デジタル時代のスピードでビジネスをするEMCが見せる「新しい顔」「ハコモノ」だけじゃない

EMCジャパンは2015年6月9日に行ったセミナー「業界の最先端! ストレージとクラウド技術はここまで進化した」の中で、先頃米国で、「REDEFINE.NEXT」をキーワードにして開催された年次カンファレンス「EMC World」の発表内容をダイジェストで解説。「ハコモノ」だけではなく、ソフトウエアのオープンソース化や無償化といった同社の新しい顔を紹介した。

» 2015年07月15日 00時00分 公開
[ITmedia]

  「ごついハードウエア製品」というイメージの強かったEMC。だが同社はデジタル時代のスピードでビジネスをするために、自らを、そして顧客のITシステムのあり方を変えようとしている。

 EMCジャパンは2015年6月9日に行ったセミナー「業界の最先端! ストレージとクラウド技術はここまで進化した」の中で、先頃米国で開催された年次カンファレンス「EMC World」の発表内容をダイジェストで解説した。今回のEMC Worldのキーワードは「REDEFINE.NEXT」。ITとビジネスの新定義から、その次のステップに移るときに来ているとし、そのステップを促進する新たなアプローチとともに、その方向性を紹介した。

プラットフォームの転換点で差をつける

 顧客の「指の先にある世界」を意識せよ――顧客体験がモバイルやソーシャル、クラウドといった指先で操ることができるデジタルの世界にシフトしている中で、Uberなどのデジタルを活用した新興企業が急速に競争優位を拡大し、過去数十年にわたって業界のトップを走ってきた企業を淘汰しようとしている。そのスピードをけん引しているのがソフトウエアで価値を提供する「Software Driven」のビジネスモデルとそのための新たなプラットフォーム(クラウド、モバイル、ソーシャル技術、ビッグデータといった「第三のプラットフォーム」)の活用である。

 その中で、業務アプリケーションごとに信頼性を重視したクライアント/サーバーモデル(第二のプラットフォーム)のシステムを基盤としてきた従来型のビジネスは、この新たなデジタル時代の波にどう対応していけばよいのか。

EMCジャパンのプリンシパル・マーケティングプログラムマネージャー、若松信康氏

 今企業に求められるのは、「第二のプラットフォームの信頼性か、第三のプラットフォームのスピードかの二者択一ではなく、その両方の武器をプラットフォームの違いを意識することなく、ビジネスに応じて活用できる手段である」と、EMCジャパンのプリンシパル・マーケティングプログラムマネージャー、若松信康氏は指摘した。

 第三のプラットフォームに取り組むために、第二のプラットフォームの信頼性を維持しながらコストを削減する、その上で第三のプラットフォームを独立して構築するのではなく、二つのプラットフォームをブリッジするテクノロジーを使って使い分けるというアプローチを紹介した。

第二のプラットフォームの信頼性と第三のプラットフォームのスピードの共存

 「昨年からの大きな変化は、テクノロジーの進化だけではなく、企業の取り組みを劇的に加速する手段を提供したこと。その一つが、Software-Defined Storageの無償化だ。信頼性の高いエンタープライズストレージの機能を無償でx86サーバー上で利用できることで、第二のプラットフォームのコストを削減できる。また、x86サーバーがあれば追加コストをかけることなく、第三のプラットフォーム用のスケールアウトストレージを簡単に作ることもできる」(同氏)という。

 さらに大きな変化として若松氏は、オープンソース化を挙げた。同氏は「ユーザーの利益を最大化するには柔軟な選択肢が必要であり、選択肢はロックインの排除によって加速される。EMCが提供するSoftware-Defined Storageは、二つのプラットフォームにわたる新旧さまざまなストレージを一つのインターフェースから利用することを可能にするが、その選択肢を将来にわたってスピーディーに拡張していくには、EMCの枠を超えて、コミュニティの協力を得るオープンソース化がベストだ」とした。

 続く講演では、デジタルへ向けたアプローチの重要な一つである、第二のプラットフォームの信頼性を維持しながら、コスト効率を向上させる新機能、新製品の詳細が解説された。

より高性能、大容量を追求するハードウェア製品群

 EMCのポートフォリオの幅広さを反映し、EMC Worldで披露された製品は多岐に渡った。だがそれらは「第二のプラットフォームを生かすもの」「第三のプラットフォームを実現するもの」、そしてその両方を支える「コンバージドインフラ」の三種類のいずれかに分類できる。

 まず、第二のプラットフォームを支えるエンタープライズストレージでは、通称「BEAST」と呼ばれる「XtremIO」のハイエンドモデルが発表された。「なぜ『野獣』と名付けられたかというと、性能、容量ともに突出していることに加え、EMCの製品群の中でも突出して成長しているから」と、EMCジャパン SE本部 プリンシパルSEの三保尚澄氏は説明する。

