レッドハット、IT運用管理製品が「生き返る」理由マルチクラウド管理製品の新版などを発表

レッドハットは10月8日、クラウド管理製品「CloudForms」の最新版「CloudForma 3.1」と、システム運用管理製品「Satellite」の最新版「Satellite 6」を国内発表した。しかし、人々はIT運用管理という行為への興味を、次第に失おうとしているのではないか。米レッドハット クラウド管理事業部門長のジョー・フィッツジェラルド氏に聞いた。

» 2014年10月09日 09時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 レッドハットは10月8日、クラウド管理製品「CloudForms」の最新版「CloudForms 3.1」と、システム運用管理製品「Satellite」の最新版「Satellite 6」を国内発表した。米レッドハットは2製品を中心としたIT運用管理製品群を、プラットフォーム製品、ミドルウェアに次ぐ第3の柱にしようとしている。

米レッドハット クラウド管理事業部門長のジョー・フィッツジェラルド氏

 こうした製品は、実際どのように企業の間で広がっていく可能性があるのか。これを探るため、米レッドハット クラウド管理事業部門長のジョー・フィッツジェラルド(Joe Fitzgerald)氏に、「人々は次第に、管理製品に対する関心を失ってきているのではないか、管理というものに疲れてきているのではないか」と聞いた。フィッツジェラルド氏は、過去30年間にわたり管理製品を中心にIT業界でキャリアを積み、複数の企業を立ち上げてきた。その1つであるManageIQの買収に伴い、約2年前に管理製品部門の責任者としてレッドハットに入社している。ManageIQはCloudFormsのベースとなっている。

 フィッツジェラルド氏は「IT管理はもともとエキサイティングなものではない。過去2、3年の間に起こったのは、次のようなことだ。以前なら、ユーザーはシステムをIT部門に依頼し、これが2カ月後にできればよかった。いまはセルフサービスと自動化が進み、ユーザー自身がシステムを選択して、すぐに使えることが期待されるようになった。ユーザー側にコントロールが移ってきたことが大きな変化だ」と答える。

 「だが、その移行は十分なレベルではない。従って、新世代の管理製品のテーマは、IT運用担当者に多数のスイッチやレバー、ダイヤルを与えることではなく、システム自体に管理機能を統合することにある。つまり、ユーザーがシステムを注文すると、これが即座に提供される。その裏で、CMDBの更新、変更管理、コンプライアンス管理が自動的に行われなければならない。結局のところ、どんなにアジャイルでクールなシステムをつくったとしても、あなたが銀行で財務アプリケーションを運用するなら、だれがいつ何を変更したか、セキュリティは確保されているのか、といったことを報告できなければならないことに変わりはないからだ。つまり、管理の『形』が変わろうとしている。だから、Chefのような『declarative(宣言的)』な管理が見られるようになっている。レシピなどによって、『こういうものがつくりたい』と指定すれば、どんな方法が使われるかは意識せずに実現されるという世界だ。だが、IT運用管理(の必要性)がゼロになることはない」。

Satelliteの製品概要
CloudForms 3.1の機能強化ポイント

 マルチクラウド/ハイブリッド管理の機能を持つCloudFormsについて、「企業ITの将来を保証する製品」だと同氏は表現する。「いまはAmazon Web Services(AWS)がはやっている。だが、そのうちコンテナをベースとするアプリケーション運用が広がってくると、AWSでなくてもよくなってくるかもしれない。IaaSとPaaSの境界も曖昧になってくる。こうした急速な発展にいちいち追随して、運用体制を一から作り直さなければならないのか。AWSの運用技術者、コンテナの運用技術者をいちいち育てなければならないのか」。

 CloudFormsでは、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの利用のために統合的なポータルを提供できる。ユーザーは、異なるプラットフォームを、同一の使い勝手で利用できる。また、AWSのIAM (AWS Identity and Access Management)、OpenStackのKeystoneなど、各プラットフォームのアイデンティティ管理機能に対応、権限管理や監査が一元的にできる。

 CloudFormsは2014年6月にオープンソース化、「ManageIQプロジェクト」として運営されている。だれもが貢献でき、選択肢を提供できるオープンソースという形を持ち込んで管理製品を発展させるのは、レッドハットにしかできないことだとフィッツジェラルド氏は主張する。

 フィッツジェラルド氏はManageIQをマルチクラウド運用管理のプラットフォームにしていきたいという。クラウドブローカーなどのサービスを提供する人たちが、ManageIQ/CloudFormsと連携するソフトウェアを自由に開発し、ビジネスに生かせるような環境をつくろうとしていると話した。ManageIQにおけるレッドハットの立場は、現在のところLinuxにおけるリーナス・トーバルズ氏のような「善意の独裁者」。だが、同プロジェクトのガバナンスモデルについては、今後再考していくという。

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