知らないと後に悔やまれる「バックアップ」の課題、方法、特長、使いどころ@IT主催セミナー「誰も教えてくれなかったバックアップの極意」リポート

» 2014年07月16日 10時00分 公開
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 @IT編集部は2014年6月25日、主催セミナー「誰も教えてくれなかったバックアップの極意」を開催。現場経験が豊富なコンサルタントやエンジニアが、データバックアップ戦略の立案の仕方から、仮想環境のバックアップ方法、統合バックアップ製品の使いどころなどを解説した。当日の模様をリポートする。

発動経験からの至言「BCPの70%は、うまく動かない」

 セミナーではまず、ニュートン・コンサルティング 代表取締役社長の副島一也氏が「“とりあえずバックアップ”からの脱却 ここでしか聞けない、データバックアップ戦略」と題する基調講演を行った。副島氏は、1998年から英国で災害対策や危機管理、事業継続マネジメントなどのコンサルティングを行うNEWTON ITの立ち上げに参画。その後、同社の代表取締役に就任し、2005年のロンドン同時多発テロや、バンスフィールド爆発事故からのBCP発動を経験した。

ニュートン・コンサルティング 代表取締役社長 副島一也氏

 石油タンク22基が炎上したバンスフィールド爆発事故では、付近のオフィスビルが倒壊したため、周辺地域は封鎖され、事業継続ができなくなったという。事故発生が日曜日の早朝ということで死傷者は少なくて済んだものの、倒壊したオフィスに立ち入ることはできず、周辺封鎖によりバックアップテープを取りに行くこともできなくなった。封鎖は数カ月続き、バックアップデータを遠隔に保管しておけばよかったと悔やみながらも、数カ月間、業務を復旧できずにいた企業も多かったという。

 そうした経験を踏まえ副島氏は「バックアップを取るだけでは何の意味もない。バックアップは、いざというとき必要に応じてきちんと使えるということになって初めて意味を持つ」と強調した。副島氏によると、バックアップ戦略を難しくする理由は、経営からの要件がはっきりしていないことや、いわゆる縦割りの組織構造を背景として責任と権限が分かれてしまうことなどだ。そのため、バックアップを適切に使えるようにするためには、適切なBCPを策定し、運用することがポイントになる。

 とはいえ、BCPもまた70%が十分な検証なしではうまく動かないのだという。これは東日本大震災でも見られたことだが、実際のケースとしては例えば、「緊急連絡網に記載された電話番号が間違っていた」「上司や、上司の上司に連絡が取れない場合を想定していなかったため対応が遅れた」「停電により指紋認証システムが落ちサーバールームに入れなかった」「集合場所は決めていたが集合後の対応は決めていなかった」などがあるという。

 「ビジネスニーズを理解すること、そのリスクを認識し対策を打つこと、対策の検証を行うこと。この3つをうまく運営できて初めてIT-BCP/DRは意味のあるものになる」と副島氏。その上で、IT-BCP策定と運営の方法、DRや演習計画の方法、最新の顧客事例を紹介。業務とITをひも付けし、日々の取り組みにしていくことが重要だと訴えた。

VMware仮想環境における代表的な4つのバックアップ方法と特長、使いどころ

 続いて登壇したのは、伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守事業推進本部 ITインフラ技術推進第1部 ストレージ技術推進課の木島亮氏。木島氏は「技術面から見た大規模VMware環境に適したバックアップ方法とは」と題し、VMware仮想環境における代表的な4つのバックアップ方法と特長、使いどころを紹介した。

伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守事業推進本部 ITインフラ技術推進第1部 ストレージ技術推進課 木島亮氏

 仮想環境における4つのバックアップ方法とは、「ネットワークバックアップ」「VMDKバックアップ」「ストレージのクローン機能」「VADPバックアップ」だ。

 まず、「ネットワークバックアップ」とは、仮想マシンにバックアップエージェントをインストールして、物理環境と同じようにファイルをネットワーク経由でバックアップする方法だ。主にデータバックアップ用途で用いられ、ファイル単位でバックアップ/リストアできることが特長で、データベースの整合性を取るには、この方法が必要になる。

 次の「VMDKバックアップ」とは、NFSのデータストアをバックアップサーバーにマウントし、仮想マシンファイルのVMDKを直接バックアップする方法だ。主にシステムバックアップ用途で用いられ、仮想マシン単位でバックアップリストアできる。一方で、実使用量に関係なくVMDKファイル全体を常にフルバックアップするなど効率が悪く、VMwareでも非推奨となっている。

 3つ目の「ストレージのクローン機能」とは、ストレージの機能を使用して、データストアのボリュームのクローンを取得する方法。システムバックアップに適しており、ブロックレベルの増分コピーのため、バックアップ時間が短いという特長がある。また、ターゲットボリュームがリストア不要で使用可能になるなど、DRサイトでの復旧時間も短縮できる。

 最後の「VADPバックアップ」とは、vStorage API for Data Protection(VADP)というVMwareのバックアップAPIを使う方法だ。仕組みとしては、vCenterと連携して仮想マシンのスナップショットを実行し、書き込みが停止しているVMDKファイルをバックアップし、その後スナップショットを削除するものだ。基本的には仮想マシン単位のバックアップとなるが、ブロックレベルの増分バックアップが可能で、ストレージ環境に依存しないこと、バックアップデータにある程度整合性があることが特長だ。実装や機能はバックアップ製品ごとに異なる。