EMCジャパン SE本部 プリンシパルSEの三保尚澄氏

 新モデルは、40TBのブリックを最大8つ搭載でき、1キャビネット当たり最大物理容量320TB、標準仕様の重複排除と圧縮を加味すると最大1920TBとなる、既存モデルの約3倍に当たる超大容量をリニアに拡張可能な形で実現する。加えて、1ブリック辺りRead/Write混在で120万IOPS、Read Onlyでは最大200万IOPSという性能を実現。ブリック増設時にも性能低下が見られず、遅延も1ミリ秒以下と少ないことが特徴だ。加えて、XtremIO 4.0ソフトウエアによって、スナップショットなどの機能を強化した。「XtremIOはよく第三のプラットフォーム向けと言われるが、実は第二のプラットフォームにも適している。しっかりとしたデータサービスを提供する上、スケールアウト型なので設計が容易で、コストダウンにつながる」と三保氏は説明した。

 また、第二のプラットフォームを支えつつ、第三のプラットフォームへの移行を支援するものとして、異なる種類のデータを1つのストレージの『湖』に保存しようという構想「Isilon Data Lake」を展開する。これは、既存のSMBやバックアップ/アーカイブデータに加え、Hadoopに代表される非構造化データをもカバーするもので、HadoopのファイルシステムであるHDFSの他、多様なプロトコルに対応している。

 特に、既存のストレージでは、Hadoop環境でデータ保護のためにミラーリングを行うと処理に時間がかかってしまうことが課題だった。Isilon製品で構築されたData Lakeを活用することで、Webやデータベースをはじめとするマルチソースからマルチプロトコルで書き込まれたデータを蓄積し、即座にHadoopジョブを実行するといった運用が可能になり、大幅に時間を削減できる。「スケールアウト型で拡張が容易なことも特徴だ」と三保氏は述べている。

 もう一つ、第三のプラットフォーム向けにテックプレビューの形で紹介されたのが「DSSD」だ。三保氏曰く、DSSDは「Flashを再定義」する製品という。外見は36スロット、48台まで拡張可能なラックスケールのフラッシュストレージ製品だが、専用の拡張ハードウエアを活用することでCPUとストレージとをPCIe経由で直結し、これまでにない低遅延、大容量を実現する。データサービスに欠けてはいるが、「その部分はソフトウエアで担保することにより、その分、ハードウエアは大容量で高速に動作する」(三保氏)という。

第三世代のインフラに求められる四つの要素を実現

 続いて登場したEMCジャパン システムズエンジニアリング本部 シニア・システムズエンジニアの市川基夫氏は、「おそらく皆さんがEMCと言えば想像するであろうハードウエア以外の話」を紹介した。

EMCジャパン システムズエンジニアリング本部 シニア・システムズエンジニアの市川基夫氏

 市川氏はまず、アプリケーションの変化に伴って、多様なワークロードの混在や拡張性に耐えられるインフラが必要であると指摘。その上で、「これからのストレージインフラに必要なキーワードは四つある。一つは、柔軟に変化に対応できる『Software-Defined Storage(SDS)』。二つ目は急激なデータ増加に対応できる『スケールアウトアーキテクチャ』。三つめは柔軟な選択肢を提供する『オープン』。最後は『俊敏性』で、最近では、通常半年から1年以上の時間を要するシステムやサービスの企画からカットオーバーまでの時間を1カ月以内で行いたいというような要求もある」と説明した。

 EMCではこれら四つのキーワードを満たす製品を、第二のプラットフォーム、第三のプラットフォーム双方に向けて提供している。それも、「ストレージアレイ活用型」「ストレージ機能のソフトウェア化」「コモディティサーバーのストレージ化」という三つの形で実現している。

 例えば、EMCのミッドレンジストレージVNXを仮想アプライアンス化し無償提供を開始した「vVNX」は、ストレージ機能のソフトウエア化を実現するものだ。「VNXeをベースに、これを構成するレイヤーをモジュール化して、必要なものをハイパーバイザー上で仮想マシンとして動かせる。今まで専用ハードウエアが必要だった機能を全て利用できる」(市川氏)。これをパブリッククラウド上で動かせば、ハイブリットクラウド環境向けに「Disaster Recovery as a Service」を提供する、といった使い方も考えられる。現時点ではコミュニティエディションという形だが、今後、KVM対応やパブリッククラウド向けなどに広げていく計画という。

