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» 2015年06月15日 05時00分 公開

de:code 2015基調講演:Windows 10、クラウド、モバイル、IoT、そしてHoloLens──全方位で逆襲するマイクロソフト (2/3)

[星暁雄,ITジャーナリスト]

「想像することが大事だ。そして重要なのは、次に何をやるかだ」(ビル・ゲイツ氏)

日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏

 de:code 2015の最初のメッセージは、最初に登壇した伊藤かつら氏(日本マイクロソフト執行役デベロッパー エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長)による、会場にいる大勢のエンジニアたちに向けたメッセージだった。

 「エンジニアが活躍できる範囲は、以前とは比較できないぐらい広がっています」とde:codeに参加するエンジニアたちに呼び掛ける。伊藤氏はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏からのメッセージ「想像することが大事だ。そして重要なのは、次に何をやるかだ」を紹介し、de:codeで提示される大量の情報を元に想像力を働かせて、何かを作り上げてほしいという思いをエンジニアたちに伝えようとしていた。

 伊藤氏に紹介されて登壇した、前述した次期社長の平野氏。次のようにマイクロソフトの変化を語り掛けた。「今やAzureの20%では、オープンソースのLinuxが動いていて、競合とみなされていた会社ともパートナーシップを組んでいる。モビリティ、そしてクラウドの世界でリーダーになりたいという決意を持って、チャレンジャーとしてがんばっているのが、今のマイクロソフト。そのビジョンの下、3つのambition(大望)を持っている」

 ここで平野氏は「3つの大望」のスライドを提示した。

 1番目は「More パーソナルコンピューティング」。PC、スマートフォン、タブレット、さらには自動車と、パーソナルコンピューティングの道具の種類は多様化している。操作法も、タッチ、インキング(ペン入力)、ジェスチャへと進化。今後のパーソナルコンピューティングでは、人間の自然な動作に対応し、どのデバイスからも首尾一貫した切れ目のない経験ができることが重要となる。持ち運べるタブレットのSurface、大画面のSurface Hub、それにVRを活用するHoloLensのように、マイクロソフト自身のハードウエア製品も出していく。これらの共通プラットフォームとしてのWindows 10も重要となってくる。

 2番目は「Reinvent プロダクティビティー&ビジネスプロセス」について「生産性を再定義する」と平野氏は語る。「ビジネスとプライベートの境目がなくなっているので、両方のシナリオを考えたクラウドと生産性を考えなければならない。場所にとらわれず、デバイスにとらわれず、シームレスにコラボレートしていく。それを支援する安全な環境を作る」すでに日本にも複数拠点のデータセンターを立ち上げているが、今後も環境をさらに整えていく意向だ。

 3番目の「Build the intelligentクラウド」は、ハイパースケールのクラウド、トップレベルのセキュリティ、さらにハイブリッドクラウドの対応力を持つ、インテリジェントなクラウドで、包括的なモビリティをサポートするということだ。クラウドがモビリティを本格的にバックアップするために重要な環境となる。

 平野氏は自身の登壇パートを次のように締めくくった。「ITは、情報を伝達する役割から、イノベーション、トランスフォーメーションをリードする役割に変化した。その第一歩は、この部屋にいる皆さんから始まる」

マイクロソフトのクラウドを語り尽くす

クラウド戦略を語ったJason Zander氏(Microsoft, Corporate Vice President of the Microsoft Azure team in the Cloud & Enterprise group)

 続いて壇上に立ったのは、Jason Zander氏(Microsoft, Corporate Vice President of the Microsoft Azure team in the Cloud & Enterprise group)。マイクロソフトのクラウド戦略を包括的に語った。

 Zander氏は「モバイルファースト、クラウドファーストが私たちの戦略だ」と語る。「毎月9万のAzureサブスクリプションが増えていて、140万のSQLデータベースがあり、4億5000万のAzure Active Directoryユーザー、300万のVisual Studio Online登録開発者がいる。そして、フォーチュン500企業の58%がAzureを利用している」という。

 「Azureの特徴は、スケール、エンタープライズ対応、ハイブリッドだ」とZander氏は言う。全世界に19のデータセンター地域があり、日本には2カ所あるという「ハイパースケール」をアピール。「これはAWS以上の数だ。今後も地域(リージョン)はもっと増えて、1地域には60万台のサーバーを設置できる」またZander氏は、エンタープライズ対応では、世界各国の基準に合致していることも示していた。