 「小規模環境では、データとシステムをネットワークバックアップで実施するケースが多い。ただ中規模や大規模になると、データバックアップをネットワークバックアップで行う一方、システムバックアップにストレージのクローン機能を利用したり、VADPバックアップを利用する必要がある」(木島氏)

 木島氏としては、注目しておきたいのはVADPバックアップだという。製品の実装レベルが上がり、ストレージのクローン機能と同程度に高速なバックアップリストアが可能になってきた。その他、ストレージ設計が容易で世代数を多く保持してもコストが低いこと、物理環境も統合バックアップ可能なことなどのメリットがある。さらに、技術的にユニークな点として、スワップ領域と削除済みデータを排除したバックアップ、VADPバックアップデータからのファイル/アプリデータのリストア、VADPによる永久増分バックアップなどがある。

 特にVADPによる「永久増分バックアップ」は、日々の増分バックアップを前日までのバックアップと合成し、高速にフルバックアップを作成する技術。増分バックアップの取得サイズ・所要時間でフルバックアップを実現するという「夢のようなシンプルなバックアップ運用」(木島氏)が可能だ。

 「仮想環境のバックアップの課題のトップは、バックアップに時間がかかること。その背景には、スキルやノウハウの不足、適切なバックアップ手段が分からないことなどがあると考える。VADPをはじめとして環境に適したバックアップを選択してほしい」(木島氏)

今日のデータ保護の課題に有用なのはアプライアンスによる統合バックアップ

 続いて登壇したのは、シマンテック セールスエンジニアリング本部 IMソリューションSE部 シニアプリンシパルセールスエンジニアの勝野雅巳氏。勝野氏は、「多様化する環境の統合バックアップにおける検討すべき事項と解決策」と題し、今日のデータ保護の課題と、シマンテックが提供するソリューションを紹介した。

シマンテック セールスエンジニアリング本部 IMソリューションSE部 シニアプリンシパルセールスエンジニア 勝野雅巳氏

 勝野氏はまず、今日のデータ保護の課題として、「ITとビジネス要求の間での板挟みがある」と指摘。IT環境は、年1.5倍増のペースでデータが急増し、物理と仮想の混在など、ますます複雑化が進んでいる。その一方で、ビジネスへの影響を最小限にするためにバックアップ時間の短縮や、いち早くビジネスを再開したいというニーズから迅速確実な復旧が求められるようになっている。IT部門は、こうした相反する要求の中で頭を抱えているという。

 こうした課題にシマンテックが提供しているのが「Symantec NetBackup」を中心としたバックアップソリューションだ。同社のソリューションの大きな特長は、あらゆる環境のバックアップを高いレベルで提供できること。具体的には、VMwareなどの仮想環境から、NAS上のデータ、ファイルサーバー、データベースやアプリケーション、NetApp FASシステム、WAN経由の遠隔地バックアップなどを、ディスク、テープ、クラウドなどに向けてバックアップし、1つのコンソールで一元的に管理できるようにしている。

 このうち、VMware環境については、木島氏が解説したVADPを使った高速バックアップが可能で、フルバックアップイメージの仮想合成にも対応する。これにより、ビジネスへの迅速な対応が可能だ。その点では、バックアップした仮想マシンを直接起動できる機能も有用だ。まず緊急度の高い業務の仮想マシンのバックアップを立ち上げ、その間にリストア作業を行って、リストアが済み次第、切り替えるといったことが可能になる。この機能を使うと、例えば、1TBのExchangeを92秒で立ち上げることができるという。

 高速性という点では、LAN/WAN環境の高速ファイルバックアップが特長的だ。重複排除処理、ユニークデータのみの転送、合成バックアップなどを組み合わせることで、短時間でフルバックアップイメージを作成できる。これを利用することで、120万ファイル1.2TBのバックアップを7時間47分から3分30秒に短縮できたケースがあるという。

 ファイル復旧可能なボリュームバックアップも有用だ。通常、ファイル単位でリストアするにはファイルバックアップが必要だが、ファイル数が多いとバックアップ時間がかかる。一方、高速なボリュームバックアップ(RAWバックアップ)はファイル単位でのリストアができない。そこで両者を良いとこ取りした「Flashバックアップ」という方法を用いて、ボリューム単位の高速なバックアップから、ボリューム単位でもファイル単位でもリストアできる機能を実現したという。

 「こうした機能を搭載し、十分な拡張性を持ったNetBackupを有効に活用するには環境に合わせてテーラーメードで作り込むことがポイントになる。パフォーマンス、容量ともに、定型の範囲の拡張性で十分な領域も多く存在している。そうした領域に対しては、迅速に導入が可能で、運用コストも抑制可能なアプライアンス製品を勧めている」(勝野氏)

 例えば、アプライアンス製品の「Symantec NetBackup 5230」は、導入やアップグレードが簡単で、保守の一元化により障害対応も迅速にできることなどが特長だとした。

パネルディスカッションでは、活発な質疑応答も

 セミナーではこの他、副島氏、木島氏、勝野氏によるパネルディカッションが行われ、バックアップが困難な理由や上手なバックアップのポイントなどを議論した。会場からも真剣な質問が飛ぶなど、バックアップが今日的な課題であることを強くうかがわせた。

パネルディカッションの様子。左からモデレーターの@IT編集長 内野宏信、副島氏、木島氏、勝野氏

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提供:株式会社シマンテック
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年8月15日

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