ヴイエムウェアが「EVO SDDC」発表、あらためて「ハイパーコンバージドインフラ」とはVMworld 2015(1/2 ページ)

米ヴイエムウェアは2015年8月31日、VMworld 2015で、「EVO SDDC」を正式発表した。この製品はハイパーコンバージドインフラで先行する「Nutanix」や「EVO:RAIL」とはイメージの異なる部分がある。ヴイエムウェアが、EVO SDDCを「ハイパーコンバージドインフラ」製品として発表した意図は何か。

» 2015年09月08日 05時00分 公開
[三木 泉@IT]

 米ヴイエムウェアは2015年8月31日、同社が開催した年次イベント「VMworld 2015」で、「EVO:RAIL」に続くハイパーコンバージドインフラの第2弾、「EVO SDDC」を正式発表した。EVO SDDCはこれまで「EVO:RACK」と呼ばれ、大まかなイメージだけが伝えられてきたが、正式発表によって、どのようなものなのかが明確になった。だが、この製品には従来の「ハイパーコンバージドインフラ」のイメージからは逸脱しているように見える部分がある。ヴイエムウェアが、EVO SDDCを「ハイパーコンバージドインフラ」製品として発表した意図は何か。本記事ではこれを探る。

EVO SDDCという「ハイパーコンバージドインフラ」製品

 EVO SDDCではEVO:RAILと同様、ヴイエムウェアはソフトウエア供給者の役割を担う。適切なハードウエアを組み合わせ、最終製品を作って販売するのはパートナーだ。EVO:RAILでは、デル、EMC、富士通、日立データシステムズ、ネットアップ、Super Micro Computer、ネットワンシステムズ、Inspurがパートナーとなり、製品を提供している。一方、EVO SDDCでは、デル、Quanta Cloud Technology(QCT)、VCEが最初のパートナーとして発表された。これらのパートナーは、2016年前半に、製品を正式提供する予定。加えてヴイエムウェアは、EVO SDDCのソフトウエアのみを(リセラー経由で)ユーザー組織に販売することを考えているという。

 EVO SDDCは、EVO:RAILと同様、仮想化インフラをいわゆる「ターンキーシステム」のように導入・運用できるようにした製品。サーバーハードウエアとしては、ホワイトボックスサーバーあるいはブライトボックスサーバー(ブランドは付いているが、ハードウエア上の差別化を加えていない製品)をベースとしている。また、ストレージには専用装置を使わず、サーバーに内蔵の記憶媒体を用い、ソフトウエアストレージを動かしている(2製品では近い将来、サーバーとは独立してストレージ容量の拡張ができるよう、ストレージサーバーアプライアンスが提供されるようだ。それでもx86サーバーでソフトウエアストレージを動かすことには変わりがない)。

 このように、EVO SDDCとEVO:RAILは、x86サーバーにサーバーとストレージの機能を集約・統合したターンキー型の製品であるため、ヴイエムウェアはいずれについても「ハイパーコンバージドインフラ」と形容している。

 補足すると、「コンバージドインフラ」(日本では「垂直統合システム」などと訳される。筆者は通常、「統合インフラ」と訳している)とは、サーバー、ストレージ、そしてネットワークの三つの専用装置をまとめ上げ、迅速に導入できて運用が楽であることを目指した単一のITインフラ製品。一方、「ハイパーコンバージドインフラ」という言葉は、ストレージに専用装置を用いず、演算処理機能とストレージ機能をサーバーが担うアプライアンス的な製品を形容・分類するために使われている。“サーバーだけ”になっていることが、「ハイパー(超)」な統合というわけだ。

物理ネットワークスイッチも含めたライフサイクル管理を実現

 ヴイエムウェアはEVO SDDCについて、EVO:RAILと異なり、大規模な仮想化インフラ環境を想定した製品だとしている。より具体的には、3分の1ラックからスタートし、1ラック当たりサーバー仮想マシン約1000台を稼働可能で、これを複数ラックにわたって拡張できることを設計ポイントとしているという。

 EVO SDDCが搭載するソフトウエアで、EVO:RAILと共通なのは「VMware vSphere Enterprise Plus」、ストレージソフトウエアの「VMware Virtual SAN(VSAN)」、ログ分析ツールの「vRealize Log Insight」。

 一方、EVO SDDCのみに含まれるのは、同製品専用の仮想化環境設定ツール「EVO SDDC Manager(SDDC Manager)」とネットワーク仮想化ソフトウエアの「VMware NSX」。他に運用管理ツールの「vRealize Operations」が含まれ、クラウドセルフサービス/運用自動化ツールの「vRealize Automation」はオプションとなっている。

EVO SDDCのソフトウエア構成。注目はSDDC ManagerとVMware NSX

 SDDC Managerは、ソフトウエアとハードウエア双方にわたるライフサイクル管理のためのツールだ。初期の仮想化環境構築、増設、ソフトウエアアップデートに関わる作業を大幅に自動化する。

 ハードウエア管理については、サーバーだけでなく、PDU(Power Distribution Unit)、そしてデータセンターのトップオブラック(ToR)・スイッチ(「リーフスイッチ」)および「スパインスイッチ」も対象にする。

 SDDC Managerでは、サーバーやイーサネットスイッチを物理的に設置・接続すると、これらが自動的に検知され、大まかな設定を送り込むだけで、ほぼ自動的に仮想化環境が構築される。仮想環境構築では、単一のEVO SDDCクラスタ内に複数の「ワークロードドメイン」を構成できる。基幹システム群、仮想デスクトップ、クラウドネイティブアプリケーションなど、用途別に異なるパフォーマンス、可用性、セキュリティ要件を選択することで、仮想化クラスタが構築される。この裏では、vSphere、VSAN、vRealize Log Insight、NSXなどが自動的に構成される。当初の立ち上げに掛かる時間は、EVO:RAILの15分には及ばないが、2、3時間だという。

 増設も、追加ハードウエアが接続されると、これを取り込むための設定が半自動的にできる。また、EVO SDDCを構成するソフトウエア、サーバーおよびスイッチのファームウエアのアップデートも、半自動的に実行できるという。

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