「Oracle Cloud Platform」は日本のオラクルユーザーのクラウド移行を助ける?Database Watch(2015年8月版)

新しいIT環境のトレンドと既存の技術はどう共存できるでしょうか? 多くのITベンダーが両者の連携や統合を模索する中、日本オラクルもクラウドプラットフォームを軸に既存システムの“現代化”支援を打ち出しました。

» 2015年09月08日 05時00分 公開
[加山恵美@IT]

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 新しい技術に目が向けられるときは、裏を返せば「既存の技術では何かが足りない」ときでもあります。こうしたとき、既存の技術を提供する側は、いち早く新しい技術を取り込んで、顧客のニーズに応えていかなければなりません。

 加えて、既存の技術を使った顧客システムが「基幹業務システム」などのように重要性が高いものであれば、新技術の取り込みには非常に高い品質が求められてきます。既存の技術による製品を広く普及させてきたITベンダーは、顧客の重要なシステムを守る使命を抱えつつ、顧客に新たなメリットを与える新技術の取り込みも併せて行わなくてはならないため、非常に難しいかじ取りが必要になります。

 オラクルの製品は、データベースを筆頭にエンタープライズシステムで広く利用されてきました。果たしてオラクルは、クラウド化のトレンドに対して、どのように応えていこうとしているのでしょうか?

「そのままクラウドでも利用できること」

日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 PaaS事業推進室 室長 竹爪慎治氏 日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 PaaS事業推進室 室長 竹爪慎治氏

 現在、オラクルはクラウド戦略として「エンタープライズ向けの“統一されたプラットフォーム”」を掲げています。いったい何を統一するのでしょうか? 

 2015年8月5日、日本オラクルは「Platform as a Service(PaaS)最新動向に関する説明会」を開催しました。その中で、日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 PaaS事業推進室 室長 竹爪慎治氏は、オンプレミスとクラウドで「同じアーキテクチャ、同じ(オラクル)製品、同じ知識やノウハウ(が使えること)」と説明しています。現在、「オンプレミスで稼働しているシステムを、そのままクラウドでも利用できること」(竹爪氏)を目指しており、これが「統一されたプラットフォーム」ということになりそうです。


* 7月に新たなサービスを追加発表した際、日本オラクルは「POCO」というメッセージと共に「PaaS事業推進室」の設立も発表しています。竹爪氏はこのPaaS事業推進室の責任者として活動しています。当時の模様は「生まれ変わる日本オラクル、クラウドソリューション販売体制を強化」(@IT)をご覧ください。



 オラクルが「統一されたプラットフォーム」を用意するとしても、既存システムのクラウドへの移行を成功させるには前提があります。本連載5月版*で記したように、「オンプレミスからクラウドへのシステム移行」は「旅」のように、段階的に進めなくてはなりません。「旅の準備」では、クラウドへ出発する前にオンプレミスの環境を整えておく(標準化やプロセス整備を行っておく)ことが肝心だとオラクルは諭しています。



「そのままクラウドでも利用できること」と「現代化」

 竹爪氏はオラクルクラウドの基本戦略について「既存のシステムをモダナイゼーション(現代化)していく」と話していました。

 近年IT業界では、主にクラウド環境で実現できる新しい技術を「モダンな」と形容することがあります。オラクルのクラウド戦略では、オンプレミスで稼働している既存システムを、クラウドをベースとしたシステムへと「確実かつ安全に」転換していくことを目指しています。

 オラクルは同社のクラウドサービス「Oracle Cloud Platform」について、このようなビジョンを持って強化しています。PaaSでは必要なものを網羅するように、七つのカテゴリに分けたポートフォリオが組まれています。「データ管理」「アプリケーション開発」「コンテンツとコラボレーション」「ビジネス分析」「エンタープライス管理」「インテグレーション」「モバイル」です(サービスの中には複数のカテゴリに属するものもあります)。

Oracle Cloud Platformポートフォリオ(資料提供:日本オラクル)

 これまでは、データ管理の「Oracle Database Cloud Service」や「Oracle Database Backup Service」、アプリケーション開発の「Oracle Java Cloud Service」、コンテンツとコラボレーションの「Oracle Documents Cloud Service」、ビジネス分析の「Oracle Business Intelligence Cloud Service」などが提供されていました。

 「これらのサービスはオラクルのビジネスで急成長を遂げている」と竹爪氏は話します(グローバルでは2015年度第4四半期に4億2600万ドルの売り上げ)。売り上げの伸びと連動して、ユーザー数も伸び、Oracle Cloud Plarformの顧客は累計1800社となりました。

日本で展開されるPaaS、IaaSを整理

 直近は、2015年7月23日から日本国内でも新たなPaaSとIaaS(Infrastructure as a Service)が追加されています。まずはPaaSを見ていきましょう。

 PaaSの中でも特に拡充されたのが、「データ管理」のカテゴリです。「Oracle Exadata」をクラウドで利用できる「Oracle Database Cloud - Exadata Service」、「Apache Hadoop」などの、いわゆるビッグデータのプラットフォームでSQLを利用できるようにする「Oracle Big Data Cloud」などが追加されました(Database Watchとしては見逃せないところなので、あらためて整理する予定です)。

 「モバイル」のカテゴリではモバイルアプリケーション基盤となる「Oracle Mobile Cloud」、インテグレーションのカテゴリではSaaS(Software as a Service)連携基盤となる「Oracle Integration Cloud」、コンテンツとコラボレーションのカテゴリではビジネスプロセス連携となる「Oracle Process Cloud」が追加されました。ここまでが新たに追加されたPaaSです。

 この他にも、IaaSでは、長期保存向けのストレージサービス「Oracle Archive Storage Cloud Service」もサービスを開始しています。ラリー・エリソン氏が「主要パブリッククラウドと比較しても競争力のある価格体系を維持する」と言っていたストレージサービスです。

 今後も、オラクルが持つミドルウエアでは続々とPaaS提供が予定されているといいますから、ハイブリッドクラウドにおける選択肢として、存在感が高まっていくのかもしれません。

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