 ハイブリッド対応では、Azureのパブリッククラウドだけではなく、オンプレミスと組み合わせたハイブリッドクラウドを構築できることをアピール。オンプレミスとパブリッククラウドや、WindowsとLinuxが混在する環境を一元的に分かりやすく監視できるツール「Microsoft Operations Management Suite」(以下、OMS)を紹介し、オンプレミスにAzureと同等の環境を構築できるアプライアンス(専用サーバー)「Cloud Platform System(CPS)」と、ソフトウエアスタック「Azure Stack」を紹介した。

トヨタ自動車は、20km四方を走るConnected Carのデータをリアルタイムに可視化

トヨタ自動車 専務役員 友山茂樹氏

 マイクロソフトのクラウド戦略を語った基調講演前半の「山場」は、何といってもトヨタ自動車(以下、トヨタ)のAzure利用事例の報告だ。登壇したのは、トヨタ自動車 専務役員の友山茂樹氏。IT・ITS本部、事業開発本部、それにモータースポーツ本部を統括している。

 友山氏は、愛車の写真を題材に「クルマ好きとクラウド活用」という合わせ技から話を始めた。「十数年前のスープラ80(注:1993〜2002年生産)をレストアして日常の『足』として使っている。直列6気筒エンジンにマニュアルの強化クラッチ、そしてビッグタービンと、まさに前時代のクルマだ。だが、ナビだけはトヨタ最新の『T-Connect』を搭載、Azureに常時接続している」

 「将来、自動車ビジネスの付加価値は、ハードウエアから、その上位レイヤーにあるクラウドに移行していく」と友山氏は明言する。クラウドにつながる自動車、Connected Carの時代がすでに来ているというのだ。

 「15年前、ネットワークにつながるクルマとデータセンターを提案したが、一課長だった私への社内の反応は誠に冷ややかだった。『なぜ製造業のトヨタがシステム会社のようなことをやらないといけないのか』と。そこで協力してくれたのが、現在の社長の豊田(豊田章男社長)と、マイクロソフトだった」

 同社は2011年以降、Azureの採用を進めてきた。それには3つの背景がある。一つ目は、Connected Carサービスを全世界に展開する必要があること。二つ目は、Connected Carから収集した膨大なデータを即座に活用できるビッグデータ活用基盤を構築する必要があること。三つ目は、開発人員のシフトである。

 同社では「開発リソーセス(人員)の大半がインフラ維持に費やされており、新規の開発に手が回らない」という事情を抱えていた。そこで思い切ってオンプレミスのデータセンターで運用していたシステムをAzure上に再構築した。その結果立ち上がったのが、「トヨタスマートセンター」である。

 ここで友山氏は、Connected Carを可視化した様子を見せた(写真参照)。画面に映っているのは「この付近20km四方に今この瞬間に走行中のConnected Car」である。赤は停車で、青は走行中の自動車を示す。青色が濃いほど、速度が大きい。

 「日本中全て、約400万台のトヨタのConnected Carがリアルタイムにカバーされている」友山氏はこのように語り、同社のConnected Carの規模と、文字通りの「ビッグデータ」をさばくAzureの能力についてアピールした。

 友山氏によるAzureの評価は次のようになる。「Azure採用前に比べ29%のコスト削減を実現し、同時に、日々のシステム運用保守やインフラ維持に割かれていた人員を大幅に削減でき、そこで生まれたリソースを新サービスの創出に振り向けることができた。また、リードタイム、特に新たな地域のサービスを立ち上げる際のインフラ構築のリードタイムは従来の10分の1と大幅に短縮できた。スモールスタートも可能になることから、ビジネスリスクの低減にもつながっている」

 「機能面では、Azure Machine Learning(機械学習)をビッグデータ解析に活用している。このようなIT業界の最先端の技術を、本業に即座に取り入れることができるメリットは計り知れない」と友山氏は語った。

 友山氏のスピーチの締めくくりは、まさに情報システムを支えるITエンジニアへの激励とも言うべき内容だった。

 「トヨタのCIOとして心掛けていることがある。ITという部門は、特に製造業では、技術、営業、管理本部からの依頼仕事をこなす下請け的な組織になってしまいがちだ。“IT屋”としての夢やビジョンにも乏しくなる。CIOに就任してからは、『俺たちが会社を変えるんだ』『ITドリブン、ITイニシアチブ』と訴え続けた。なぜなら、これからのビジネスにおいてITなしではイノベーションは起こせないからだ」

 「IT屋一人一人が、自らの手で、ビジネスを、そして商品を変革する。そういう情熱を抱き続けることこそ、これからのIT屋の出発点だ。それでこそITはイノベーションテクノロジといえるのではないか」

 自動車産業の未来にとって、クラウド、ビッグデータの活用は必然となる。それを支えるITの重要性のアピール、そしてIT専門家への叱咤激励は、参加者にとって大いに刺激となったはずだ。

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