は少々邪魔になります。クラウドに不慣れな方が構築すると、つい、インスタンスを大きめに選択したり、資源割り当てを保守的に設定する傾向があります

 ただ、実際に運用していく中で、「こんなに大きな(高価な)インスタンスはいらないな」と気付いて、小さなインスタンスでデプロイし直すなど、試行錯誤を繰り返すことで徐々に慣れていくケースが多いと思います。

 このような、トライアルアンドエラー式の学習ができるのも、クラウドがオンデマンドセルフサービスで、メジャードサービスだからですね。

 それでも不安な方は、IaaS調達のプロのような人に頼むのもよいでしょう。ある人が作成した見積もりを、劇的に安く実現する(少ないコストで同等の効果を得られる実装方法を調達する)ことができる“最適化の達人”のような人材が、国内のクラウドサービス事業者の中にも存在します。彼らの知見はなるべく引き出した方がよいでしょう。

クラウド事業の第2フェーズは?

 川田氏は現在の、いわゆる「クラウドサービス事業者」の置かれている状況について、こう分析した。

川田氏 ここ数年で立ち上がってきたIaaSを中心としたクラウドサービスは、群雄割拠の混戦状況から優勝劣敗が市場ではっきり目に見える状況に移りつつあります。

 既に国内でも世界市場で戦えるレベルの自信を付け始めている事業者もちらほら出てきていますし、従来方針に見切りを付けて、提携戦略に切り替える事業者も増えています。撤退・売却事業もいくつか現れています。全般に、クラウド定義に忠実な基礎を持つ事業者が好調で、看板に偽りのある事業者は不調ですね。

 ただ、NIST(米国国立標準技術研究所)のクラウドの定義を満たすようなプロバイダーではなくとも、たとえ単なる「ホスティング」であっても、やはり独自の付加価値を築いている事業者は好調です。言い換えると、「どのような名前でサービス提供するか」といった表層的なことではなく、「実質的に、どのような価値をどのように提供するか」を意識してサービスを組み立てている事業者が好調なんです。

 AWSは豊富なメニューと強力なコミュニティで幅広い支持を集めていますしMicrosoft Azureは“基礎票”として既存Windowsサーバーユーザーの受け皿となることを狙う一方で、現在ではLinuxにも対応していますし、機械学習サービスなど従来にない高度な機能の提供もアナウンスしています。

 また、クラウド市場の裾野が広がっていることも注目されます。以下のグラフを見てください。

(川田氏が独自にIaaS事業者を調査したグラフ。出典:「発展途上にあるIaaS、いま着眼すべきポイントとは?」(@IT))

川田氏 図の左下を見てください。ここのエリアにはユーザー数は多様なスタートアップを内包する右上の事業者ほどではないものの、日本の産業を支える企業のシステムを支援している企業が多数存在します。

 こうした事業者は日本ならではのニーズをよく知っており、また、長い信頼関係を企業との間に構築していることが少なくありません。ここ数年では日立など、左下の事業者がAWSやAzureなどと相互接続する事例が増えています。このような形で右上の事業者の長所と左下の事業者の持つ顧客基盤を合わせたような事業展開が見え始めています。日本市場全体が一気にクラウドサービスに移行を始める予兆なのではないかと期待しています。

 今回までで俯瞰したユーザーの状況、IaaSを中心としたクラウドサービス事業者の状況を踏まえ、次回は、実際にこうしたクラウドサービスの利用者、クラウドサービスを利用したソリューションを展開する事業者らのコメントを紹介していく。

 ユーザーと直接対話する中で、利用者へのメリットや、ソリューション提供者としてのクラウド業界への見解、今後の企業インフラの在り方について、複数の視点から議論を進める予定だ。

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