 「EMC ScaleIO」は、SDSとスケールアウトというキーワードをコモディティサーバー上で実現するもの。「複数のサーバーの内蔵ディスクを束ねて一つのプールとし、最大1000ノードまで性能と容量をリニアに拡張可能な分散ストレージ環境を実現する」(市川氏)。EMCは、vVNX同様、ScaleIOの無償提供も開始した。無償版ScaleIOにおいても、スナップショットや暗号化といったエンタープライズ向けの機能含め、全てのScaleIOの機能が利用できる。

 「ViPR」はSDSを実現するものだ。「専用のGUIや管理ツールを使う必要があったボリュームの切り出しやプロビジョニングと行った作業を、ViPRを活用することによって、配下のストレージ構成を気にすることなく楽に行える」(市川氏)。加えて、VMwareやOpenStackといったクラウドOSとの連携も実現。仮想マシンを払い出すタイミングで、専用のプロファイルに基づいてストレージを切り出し、構成する、といった一連の流れを実現する。

 EMCはこのViPRをオープンソース化した「CoprHD」をGitHub上で公開することにより、「われわれだけでなく、皆さまと一緒にエコシステムを構築し、SDSコントローラーの価値を高めていきたい」と考えているという。「ハードウエアだけを提供してきたこれまでとは異なり、顧客やパートナーに柔軟な選択肢を提供していく」(市川氏)

 さらに、拡張性と俊敏性を兼ね備えたコンバージドインフラの分野にも新製品を投入した。一つは、ラック単位のスケーラビリティを備えた「VxRack」だ。Vblockの備える拡張性と、VSPEX BLUEのシンプルさを兼ね備えたものとなる。まずはScaleIOの技術をベースに、VMware vSphereやKVM、ベアメタルといった多様なプラットフォームに対応したモデルをリリースする予定で、その後もvSphereのみサポートするものなど多くのラインアップをそろえていく予定という。

 最後に市川氏は、四つのキーワードを全て包含する「Project Caspian」を紹介した。これはオープンソースソフトウエアとコモディティを100%用いた、第三のプラットフォームをターゲットにしたコンバージドインフラだ。EMCが昨年買収した旧Cloudscaling社の製品をベースにしており、Caspian上でハードウェアを構成すると、OpenStack環境の設置、デプロイとその上で動作するアプリケーションをシンプルに展開できるようになる。

 「EMCはハコモノだけでなくSDSも強化している。それによって、第二のプラットフォームと第三のプラットフォームの共存とシフトを強力に支援する」(市川氏)。

第二、第三、どちらのプラットフォームでもビジネスデータを保護

 最後にEMCジャパン DPS事業本部 システムズエンジニアリング部 シニアマネージャーの神近孝之氏が、データ保護ソリューションを紹介した。「IT管理者は信頼性と俊敏性という二つの世界に対応していかなければならない。そして、どちらの世界においてもビジネスデータの保護は不可欠だ」(神近氏)。EMCでは何が起ころうとも全てのデータを保護していく、というスタンスで取り組んでいくという。

EMCジャパン DPS事業本部 システムズエンジニアリング部 シニアマネージャーの神近孝之氏

 ここで中核となるのは「Data Domain」シリーズだ。元々Data Domainが持っていた重複排除技術をそのままに、ネイティブツールを用いた高速バックアップなど豊富な機能を備えている。EMC Worldでは、「DD990」の後継機種として、より高速で拡張性を高めた「DD9500」が発表されたほか、「DD160」の後継として「DD 2200」の4TBモデルが追加された。

 神近氏はまた、Data Domainの機能を仮想アプライアンスとして動かす「Project Falcon」にも言及した。これにより、マルチテナント環境やWebスケールの大規模環境への対応が容易になると期待されている。ただ、EMC Worldではそのコンセプトが発表された段階で、2015年末から2016年に変えて製品がリリースされる見込みだ。

 さらに、Hadoop環境のデータをData Domanで保護するソリューション、「ProtectPoint」の機能強化による「Networker」との連携なども紹介。また、バックアップに加え、引き合いが多いというアーカイブもカバーする新たなデータ保護ソフトウエアスイート「Data Protection Suite 2015」も紹介した。このスイートには、テープからのリプレース市場を狙ったクラウド上でのデータ長期保管ソリューション「CloudBoost」や、バックアップしたデータの中から必要なデータを検索する「Data Protection Search」機能などが含まれている。日本国内ではまだ準備中だが、クラウド内で生成されるデータをクラウド内にバックアップする「Spanning」も含まれるという。

 EMCではこのように、Data Domainを中核に、EMCの他のストレージ製品やサードパーティ製アプリケーションとの連携を通じて包括的なデータ保護を提供していくという。

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提供:EMCジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年8月21日

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