「セルフサービスBI」って、いったい何?セルフサービスBIのABC(1)(1/2 ページ)

ビジネスの最前線にいる読者のための、セルフサービスBI入門連載。第1回は、あらためて「セルフサービスBIとはそもそも何なのか」を紹介する。

» 2015年04月02日 05時00分 公開
[三木 泉@IT]

 「セルフサービスBI(ビジネスインテリジェンス)」が、新たな普及段階を迎えようとしています。その背景には、「インターネット上のサービスのような特定の業界や、マーケティングのような特定の職種の人々だけでなく、あらゆるビジネスパーソンにとって業務上のメリットをもたらす可能性を秘めている」という認識の広がりがあります。この状況を反映して、広くエンドユーザーをターゲットとしたセルフサービスBIツール/サービスの選択肢も、過去1年あまりの間に、急速に広がりつつあります。

 では、あらためてセルフサービスBIとは何でしょうか? 企業の現場にいる人たちにとって何がうれしいのでしょうか? 本記事では、企業や組織で業務に関わる方々のために、3回に分けてこれを紹介します。

 第1回である今回は、「セルフサービスBI」の意味を大まかに説明し、第2回では「セルフサービスBIツール」と呼ばれるものに何ができるかを紹介します。第3回は、こうしたツールをどのような目的で使えるのかを説明します。

 セルフサービスBIとは、「エンドユーザー自身がリポート作成やデータ分析を行うこと」です。例えばIT調査会社のガートナーは、次のように定義しています。

 「セルフサービスBIは、エンドユーザーが、自身のためのレポート作成やデータ分析を、承認され、サポートされたアーキテクチャとツールの枠内で、設計し、実行することと定義できる」

Self-service business intelligence is defined here as end users designing and deploying their own reports and analyses within an approved and supported architecture and tools portfolio.(出典:Gartner IT Glossary)

 もともと企業などの組織では、事業活動の過程で得られるデータを、意思決定に生かそうとする試みがなされてきました。これが「BI」と呼ばれています。ただし、典型的には社内の専門家が、情報を加工し、グラフを活用して分かりやすい形で示す「ダッシュボード」と呼ばれるものをつくり、それを主に経営陣や上級管理職向けに提供していました。

 また、一部の企業では、社内の専門家は経営陣や上級管理職に対し、定期的に定型的なレポートを提供するだけでなく、業務部門の各種部署からのアドホックな依頼に基づき、データ分析を提供してきました。しかし、業務部門からのリクエストの増加に伴い、バックログが発生し、個々のリクエストに応えるのに時間が掛かるようになってしまうケースがよくあります。

 そこで、ビジネスの現場にいるエンドユーザーが、自らの業務のために、自分自身でダッシュボードをつくれるようにしようというのがセルフサービスBIです。「セルフサービス」という言葉が使われているのは、分析やデータ処理の専門家でない人たちが、自分自身のニーズを満たすために、ダッシュボード作成を自分で行うことを示しています。

ビジネス現場のニーズから見たセルフサービスBI

 上記が、おそらく最も典型的なセルフサービスBIの説明ですが、企業のビジネス現場の視点からは、違う表現をすることもできます。

 企業のビジネス現場では、データ活用ツールとして表計算ソフトを用い、これまでもデータに基づく日常的な業務上の判断を行ってきました。ですが、最近では二つのトレンドが、現場でのデータ活用に影響を与えるようになってきています。

デジタル化により、事業に生かせる新しいデータが生まれている

 一つは、「事業活動そのもののデジタル化の進行」です。

 インターネット上のサービスを提供する企業にとっては、当然ながら、サービスを通じて得られるデータ自体が、事業活動のベースとなります。一方、一般企業でも、インターネットを活用したマーケティングや販売促進活動を行うところが増えてきました。さらには、「IoT(Internet of Things)」や「ビッグデータ」というキーワードの下で、ユーザーの持つ端末やセンサーからの情報を活用したビジネスを企画、実行する企業も増えています。

 簡潔に表現すれば、インターネット利用の進化によって、様々な産業に属する企業が、顧客あるいは潜在顧客とのデジタルなコミュニケーションを、事業と直結する形で行うようになりつつあります。こうした活動において、データ分析は避けて通れません。つまり、マーケティング担当者や販売促進担当者の一人一人が、自らのアクションの成果を、データ分析によって高められる可能性が生まれています。

 扱うデータ量が増大し、データ分析が複雑化すると、表計算ソフトでは処理が不可能、あるいはあまりに煩雑となることが多くなります。社内の専門家は、より多くの社内エンドユーザーから、より多くの依頼を受けることになり、「リソースがいくらあっても足りない」ということになってしまいがちです。一方、ビジネス担当者の側では、自分たちのリクエストに、分析専門家チームがタイムリーに応えてくれないという不満が高まります。このような不満を持つ社内エンドユーザーにとって幸いなことに、ある程度の分析なら自分自身で実行することを支援してくれるようなツールが登場しています。そこで、こうしたツールをエンドユーザー自身が入手し、利用するケースが増えてきています。

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