新社長の下、日本に根ざした事業を――シスコシステムズ2016年度事業戦略発表「ワン・シスコ」でサービス/製品営業を一体化

シスコシステムズは2015年9月29日、2016年度における同社の事業戦略を発表した。2015年5月に新社長に就任した鈴木氏は、日本市場に特化した新ブランドの展開、そして「Internet of Everything(IoE)」を見据えたビジネス展開を目指す。

» 2015年09月29日 18時00分 公開
[宮田健@IT]

 シスコシステムズは2015年9月29日、8月から始まった2016年度における同社の事業戦略を発表した。2015年5月にシスコシステムズ 代表執行役員社長に就任した鈴木みゆき氏が登壇し、今後の重点戦略や日本における新たな展開を語った。

「日本市場へのコミット」「デジタルビジネス」「ソリューション力」を軸に

シスコシステムズ 代表執行役員社長 鈴木みゆき氏

 鈴木氏は社長就任後、170社、350人の顧客/パートナーと会話し、シスコシステムズの評価に耳を傾けたという。鈴木氏は「お客さまの率直な意見を聞き、要望を理解した上で答えることが経営の原点」とし、ヒアリングの結果から「IoT(モノのインターネット)、クラウド、モバイルの普及から、ITのネットワーク依存度が高くなるなか、シスコへの期待が大きいことも認識した。同時に、製品だけでなくソリューションを求められていることも分かり、改善すべき点がまだある」と述べる。

 シスコ社長に就任して以来、同社のオープンな企業文化やワークスタイルに触れ、「想像以上に高いレベル、ビデオ会議や在宅勤務も活用でき、便利さを実感している。この柔軟なワークスタイルの実現は、日本においてシスコが貢献できる分野だ」と感じたとのことだ。

 グローバルにおいては、シスコは「戦略的なデジタル時代のパートナー」を目指している。2015年8月には米アップルと協業し、シスコシステムズが持つ製品、サービスとiOSデバイスの連携を強化することを発表した。同じく2015年5月にCEOに就任したチャック・ロビンス氏は「もっと付き合いやすく、分かりやすく、素早い対応のできる企業」を目指すとしており、IoTを超えた「Internet of Everything(IoE)」で進むデジタル化を見据えている。

 その方向性を受け、シスコシステムズの2016年度事業戦略は「日本により根ざした事業展開」「デジタルビジネスの支援」「統合ソリューションビジネスの強化」を3つの軸に据えた。

日本独自の新ブランド「Cisco Start」を発表

 2016年度の事業戦略発表に先立ち、シスコシステムズは新ブランド「Cisco Start」を立ち上げている。これまで高価で大企業向け製品を提供してきた同社のソリューションを、100人規模以下の中小規模企業にも展開するものだ。この新ブランドのため、日本向けに独自に作ったスイッチを提供開始している。

 鈴木氏はこの戦略について、日本においては品質に対する要求が高いこと、手厚いサポートが望まれることを挙げ「シスコが支援できる領域を拡大するため、グローバル側に日本の要望を伝え、日本市場に適した製品を開発、提供できるようにした」と述べる。

日本独自のブランド「Cisco Start」

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 その他にも、日本市場におけるIoEのエコシステムを強化することを2016年度の方針としている。

 専務執行役員 シスコ コンサルティングサービス 戦略事業開発 兼 IoEイノベーションセンター担当の鈴木和洋氏は、IoTはまだ普及段階であることから、マーケットに浸透させるためには多くの企業との協力が欠かせないとし「2015年度は企業との提携だけでなく、慶応大学のIoT研究にファンディングを行った他、京都府のスマートシティに関する広範囲な協定を締結した。産官学にバランスよく活動し、2016年度も引き続き戦略的なアライアンスを結び、ポートフォリオを拡充する」と述べた。今後は主に製造業やパブリックセクター、サービス業へ注力し、日本での販売を強化する。

シスコシステムズにおけるこれまでの主な取り組み。解説はシスコシステムズ 専務執行役員 シスコ コンサルティングサービス 戦略事業開発 兼 IoEイノベーションセンター担当の鈴木和洋氏(クリックで拡大)

つながるためには「安全」が大前提――IoT時代のセキュリティ

 全てのものがインターネットにつながるというビジョンを現実的なものにするためには「セキュリティ」が重要だ。セキュリティは「セキュリティはシスコシステムズの事業全てに関わるものであり、顧客からも注目の集まる部分だ」と、執行役員 システムズエンジニアリング担当 兼 SDN応用技術室長 財津健次氏は述べる。シスコシステムズはエンドポイントおよびインフラ全般でセキュリティ製品を提供するとともに、ハードウエアだけでなく、セキュリティクラウドサービスなど多様な形態で提供する。

 財津氏は同社が提供する「Cisco Collective Security Intelligence」(CSI)を紹介し、「セキュリティクラウドサービスをはじめあらゆる場面で利用できる製品を提供し、その構築、運用まで全てのフェーズを支える。さらにセキュリティインテリジェンスと製品、サービスを連携させることで強みを出していきたい」と述べた。

セキュリティ対策におけるシスコ製品のサービス連携イメージ。解説はシスコシステムズ 執行役員 システムズエンジニアリング担当 兼 SDN応用技術室長 財津健次氏

 また、デジタルビジネスの視点でもう一つ注目が集まるのはキャリアグレードのネットワーク事業だ。キャリアやサービスプロバイダー向けには、基幹ビジネスを支えられる100GbEクラスのスイッチング技術を使った製品を提供する。日本においても動画配信ビジネスが登場しており、トラフィック増に対応しうる分野、そして欧米市場で浸透しつつあるイベント/スタジアムソリューションを日本でも展開する。

2016年2月に湯沢・苗場で開催されるFISアルペンスキーワールドカップでは、シスコとモバイルキャリアの協業でモバイル向けに低遅延なライブIP放送を行う(クリックで拡大)

製品とサービス営業の一体化で「ワン・シスコ」を

 さらに、2016年度は販売体制も見直す。これまで製品営業/サービス営業が分かれていた体制を一本化し、サービススペシャリストが支援する形態を取る。

2016年度の販売体制

 鈴木氏は「お客さまは製品やサービスではなく、明確なビジネスの成果を求めている。そのニーズに合わせ、製品から“総合ソリューション提供”にマインドを変える」とし、さらに「2020年には世界で500億のデバイスがネットワークにつながる。これは大きなビジネスチャンス。その上で自動化、デジタリゼーション、利便性に寄与できるのではないかと考えている」と述べた。

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