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» 2015年05月28日 05時00分 公開

ものになるモノ、ならないモノ(64):実機を触って分かった、“使われる”Apple Watchアプリのキモ (2/2)

[山崎潤一郎,@IT]
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実機を触って分かったGlancesの必要性

「駐車場どこだ?」「コンビニどこだ?」という二つのApple Watch対応iPhoneアプリをリリースしている星川進氏

 例えば、「駐車場どこだ?」というApple Watch対応のiPhoneアプリがある。位置情報から最寄りのコインパーキングを探してくれるアプリだが、開発者の星川進氏は当初、Glances実装の必要性を感じず、Apple Watchアプリだけで開発を進めていたそうだ。だが、発売前に実機を触った際、Glancesの必要性を実感したという。

 その結果「駐車場どこだ?」のApple Watchアプリは、現在地から最も近いパーキングの情報を一枚だけ表示するGlancesを実装している。


Glancesはシンプルな情報を表示するだけだが、タップすることでアプリが起動する。Glances実装の有無がApple Watchアプリ起動率を大きく左右するのかもしれない
Glancesにどのアプリを常駐させるかは、ユーザーがiPhoneの「Apple Watch」アプリで決めることができる。

 上図左のGlancesには、パーキングの名称、住所、距離が文字で表示されるだけなので、実際にパーキングを探している人にとっては、それほど役に立つ情報とは言えない。だが、画面をタップするとApple Watchアプリが起動し、パーキングのリスト→地図表示と画面が遷移し、地図で現在地とパーキングの位置関係を知ることができる(上図右)。

 つまり、Glancesをアプリ起動のためのトリガーとして位置付けることで利便性の向上を図るとともに、アプリの利用率向上が期待できるというわけだ。

 ただし、多くのアプリがGlancesを実装している。今後もGlances実装アプリは増えるだろう。Apple WatchにどのGlancesを常駐させるかはユーザーが選ぶことができるので、アプリ側でユーザーを納得させるだけの機能を提供しなくては、Glancesを「オン」にはしてくれない。言うなれば、Glances常駐を勝ち取れるかどうかでアプリの利用頻度が決まってくる。

サードパーティには未開放の機能や仕組みがたくさんある

 Apple Watchアプリ開発でもう一つ注意が必要な点がある。それは、サードパーティには未開放の機能や仕組みがたくさんあるという点だ。したがって、純正アプリで利用できる機能を自分のアプリに取り入れようとしても、実装できないこともあるので注意しよう。

 例えば、「タプティックエンジン(Taptic Engine)」を自在に利用して、バイブレーションを何らかのインターフェースに利用することはサードパーティには許されていない。ご存じのようにApple Watchは、タプティックエンジンという振動の仕組みを利用して、ユーザーにバイブレーションで情報を伝えることができる。しかし、サードパーティとして利用できるのは、Notificationの着信をユーザーに知らせる時くらいなもので、それ以外の利用は開放されていない。

 実は、アップルは、このタプティックエンジンを利用して、とてもしゃれたユーザーインターフェースを実現している。「マップ」アプリでルート案内をする際、右に曲がるときは「トットットッ・トットットッ・トットットッ」、左に曲がるときは「トットッン・トットッン・トットッン」と三拍子のリズムをApple Watchが振動して刻む。これがとても心地よいのだ。

 これに触発され、音楽アプリを開発している筆者が真っ先に思いついたのは、この振動でビートをユーザーに伝えるメトロノームアプリだった。だが、前述の理由であきらめざるを得ない。

 タプティックエンジンの他にも、動画あるいはアニメーションを再生するためのAPIは用意されていない。ただ、アップル純正の「アクティビティー」アプリを起動すると、消費カロリーやエクササイズの時間や目標値までの達成率を円グラフのアニメーションで示してくれる。これがとてもかっこいい。しかし、APIが非公開、あるいは存在しないので、サードパーティがこれと同じことを実装しようとすると大変だ。

 あえて実装するなら、PNGの静止画をパラパラ漫画のようにして再生する仕組みを作り込むことになる。ただ、なめらかな動きを追求する、つまりフレームレートを上げると、静止画の枚数が多くなり“重たい”アプリとなってしまい、ユーザーから敬遠されてしまいそうだ。

TwitterのApple Watchアプリには、タイムラインなどの読み込み時にストレスを感じさせないためのアニメーションが実装されている。このアニメーションは、アプリ側に実装されたものだ

 ちなみに、TwitterのApple Watchアプリは、そのような制限の中でも比較的しゃれたアニメーションを実装している。タイムラインを表示する際の待機時のアニメーションなのだが、中央から円がフワフワと広がるように表示され、待ち時間のプチストレスを和らげてくれる。

 この他にも、マイク、スピーカー、心拍センサーなど、開発者として使ってみたい機能や仕組みはたくさんあるのだが、現時点では、サードパーティ開発者がこれらの機能を利用することはできない。

 考えてみれば、初代iPhoneの発表時、アプリ開発自体がサードパーティには未解放だった。それを思うと、初代Apple Watchが登場したタイミングでサードパーティにもアプリ開発が開放されているのだから、「あれができない、これができない」というのは、贅沢な悩みのような気もする。

 今後、Apple WatchのCPU、メモリ、バッテリの進化にともない、各種センサー類やさまざまなAPIがサードパーティにも開放されることになるだろう。そのときに自分の思い描いたアプリが作れるように、今からこつこつと勉強しておきたいものだ。

「ものになるモノ、ならないモノ」バックナンバー

著者紹介

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。近著に、「コストをかけずにお客さまがドンドン集まる!LINE@でお店をPRする方法」(KADOKAWA中経出版刊)がある。TwitterID: yamasaki9999


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