【詳報】ヴイエムウェアのvCloud Airは、何がどう強化されたのか従量制サービスも他とは異なる

ヴイエムウェアは6月4日、同社クラウドサービス「VMware vCloud Air」の日本データセンターにおけるサービスについて、新たな従量課金サービスを含む3つの機能拡張を発表した。これらを詳しく紹介する。

» 2015年06月05日 13時37分 公開
[@IT]

 ヴイエムウェアは2015年6月4日、同社クラウドサービス「VMware vCloud Air」の日本データセンターにおけるサービスについて、3つの機能拡張を発表した。

 発表されたのは、従量課金で使えるオンデマンドクラウドサービス「VMware vCloud Air Virtual Private Cloud OnDemand(以下、VPC OnDemand)」の提供開始(7月上旬を予定)、VMware NSXの機能をvCloud Airに実装した「VMware vCloud Air Advanced Networking Services」の投入(2015年第3四半期中を予定)、そして災害復旧サービス「VMware vCloud Air Disaster Recovery」の強化(7月上旬を予定)。

 ちなみに、ヴイエムウェアは5月20日、日本データセンターにおける仮想デスクトップサービス(DaaS)を6月中に提供すると発表したが、提供開始日は6月9日であることを同社は明らかにした。

VPC OnDemandは、1分単位の従量課金で使えるサービス

 日本におけるvCloud Airはこれまで、一般企業向けのクラウドサービス顧客ごとに専用の物理インフラを割り当てる「専有型クラウド(Dedicated Cloud)」、顧客が物理インフラを共用し、論理的に分離する「仮想プライベートクラウド(Virtual Private Cloud)」の2種類のサービスを提供してきた。どちらも「リソース(CPU/メモリ/ディスク)を月額料金、請求書ベースで購入する」というコンセプト。もともとvCloud Airには「インスタンスタイプ」という概念がない。購入したリソースから、どういう構成の、どれだけの数の仮想インスタンスをつくるかは、ユーザーの自由だ。

 今回、7月上旬の提供開始が発表されたVPC OnDemandは、上記の2サービスと異なり、従量課金であり、クレジットカードが使える。その点では、一般的なパブリッククラウドサービスと似ている。

これまでの2種類のIaaSに、オンデマンド型のサービスが追加された

 他のパブリッククラウドサービスとの違いは、まず1時間単位ではなく、1分単位の課金であること(価格表などでは、1時間当たりの料金が表示されるが、実際には分刻みの請求となる)。そしてDedicated Cloud、VPCと同様、VPC OnDemandにも「インスタンスタイプ」という考え方がなく、ユーザーはCPU/メモリ/ディスクを自由に構成できる。また、いったん構成し、起動した仮想インスタンスについて、その稼働を止めることなく、CPU/メモリ/ディスクのいずれか、あるいは全ての構成を変更できる。言い換えれば、自分で好みのインスタンスタイプをつくり、これをいつでも変更できることになる。

これは米国vCloud Air VPC OnDemandの仮想インスタンス構成メニュー。仮想CPU数、メモリ量、ストレージ容量などを選択して、ユーザーが自ら「インスタンスタイプ」をつくれる

 上述のとおり、VPC OnDemandではクレジットカードが使えるが、一般の法人にとっては請求書ベースの支払いのほうが便利だ。そこでヴイエムウェアでは別途、ポイント制のプリペイド的な支払い方式(「Subscription Purchase Program」)を提供するという。つまり、顧客はある程度のリソース利用について、一括して支払っておき、VPC OnDemandにおける実際のリソース利用は、これに見合うポイントといて差し引いていく。余ったポイントは、将来のサービス利用に使える。

 VPC OnDemandでは、開発・テストなどの用途を想定し、仮想インスタンス/ストレージの利用に期限を付けることもできるようになっている。

NSXの実装でマイクロセグメンテーションが可能

 2015年第3四半期中に投入予定のAdvanced Networking Servicesは、ネットワーク仮想化技術VMware NSXを、vCloud Airのデータセンターに実装するもの。

 これによって、まずきめ細かなセキュリティ制御が可能になる。VMware NSXでは、ユーーザー組織が自身の論理ネットワーク空間を、ハイパーバイザーレベルの分散ファイアウォール機能により、きめ細かく分離することができる。単一、あるいは任意の複数の仮想マシンをグループ化し、これを単位とした分割が可能だ。ヴイエムウェアはこれを、「マイクロセグメンテーション」と呼んでいる。なお、サーバー間のロードバランス(負荷分散)は、今回httpsに対応する。

仮想マシン単位でセキュリティグループを設定。これによりきめ細かなネットワークの分割が可能

 関連して、vCloud Airでは、ユーザー組織の仮想データセンター(vDC)ごとに、200のルーティングインターフェイスが構成可能となる。これにより、ユーザー組織内部の複雑なネットワークを構成可能で、社内アプリケーションのvCloud Airへの移行やディザスタリカバリ(災害復旧)に関わるネットワーク関連の設定が容易になるという。

 さらに、ユーザー組織の拠点とvCloud Airのユーザーセグメントとの間はBGP、vCloud Air上のユーザーセグメント相互間はOSPFで、それぞれダイナミックルーティングを行うことができる。

 今回の拡張ではさらに、エンドユーザー端末から直接、vCloud Air上のユーザーセグメントに、SSL VPNでアクセスできる機能も追加されるという。

ディザスタリカバリは複数世代のスナップショットに対応

 vCloud Airを、事実上ユーザー組織のバックアップデータセンターとして使えるvCloud Air Disaster Recoveryでは、複数のリカバリポイントに対応した。これにより、複数世代のスナップショットから選択して復旧できる。新機能により、災害復旧のみならず、データ破損やセキュリティ被害からの復旧にも、同サービスを利用しやすくなったと、ヴイエムウェアはいう。

 また、いったんvCloud Airにフェイルオーバーした環境を、自社データセンターに引き戻して再開する、いわゆるフェイルバックの容易な実行が可能になるという。

 さらに、このディザスタリカバリサービスでは、復旧計画の定義・導入のため、VMware vRealize Orchestrator用に新たなプラグインを提供する。他にも、オープンソースのコマンドラインインターフェイス(CLI)、REST APIを利用できるという。

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