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» 2014年11月10日 18時00分 公開

氷水をかぶるより先にできることって何だろう(前編):総裁×福田淳 IT企業経営者たちが考える「本当」の支援活動とは (2/2)

[取材・文 高橋睦美、企画・構成 鈴木麻紀,@IT]
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海外の「寄付するとかっこええ」文化と税制

福田 アイスバケツチャレンジの歴史を振り返ると、確か7月14日にプロゴルファーのクリス・ケネディっていう人がやったのが最初です。その人の妹の旦那さんがALSだったんですよね。それからもう1つ、知っている人は多くないと思うんだけれど、米国の自転車レースの優勝者が氷水をかぶって、元気付けるとともに祝福するという意味が「アイスバケツ」にはあったんですよ。

 ケネディさんが最初に氷水をかぶった動画のYouTubeでの再生回数はたいしたことはなかったんですが、その後どんどん広がっていきました。マーク・ザッカーバーグは8月4日、ビル・ゲイツは8月5日に、他にもIT業界の著名な経営者が氷水をかぶって、その様子を動画で公開しました。

 僕に回ってきたのは、確か8月の14日か15日です。たまたまロサンゼルスの友だちから声が掛かって、どうせ日本では流行らないだろうと思って英語でザバーっとやったら、日本でALS支援に取り組んでいる一般法人「END ALS」の方がその動画を見ていたんですね。「手伝ってください」となって、野球評論家の古田敦也さんや作家の乙武洋匡さんなどが東京タワーの真下に集まって、ザバーっとやるイベントをやりました。

 でも、あれほど話題になってテレビが大々的に取り上げてくれたのに、初日は100万円も寄付が集まらず、前日の小さな銀座のギャラリーの方が集まった。それでやっぱり基本に戻って「自分にできる範囲のことだけやろう」、そう考えていたときに村上さんのブログを読んで、会いたいなって思ったんです。どうしてそれをやろうと思いついたのか、そういう境地に至ったのかなと……。

総裁 うーん、でも、別にPayPalのリンクを張るだけなんで……。たぶん、暇やからちゃいます? 忙しい人はやらないですよ、こんなこと。

福田 忙しい人は時間がないからね。でも暇でも、その時間をお金をもうける方に費やしてもいいじゃないですか。そうじゃなかったのは、さっきのおじさんの話もあるんでしょうか。

 「寄付せなあかん」ということが何かスペシャルなことじゃなくて、ちょっとかっこよくいえば「セルフブランディング」になるのかもしれないですね。例えば「フェラーリ10台持っています」っていっても、まぁそれはそれですごいですが、かっこいいというよりも、笑っちゃう話ですよね。でも、「これこれこういうサポートをしてます」っていうのは、他人に話せる(=誇れる)話じゃないかなと。

総裁 海外では「寄付するとかっこええ」というのがありますよね。ただ一方で、海外の場合、節税目的で自分の財団に寄付しているケースも多いです。日本の今の法制度だと、寄付しても経費にならないので、節税にもならないんですよ。日本に寄付文化を根付かせようと思ったら、しっかり稼いだ分を、節税しつつ誰かのお役に立てるような仕組みにする必要があると思います。

福田 確か日本でも、2011年に改正NPO法が成立しましたね。これで認定されたNPO法人への寄付だったら税金が半分になるけれど、それを探すのが大変ですからね。

総裁 それに、政府が認定したNPO機関については節税の効果があるけれど、それ以外への組織への寄付だと何もないんですよね。例えば、もし僕が米国人だったら「村上財団」ってのを作って、そこにがーっと寄付して「わー、すごい」って言われる仕組みを作れるわけですね。それもどうかと思いますけど。

福田 僕、領収書を発行してもらうって、大事なことだと思うんですよ。経費で落としたお金が社会に回って、回り回って誰かのお役に立つんですから。

 アイスバケツチャレンジについていえば、もう1つ。友達のコラムニストが書いた記事がなかなか鋭かった。「あれは世相を表す、社会格差を表す鏡になってしまった」というんですよ。指名が来る、来ないというのが、その人のつながりや力関係を示す側面もあったと。

総裁 確か、準備は整えていたけれど、誰からも指名が来ないので勝手に自分一人で水かぶってしまった人もいましたね。

福田 米国の流れを見ていると、あれは根本的に寄付慣れしたセレブな人だけのアクションだったのが、SNSを通じて一般の方に伝わっちゃったんだと思うんですよね。でも、3人指名するというルールが組み込まれていたことによって、ねずみ講的に短命であることを運命付けられたキャンペーンだった。

総裁 しかも夏の話だしね。あれが冬にその辺の普通の人を指名するものだったら、逆にいじめですよね。東大阪あたりの中小企業の社長に回ってきたら、自分でやらずに「じゃ部長と課長に」なんてなっちゃうんじゃないですか(笑)。

 福田さんと総裁の対談、後編はこちら。関西出身のお二人が感じた「トウキョウのビジネス」の不思議さ、マイクロマネジメントの是非などについて、話し合ってもらいました。

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