連載
» 2014年12月04日 18時00分 公開

ものになるモノ、ならないモノ(59):「KMDの森」で触る、感じる、描くを体験してきた (2/3)

[山崎潤一郎,@IT]

タブレットの上で絵を描くと、材質や温度の感覚的フィードバックがある

 iPhone/iPad向けに鍵盤楽器アプリを開発している筆者がツボにはまってしまったのが、「感覚お絵かき」と題されたこの研究だ。専用のスタイラスペンを使ってタブレット上で絵を描くと、スタイラスペンに独特の感覚がフィードバックされる。例えば、「レンガブロック」のアイコンを選んでペイント領域でペンを走らせると、レンガの表面をなぞっているような振動がペンを通じて指先に帰ってくる。「木の板」のアイコンを選ぶとまた違った振動が得られる。

写真4 タブレット上で、専用のスタイラスペンを走らせると、振動、温度、視覚効果により材質感を演出してくれる

 ペンからのフィードバックは、単に振動だけではない。例えば「ペンキ」や「水」のアイコンを選んでペンを滑らせるとひんやりした感覚が指先に伝わり、それと同時に「ペンキ」の場合は粘性のようなものまで感じる。実に不思議な体験だ。

 振動についてはその仕組みが簡単に理解できた。ペンの中にバイブレーターが仕込まれており、それにより様々な振動を演出、指定した材質の上をなぞっているような感覚をフィードバックしている。一方のひんやり感は、指先が触れる部分に貼り付けたペルティエ素子によるもの。種を明かされれば、なるほどなあという感じだ。

 ただ、ペンキの粘性をどうやって演出しているのかが分からない。これを研究している慶應義塾大学メディアデザイン研究科の修士1年生の田中博和氏によると、「画面上にペンキが描画される際に画像で粘性を表現している。それと手に伝わる振動が相互に作用し、人間は粘性を感じる」という。ペンからのフィードバックだけでなく視覚を加えることで、あたかも粘度のあるペンキを扱っているかのような錯覚を感じさせているというのだ。

写真5 バイブレーターによる振動で材質感を、ペルティエ素子で指先にひんやり感を伝えている。ペンキの粘性は、振動に視覚を加えたことによりる錯覚によるもの

 iPadなどのタブレットでは、すでに手書き入力用の専用ペンやアプリが実用化されている。筆者も含め年齢高めのユーザーなら飛びつきそうな入力方法であるにもかかわらず、広く普及しているとは言い難い。筆者の場合は、どこか違和感のようなものを覚えて、普通の仮想キーボードを利用してしまう。ペンと紙に取って代わるのは、まだまだという印象だ。この研究のような感覚によるフィードバックがあると、タブレットの手書き入力も、ぐっと身近なものになるのかもしれない。

 冒頭で筆者が開発している鍵盤楽器アプリに関連し「ツボにはまってしまった」と書いた。鍵盤楽器アプリの場合は、画面を直接指でタッチするので、この研究のようにスタイルペンを利用した仕掛けによるフィードバックは無理だ。ただ、端末のバイブレーションと描画による視覚を利用して、実際の鍵盤を押さえているかのような感覚を演出することもできるのではないかと思いを巡らせている。ただし、iPhoneの鍵盤を押さえるたびに端末が振動したのでは、うるさいし、弾きにくくてしょうがない。うーん、困った。

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