実用可能な最小限の範囲でのプロダクトMVPとは何か? なぜスタートアップの評価対象となるのか?DevLove市谷氏・上野氏がギルドワークスとMVP Awardに込めた想い

4月15日まで応募受付中のスタートアップ向けコンテスト「MVP Award」について、企画した背景や思いなどを、企画したギルドワークスの代表者たちに聞いた。

» 2015年02月16日 18時00分 公開
[河内典子,@mucchio]

 エンジニアとデザイナーを対象としたスタートアップのコンテストは、どんどん増えてきている。2015年の春のニューカマー、「MVP Award」をSBメディアホールディングスと共催するギルドワークスの代表者たちにギルドワークスを立ち上げた経緯とアワード設立への思いを聞いた。

MVP Award

DevLove、ギルドワークス、そしてMVP Award

 ギルドワークスの市谷聡啓氏と上野潤一郎氏は、2008年から開発者コミュニティの「DevLove」の運営でチームワークを発揮していた。DevLoveは、Java、Rubyなど、開発言語は限定せず、開発プロセスもアジャイルしかやらないのではなく、何でもいい。参加者が開発で生かせることはその場でやり、デザイナーも参加できるといったように自由に運営してきた。メンバーが4000人いて、おのおので自然発生的に飲み会を含むミーティングを開催し、それでいて、何もテーマがないときには無理して集まらないという、自由なコミュニティだ。

 もともと2人は、受託開発をしたりサラリーマンをしたりSIerで働いたりしながら、コミュニティ活動もしてきた。そこでDevLoveを含め、参加者がコミュニティに参加して何かを学んだり、会社を転職する機会にしたりする様子を見てきている。そして、もっと開発者の出会いに関わっていきたいと、DevLoveを立ち上げてから6年目の2014年、コミュニティとは違う領域、開発者同士でチームを組んで成果を上げる企業として、ギルドワークスを立ち上げた。

 ギルドワークスは、「正しいものを正しく作る」をミッションとし、世の中の課題を技術者のつながりで解決する会社だ。

 開発者同士の出会いによる可能性の一つに、開発案件の受託があるが、ギルドワークスは、マッチングの対象をチーム開発にフォーカスしている。ギルドワークスを介して、開発する者たちが出会い、おのおのの強みを生かして仕事ができるようになることを理想としている。

市谷聡啓氏。ギルドワークス代表。システム企画案やサービスのアイデアからのコンセプトメイキングやマネジメントが得意

 「開発者が何か新しいサービスを立ち上げようとするときは、チームを組んで開発することが多いが、お互いの強みを生かせる人と組んで仕事がしたいものです。そのときのチームメイトをギルドワークスで探してみてほしいし、ギルドワークスを出会いのきっかけとしてみてほしいですね」(市谷氏)

 一方で、必要なプロジェクトが終わると、せっかく出会ったそのチームは解散してしまう場合が多いのが現状だ。そこで市谷氏は、仕事でつながりを得たチームの関係性をさらに前進させようと思うに至り、技術力やアイデアを実際のプロダクトとして形にするための機会として「MVP Award」を企画した。とはいえ、「MVP Award」はギルドワークスでつながっていない人も、もちろん対象となる。

 「MVP Award」は協賛として、SBヒューマンキャピタル、リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ、SBクリエイティブが名を連ねる。コンテストのテーマは、「スマホ時代の新メディア」だ。スマートデバイス全盛期における、新しいメディア/広告/コンテンツの在り方を考え、よりよい使い方をアイデアレベルから募集する。

 2015年1月29日から4月15日が応募受付期間となり、4月後半に選考会を実施。提出物を基に選考会を実施する予定だ。上位表彰候補者を決定し、5月下旬に登壇イベントを実施する。上位表彰候補者によるプレゼン大会を行い、審査員で順位を決定し、表彰する。なお、アイデアは応募後にブラッシュアップしていく形でもよく、早めに応募してフィードバックを得る進め方をお勧めするとのこと。

 参加対象は、法人・個人問わず誰でも参加でき、原則として、オープン後1年を経過したサービスはNGだが、他のコンテストに提出したものも受け付ける。

 提出物は、サイトからの応募時に参加者のプロフィール、アイデアの概要の記載が必要。応募後に、MVPとプランの詳細が分かる資料を4月15日までに提出すること。形式は自由だ。

そもそも「Minimum Viable Product(MVP)」とは何なのか

MVPとは(「MVP Award」のサイトより)

 MVPとは、新しく事業やサービスを立ち上げる際に、ニーズや課題の仮説を立て検証を行うが、仮説検証のための、実用可能な最小限の範囲でのプロダクト「Minimum Viable Product(MVP)」を指す。市谷氏は、これを「学びを得るための手段」と表現し、次のように説明した。

 「例えば、Dropboxはサービスを伝えるために動画を作成し、ユーザー候補に見せて、その反応を得て開発を進めたそうです。このアワードでも、完璧なプロダクトの開発を求めるのが目的ではなく、対象とする課題やニーズに対して検証ができそうな手段の準備や検証の実施がどこまでできているか、どこまで可能性を感じるられるかがポイントとなります」(市谷氏)

 評価ポイントは、社会や消費者のどんなニーズに対して、テクノロジを活用してどのように解決しようとしているか。マネタイズプランもあればいいが、なくても構わない。「解決できる課題の大きさ、活用するテクノロジの先進性、事業としてのスケーラビリティ」は、プレゼン内容に含めるべきポイントになるだろう。

 特典は、最優秀賞100万円、優秀賞50万円、テーマ賞30万円といった一時的な賞金だけではなく、継続的に開発が進められるよう、ギルドワークスおよびSBメディアホールディングスグループをメンターとして、事業立ち上げに向けた具体的な検討(出資など)を行うように支援していく。

上野潤一郎氏。ギルドワークスメンバー。コンセプトからアプリケーションをあるべき形に作り上げていくことに情熱を持っている

 応募について、上野氏は次のように語る。

 「プロダクトまでいかないアイデアレベルでも構いません。モックかもしれませんし、サイトかもしれませんし、動画かもしれない、画用紙の手書きでも、写真でもいいです。何かしらの、ユーザーニーズを検証した手応えを添えて送ってもらいたいですね。

 また、他のコンテストイベントだと時間も開発資金も足りないという人に参加してもらえるようなイベントにしたいです。『アイデアはあるけど、なかなか形にできていない』といった、いわゆる素人の方にもトライしてもらいたいですし、開発コンテストに縁遠い人たちにも、アイデアを形にする機会にチャレンジしてもらいたいです」(上野氏)

 今回のテーマは、「スマホ時代の新メディア」だが、スマホでしか見られないメディアというわけではなく、PCやウェアラブルデバイス、さらにはIoT、TV、自動車、紙までメディアが見られる機会は増えているし、メディアができることも増え続けている。スマホが普及して「メディア」というものの捉え方が多様化している時代ならではのこれまでにない新しい視点が求められるだろう。今、自分が読みたい、または使いたいメディアは、どのような姿か? 一度、この機会に考えてみてはいかがだろうか。

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