無償のオンライン型開発環境「Windows App Studio」入門特集:ノンコーディングでユニバーサルWindowsアプリを作ろう(1/5 ページ)

ユニバーサルWindowsアプリを、1行のコードも書かずに開発できるツール「Windows App Studio」。その開発からストアへの公開、Visual Studioでの編集までを解説する。

» 2014年11月07日 16時43分 公開
[山本康彦,BluewaterSoft/Microsoft MVP for Windows Platform Development]
特集:ノンコーディングでユニバーサルWindowsアプリを作ろう
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連載目次

 ユニバーサルWindowsアプリ(=Windowsストアアプリ/Windows Phoneアプリ)*1を作ってみたい。けれども開発環境をそろえるのは労力的にも金銭的にも大変そうなのでためらってしまう。そんな人も多いだろう。あるいは、興味はあるけれど、プログラミングは得意ではなかったり、得意だけれどもユニバーサルWindowsアプリ用のAPIを勉強するのは大変そうだと思ったりしている人もいるだろう。

 そんな方々にお勧めしたいのが「Windows App Studio」というWebサイトだ。これを使えば、WebブラウザーだけでユニバーサルWindowsアプリを作れるのだ(次の画像)。Visual Studioも、Windows 8.1さえも必要としない。

 Windows App Studioには2つの顔がある。1つは、ノンコーディングでユニバーサルWindowsアプリを作れるツールとしての顔。もう1つは、ユニバーサルWindowsアプリの良質なサンプルコード集としての顔だ。本稿では、Windows App Studioの特徴/アプリの作り方/ソースコードの利用法を紹介する。

Windows App Studioと、制作したアプリの例
Windows App Studioと、制作したアプリの例 Windows App Studioと、制作したアプリの例
上: Windows App Studioで作業している様子。本稿では、Windows 7上でInternet Explorer 11を使っている。
下: Windows App Studioだけで完成させた、RSSフィードを表示するアプリ。ストアで公開されている(Windows 8.1用Windows Phone 8.1用とも)。

*1 ユニバーサルWindowsアプリは、複数のWindowsプラットフォーム向けに提供されるアプリである。プラットフォームごとに異なるバイナリを開発しなければならないのはこれまで通りだが、開発環境とストアのサポートによって容易に実現できるようになった。詳細は「特集:Windowsストアアプリ開発最新情報(Build 2014より):ユニバーサルWindowsアプリ開発の勧め」をお読みいただきたい。なお、ユニバーサルWindowsアプリの対象は、現在はWindowsとWindows Phoneだけであるが、将来はXboxなどにも展開されるようだ(「『Windows 8.1 Update 1』と『Windows Phone 8.1』も:『Visual Studio 2013 Update 2』RC公開、ユニバーサルアプリに対応」参照)。


事前準備

 Windows App Studioを使ってユニバーサルWindowsアプリを開発するには、特別な開発環境は不要である。Windows 8でなくても構わない。Windows App Studioを利用できるWebブラウザーがあればよい。本稿では、Windows 7とInternet Explorer 11を使用した。ただし、テストをするためには、実機か、以下の開発環境が必要になる。本稿の最後では、無償のVisual Studio Express 2013 for Windowsを使っている。

  • SLAT対応のPC*2
  • 2014年4月のアップデート*3適用済みの64bit版Windows 8.1 Pro版以上*4
  • Visual Studio 2013 Update 2(またはそれ以降)*5を適用済みのVisual Studio 2013(以降、VS 2013)*6

*2 SLAT対応ハードウェアは、Windows Phone 8.1エミュレーターの実行に必要だ。ただし未対応でも、ソースコードのビルドと実機でのデバッグは可能だ。SLAT対応のチェック方法はMSDNブログの「Windows Phone SDK 8.0 ダウンロードポイント と Second Level Address Translation (SLAT) 対応PCかどうかを判定する方法」を参照。なお、SLAT対応ハードウェアであっても、VM上ではエミュレーターが動作しないことがあるのでご注意願いたい。

*3 事前には「Windows 8.1 Update 1」と呼ばれていたアップデート。スタート画面の右上に検索ボタンが(環境によっては電源ボタンも)表示されるようになるので、適用済みかどうかは簡単に見分けられる。

