PostgreSQL 9.4の主要な改良点、9.5以降の展望Database Expert イベントレポート(3/3 ページ)

» 2014年07月28日 20時00分 公開
[原田美穂@IT]
前のページへ 1|2|3       

9.5での実装計画、そして2020年のPostgreSQLのポジションは?

 Momjian氏によると、さらに次のバージョン(9.5)では、よりスケールアウト性能を高める予定だという。PostgreSQLのスケールアウト性能についての評価は、日本国内でも検証が進んでおり(関連記事:「PostgreSQLは80コアまでリニアに性能アップする」)、一定の性能が期待できることが証明されつつある。しかし、次のバージョンではより高いスケールアウト性能を目指すことになるようだ。

 Momjian氏は、まだ、どのような実装を採用するかは検討中、としながらも、「現在PostgreXCで実現している機能をベースにする可能性もある」との見解も示した。PostgreXCは、マルチマスター型のクラスタリング機能を持った大規模スケールアウトが可能なデータベースアプリケーションを目指して開発が進んでいるもの。EnterpriseDBおよびNTTデータが積極的に開発に参加している。現行のPostgreXCの性能評価についても、PGEConsにおいて資料が発表されているので、そちらを参照してほしい。

 また、Background Workerとダイナミックシェアードメモリを活用した並列処理の効率化についても、さらなる実装を検討しているという。

 さらにその先はどうなるのだろうか? Momjian氏は、まずPostgreSQL開発プロジェクトの現在までの軌跡を以下のように整理した。1970年代、OSS文化の本拠地ともいえるカリフォルニア大学バークレー校で生まれたIngresを源流に持つOSSプロジェクト、PostgreSQLの歴史は長く、1986年までさかのぼることができる。2000年ごろまでに標準SQLへの準拠に注力し、エンタープライズでの利用を想定した機能改善・改良が進んだのは直近10年ほどのことである。その間、エンタープライズデータベースシステムに適用できるような、安定性や信頼性を高めるためのサブプロジェクトも多く展開されている。過去、多くの人を苦しませたVACUUMの取り扱いについても、8系でのHeap-Only Tuples(HOT)の実装などの改良が行われ、9系からはバイナリレプリケーション機能が本体に実装されている。

 図を見ると分かる通り、2012年までのリリースで、多くのエンタープライズ機能要件を満たす実装が実現したことから、今後は「フレキシビリティ」を重視した開発を進めていく方針であるという。

 こうした開発の流れを受け、次の6年、2020年のPostgreSQLはどのようなデータベースとして成長しているのだろうか。Momjian氏は、次の図を示した。

 Momjian氏は「オラクルデータベースは、ハイエンド/エンタープライズ領域で多くの実績があるが、他の領域は得意ではない。そもそも、クラウドのワークロードではライセンスコストの問題を解決できていない状況にあると見ている。一方、クラウド領域にはNoSQLなどがあるものの、エンタープライズレベルでの堅牢性に関しては実装次第だ。このように、図に示した3つの領域は、他のデータベースであれば、必ずトレードオフが発生する。個々の領域に強いデータベースはあるものの、これらを包括的にカバーできるフレキシビリティを持ち得るデータベースはPostgreSQLだけだろう」と語り、今後のPostgreSQLが、エンタープライズ性能だけでなく、多様なデータ形式や要件に対応できる柔軟性の向上を目指していることを示した。

 今後ドキュメント指向データベースやオブジェクトデータベースの得意とする領域にも踏み込んだ実装を盛り込んでいく一方で、高可用性を実現するPostgreXCのような機能も実装することで、Momjian氏の構想が具現化する日が近づきつつあるようだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。