DBアプリケーションを速くするハードウエア活用の最前線Database Expertイベントリポート(1/3 ページ)

DBパフォーマンスを改善するハードウエア技術を紹介したイベントから、鍵となるテクノロジーをダイジェストで紹介する。

» 2015年05月15日 05時00分 公開
[吉村哲樹@IT]

 業務アプリケーションなどの根幹を支えるデータベースシステムには、常に高いパフォーマンスと信頼性が期待される。このため、データベース管理者(DBA)には、古くから性能を最大化するためのパフォーマンスチューニングのスキルが求められてきた。

 データベースのチューニングというと、従来はSQLクエリの最適化やデータベースソフトウエアの改善などのように、主にソフトウエア的な対策が主流であったが、近年では、CPU処理能力の向上や、ストレージ、メモリなどの大容量化・高速化を背景に、ハードウエアのリプレースによる対策が注目を集めている。特に最近のデータベースアプリケーションでは、ストレージI/Oがシステム全体のスループット向上を妨げているケースが少なくない。このため、データベースアプリケーションのチューニングにおいて、高速なストレージの導入が一つの解決策とされるようになってきている。だが言うまでもなく、単純にハードウエアを刷新するだけで全ての課題を解決できるわけでもない。

 こうした動きを受け、@IT編集部では、2015年3月4日に主催イベント「第二回 DB高速化道場」を開催した。イベントでは、新たなデータベース高速化の技術や手法についてユーザー企業と製品ベンダーの双方が最新事情を紹介、現代的なデータベースアプリケーションの性能向上の常識をあらためて整理した。本稿では、その際に得られた情報をダイジェストで紹介する。

 なお、本稿ではハードウエアの規格や種類に関する専門用語が多く登場するが、言及が冗長になるため個別の用語解説を省く。これらについては別稿1別稿2で解説しているので、不明な用語についてはこちらを参照してほしい。

専用ハードウエアでフラッシュメモリの性能を最大限引き出す「IBM FlashSystem」

日本IBM IBMシステムズ ハードウェア事業本部 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 佐野正和氏

 日本IBM IBMシステムズ ハードウェア事業本部 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 佐野正和氏は、「ビジネスを加速するTier1ストレージへのフラッシュ活用術」と題したセッションで、日本IBMが提供するフラッシュストレージソリューションの紹介を行った。

 「データベースアプリケーションパフォーマンスのボトルネックであるストレージI/Oを改善する際には、『ストレージの一部を重点的に速くする作戦』と『全部を速くする作戦』の2種類がある。一部だけを速くする方法はコストを低く抑えられるが、全ての問題に対応できるわけではないため、全てを速くするアプローチが有利な場面も多い」(佐野氏)

 同社が「一部を重点的に速くする作戦」として提供するのが「IBM Storwize(以降Storwize)」製品群だ。Storwizeはサーバーとディスクストレージ類の間に配置するストレージ装置で、SSDを含めたストレージ階層化やリアルタイム圧縮機能などを駆使して、ストレージアクセスのパフォーマンスを大幅に向上させる機能を担う。

 一方、ストレージの「全てを速くする作戦」として同社が提供するのが、オールフラッシュストレージ製品群「IBM FlashSystemファミリー」。2015年2月には、新製品「IBM FlashSystem 900」「IBM FlashSystem V9000」が発表されたばかりだ。

 同社のオールフラッシュストレージ製品は、単にハードディスクドライブ(HDD)をソリッドステートドライブ(SSD)に置き換えたのではなく、当初からフラッシュメモリの能力を最大化するための専用設計が施されているのが特徴。例えば「FlashCoreテクノロジー」と呼ばれる独自技術では、フラッシュメモリの特性を最大限に生かすためのハードウエアRAIDとパラレル(並列)データ転送を可能にしている。また、RAIDの実装そのものもパリティデータの持ち方をフラッシュストレージ用に最適化している点も特徴だ。

 ちなみに、IBM FlashSystem 900は2Uサイズで最大57Tバイトまでの容量を収容可能。IBM FlashSystem V9000は、6Uサイズで285Tバイトまでの大容量をサポートするとともに、ストレージ仮想化機能も備え、オールフラッシュストレージでありながらTier1ストレージを実現する製品として扱える。

プライマリーストレージのオールフラッシュ化を実現する「Violin Memory FSP」

バイオリンメモリ システムエンジニアリング ディレクター 森山輝彦氏

 バイオリンメモリ システムエンジニアリング ディレクター 森山輝彦氏は、「フラッシュでDB高速化はもう当たり前! 運用面、コスト面も支える新オールフラッシュアレイを発表!」と題したセッションで、同社のオールフラッシュアレイ製品の紹介を行った。

 「Violin Memory」は、フラッシュメモリのパフォーマンスを最大限に発揮することを目的に一から設計されたオールフラッシュアレイ製品で、この分野の先駆け的存在だ。SSDと比べてもディスクI/Oが数倍高速になるため、同製品を導入するとCPUがボトルネックになるケースが多いという。森山氏は、「今後、フラッシュによるディスクI/O性能の改善で、CPUネック、あるいはスレッドネックになるケースが多くなるだろう。この場合、データベースアプリケーションの高速化は、いかに効率的に並立処理を行えるアーキテクチャになっているかが鍵を握ることになる」と述べる。

(森山氏の発表資料より)

 なお、これまでオールフラッシュアレイは、どちらかというと特別に高いパフォーマンスが必要な一部のシステムに限定して使われることが多かったが、Violin Memoryが2015年2月にリリースした「Flash Storage Platform(FSP)」はプライマリーストレージとしての用途を前提としているという。

 3Uサイズの「7300 Flash Storage Platform」とハーフラックサイズの「7700 Flash Storage Platform」で構成され、オールフラッシュならではの高いスループットとともに、重複排除やデータ圧縮、ストレージ階層化といった、プライマリーストレージとして不可欠な高度な管理機能を併せ持つ。

(森山氏の発表資料より)

 また、Violin Memory製品の国内販売代理店であるマクニカネットワークスでは、同製品の魅力を国内ユーザーに向けて積極的に発信している。マクニカネットワークス ネットワーク第2事業部 プロダクト第2営業部 第2課 主事 加藤彰教氏によれば、2013年から富士通製サーバーとの接続検証を行ってきた他、現在では導入事例の紹介やアセスメントサービスなども行っているという。

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