*4 Windows Phone 8.1エミュレーターを使用しないのであれば、32bit版のWindows 8.1でもよい。

*5 マイクロソフトのダウンロードページから誰でも入手できる(このURLはUpdate 3のもの)。

*6 本稿に掲載したコードを試すだけなら、無償のExpressエディションで構わない。Visual Studio Express 2013 with Update 3 for Windows(製品版)はマイクロソフトのページから無償で入手できる。Expressエディションはターゲットプラットフォームごとに製品が分かれていて紛らわしいが、ユニバーサルWindowsアプリの開発には「for Windows」を使う(「for Windows Desktop」はデスクトップで動作するアプリ用)。


用語

 本稿では、紛らわしくない限り次の略称を用いる。

  • Windows: Windows 8.1とWindows RT 8.1(2014年4月のアップデートを適用済みのもの)
  • Phone: Windows Phone 8.1

Windows App Studioの特徴

 Windows App Studioは情報提供型のユニバーサルWindowsアプリをブラウザーだけで制作できる。また、必要に応じてVisual Studioでコードを改良することもできる。Windows App Studioの利用は無料で、作ったアプリをストアで公開するための開発者登録だけが必要になる*7

 情報提供型アプリというのは、RSSフィードリーダーなどのように日々変化するWebの情報を集めて提示したり、カタログのように固定した情報を提供したりするようなアプリだ(次の画像)。Windows App Studioでは、その他にもYouTubeやFacebookのコンテンツなどを利用できる。

Windows App Studioで制作されたアプリの例 Windows App Studioで制作されたアプリの例
このようなアプリがWebブラウザーで簡単に作成できるWindows App Studioは、とても魅力的な開発ツールだ。この画像はWindowsストアアプリのものだが、それぞれにWindows Phoneアプリもある。
左上: Windows App Studio Sample App(Microsoft Corporation)。
右上: AppStudio Contoso Sample App(Microsoft Corporation)。
左下: DJNano(App Studio Team)。
右下: AppCake Perfecto(App Studio Team)。

*7 ストアでアプリを公開するには、専用の開発者アカウントを取得しなければならない。本稿執筆時点で、個人アカウントの開設費用は19米ドルだ(MSDN「アカウントの種類、場所、料金」参照)。しかしそれも、Dev Center ベネフィットに登録することで無料になる(本稿執筆時点)。


 Windows App Studioは、現在のところまだベータ版である。2013年8月に「Windows Phone App Studio」ベータ版としてスタートし、Windowsストアアプリも対象に加えるなど何回かの改良を経て、2014年10月には生成されるアプリの日本語対応を果たした(解説なども日本語化されたが、Windows App Studio本体のUIは英語のままである)。まだ部分的な機能の欠落や不具合などが残っているものの、作成したアプリは実際にストアで公開できる。

 Windows App Studioと似たツールに「Microsoft "Project Siena"」がある。それぞれの特徴を、次の表で比較しておく。

Windows App Studio Project Siena
形態 Webサイト Windowsストアアプリ
作成できるアプリ ユニバーサルWindowsアプリ Windowsストアアプリのみ
作成したアプリの配布 ・ストアでの公開
または
・サイドローディング
サイドローディングのみ
(makeappx.exeツールを使って再パッケージすることで、ストアにアップロードすることも不可能ではない)
レイアウトの自由度 変更不可 かなり自由にレイアウト可能
(「Project Siena ビジュアル リファレンス」参照)
クラウドのデータ利用 用意されているソースのみ*8 Azureモバイルサービスなど、さまざまなWeb APIを活用できる
データ処理 不可 Excelのような計算式
(「Project Siena 内の演算子と関数」参照)
ソースコード 取得可能(C#)
(取得したソースコードを改修してストアに提出できる)
取得不可
Windows App StudioとProject Sienaの比較
大田昌幸氏(日本マイクロソフト エバンジェリスト)のブログ記事を参考にさせていただいた。Project Sienaは高機能だが、Windows App Studioの方が配布やソースコード利用などの面で利便性が高い。
Project Sienaについては「マイクロソフトがリリースした新たなWindowsストアアプリ開発ツール『Microsoft Project “Siena” 』を使ってみた」も参照してほしい。

*8 クラウドのデータとして、RSSフィードの取得、Bingの検索と、YouTube/Flickr/Facebook/Instagramのコンテンツが利用できる。

なお、固定データは、アプリ内ではなく、Windows App Studioがクラウドで提供する「Dynamic resources」(以前は「App Studio Data Service」と呼ばれていた)に配置することも可能だ。アプリ作成後に、この「Dynamic resources」をWindows App Studioから変更すると、それをアプリが取り込んでくれる。固定データをCSVファイルでインポート/エクスポートする機能もあるので、簡単なカタログのようなアプリなら、最新データをエンドユーザーに届けることが可能だ。


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