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» 2014年08月26日 19時36分 公開

クラウド通が指摘するサービス選定のよもやま話:クラウド経済通のアーキテクトが必要な理由 (2/3)

[聞き手:@IT編集部,@IT]

IaaSの普及と「クラウドの経済」のジレンマ

B氏 ただ、日本の現場にいるITエンジニアにはクラウドサービスを使いたいと思っているのに、会社が使わせてくれない、というジレンマがあるように思う。

A氏 それはどういう意味?

B氏 おそらく(クラウドサービスを利用することの意義やメリット、効率性を)現場は分かっている。自分たちの苦労の根本原因がどこにあるかが分かっていて、解決策がIaaSサービスなどに見いだせている。しかし、決済権のある人たちにその意義を伝えられていないのではないだろうか。

A氏 いやいや。サーバールームの住人をなめてはいけないよ! その苦労(=クラウド登場以前から続いてきた、ハードウェアの安定運用)こそが仕事だ、という考えの人たちも少なくない。物理サーバーのお守りをすることにのみ、自分の労働価値を見いだしてしまっている人もいる。

B氏 そうなのか……。

C氏 そうですよ。そういう人たちは、「クラウドの経済」が全く分かっていないか、あるいは分かろうとしていない。クラウドサービスが登場したことで、ITインフラリソースは伸縮性を持たせられるようになり、それらの運用自動化にも道が開けてきている。物理的な所有を前提とした、いわばオンプレミスの経済とは異なるロジックで考えなければならない。むろん、ITインフラの全てがクラウドサービスに置き換わるわけではないだろうが、事業立ち上げ時の初期投資の在り方に対する事業部門や組織の評価は、クラウドサービスの登場で大きく変わったはずだ。クラウドの経済、といっているのは、こうしたクラウドサービス登場以降のITインフラ投資に対する評価軸のことを指している。

A氏 インフラを理解している人だからこそ、クラウドサービス上での技術の生かし方をいち早く習得してほしいのに、現在では「仕事を奪われる」という発想が強い人が少なくない。しかし、それでコスト削減が実現するのか、効率化やよりよいサービス提供によって事業に貢献できるのか、という点をもっと検討してほしいね。

システムボトルネック、クラウドデザインパターン、アーキテクトの不在

C氏 企業の全てのシステムがパブリックないしプライベートクラウドの環境に乗るわけではないが、クラウド利用に対する理解をもっと深めるべきだとは思うね。例えば「クラウドサービスの単価で60カ月(=5年)サービスを動かしたらサーバー購入した方が安い」という評価をする人たちも多い。これでは、いくら現場のITエンジニアがクラウドサービスを使いたい、と訴えても理解を得られにくいだろうね。

X氏 それはTCO(Total Cost of Ownership)に対する意識が薄い見解だね。電気代や設置に掛かる費用、保守人件費などの見えにくいコストを意図的に評価していないのではないだろうか? クラウドサービスのコストを評価する際にその部分を含まないのはナンセンスだ。それらを含めた費用の合算との比較が適切だ。

A氏 しかし、使いたいのに使えない状況がある一方で、CTOに対する意識が薄い層の一部でも、実はクラウドサービス検討し始めているところもある。逆にこうしたケースでは、自身の部署のPL(損益計算書)やBS(賃借対照表)などを理解していない人たちが調達している可能性もあり、それがクラウドサービス利用コストの無駄が発生する状況につながっているように思う。

X氏 経済性でいえば、B氏は過去にAWSから自社サービスに乗り換えてもらう際に劇的にコストダウンさせた経験があったね。

B氏 あれはもともと、オンプレミスのシステムをAWSに移行した企業ユーザーから相談されたケースだ。AWSを使ってどんどんスケールアウトしているのに、いっこうにパフォーマンスが上がらない、という話だった。

X氏 それは「スケールアウト」の使い方を間違えていたのでは? ボトルネックを理解せずに、別のところをスケールアウトさせていたのでは。

B氏 その通り。デザイン(設計)の問題だ。このケースはボトルネックを発見して適正なサイジングにした結果、もともと年間で200万円も投資していたところが、5万円にまでコストダウンできた。要はコスト意識と使い方の両面に問題があった。

X氏 やはり、クラウドサービスの企業利用が進んだことで、クラウドサービスを提案する企業も増えたけれど、利用のノウハウは成熟していないっていうことなんじゃないだろうか。B氏のケースでは、ボトルネックがどこかすら自力では解決できなくて、スケールさせればパフォーマンスが出る、という短絡的な発想でどんどんインスタンス数を増やして、資金をじゃぶじゃぶ使ってしまっていたわけだ。

B氏 一般的によくあるのが、オンプレミスの調達と同じ感覚で、ピーク時を軸にした設計で調達してしまうケースだ。これでは、クラウドサービスのいいところが全く出てこないはずで、コストパフォーマンスももちろん悪い。もちろん、AWSが注目され始めた初期のころから研究している大手SI企業などが手掛ける場合は、その限りではないよ。しっかりとクラウドサービス利用の方法論――「クラウドの経済」の重要性を理解した技術者をきちんと社内に抱えているからね。

X氏 うん。現在は落差が大きい状況が生まれているのかもしれない。

B氏 確かに現在はクラウドサービス市場の過渡期といえる状況のようだね。『キャズム』の表現でいえば、クラウドサービスはアーリーアダプター層には浸透し、今はアーリーマジョリティにリーチしているくらいなのではないだろうか。クラウド利用をうたうサービスの販売やSIが増えているものの、クラウド上でのシステムデザインのノウハウが十分に蓄積できていないケースもある。当たり外れが大きい。

X氏 クラウドサービスの「見積もり名人」がきちんと入って協力しないと、選定段階で高く付くと誤解させてしまう可能性もある。

A氏 クラウドならではの調達方法のノウハウが絶対に必要なんだけれど、AWSが盛り上がったことで、ノウハウなく調達する企業も出てきている。まさに過渡期の状態だ。オンラインで簡単に調達できるクラウドサービスの良さといわれるものからはすこし乖離するけれども、各クラウドサービス事業者側は、ここから先の数年、こうしたミスマッチの状況をいかにサポートできるかという点が重要になってくるかもしれないね。

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