Visual Studio Dev Essentialsとは何か特集:Connect 2015(2/2 ページ)

» 2015年11月26日 05時00分 公開
[かわさきしんじInsider.NET編集部]
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特典を見る

 VS Dev Essentialsの紹介ページにある[Log in to access your benefits]リンク([ログインして特典をご確認ください]リンク)をクリックすると、自分が受けられる特典が表示される(マイクロソフトアカウントでのログインが必要)。

特典確認中の画面 特典確認中の画面

 筆者が確認したところでは、紹介ページにあった特典以外にもAzureのフリートライアル(200ドル分)、MSDN Magazine/MSDN Flashニュースレターなどに関するタイルも表示されていた。今すぐ利用できる特典については、利用を開始するためのリンク、ダウンロードリンク、詳細を記したページへのリンクなどがタイル最下部に表示されるので、興味のある方はクリックしてみてもよいだろう(サービスが出そろっていない状態なので、筆者がどの特典の利用も開始していない)。

どんな開発者にどんなメリットがあるのか

 ここまでざっくりとVS Dev Essentialsに含まれるプロダクトやサービス、その他の特典について見てきた。では、これはどんな人を対象としたパッケージだろうか。

 ここまで見てきたところでは、すでにVSを使っている開発者の方にはあまりメリットが感じられないというのが正直なところだ。

 逆に、これまでマイクロソフトの世界に触れたことがない方には、確かにいろいろなツールとサービスが取りそろえられていて、有償のサービスを期間限定ではあっても無償で試せることから、それなりに役に立つかもしれない(問題はそういう方は本フォーラムにはまずいらっしゃらないことだ)。

 それから、VSは使っているけれど、Azureを使う機会がなかったといった方にもそれなりのメリットがあるだろう。Azureを試用して、MVAでいろいろな知識を仕入れてみようと考えているのであれば触ってみる価値はある。

 と書いてはみたものの、気になることがある。VisualStudio.comの情報ページを開くと次のように表示されるのだ。

Visual Studio.comの情報ページ Visual Studio.comの情報ページ

 右上に「Visual Studio Dev Essentials」と表示されていて、特典の確認ページを開くリンクも用意されている。実はVS Dev Essentialsは単に無料ツールとサービスをパッケージングしただけのものではなく、マイクロソフトの開発者向けクラウドサービスと深く結び付き、マイクロソフトが全ての開発者に提供するベースライン(または最小単位)のサブスクリプションという位置付けになっていると考えるのがよいのかもしれない。これについては以下の「Visual Studio Cloud Subscriptionについて」でもう少し考えてみる。

Visual Studio Cloud Subscriptionについて

 最後に「Connect(); // 2015」で発表されたもう一つのサブスクリプションサービス「VS Cloud Subscription」についても紹介しておこう。

 冒頭でも述べた通り、これは開発者の必要に応じて、月次/年次払いの形態でVSを使用するもので、Visual Studio Marketplace(以下、VS Marketplace)から購入できる。価格は次のようになっている。

エディション 月次 年次
Professional 45ドル 539ドル
Enterprise 250ドル 2999ドル
VS Cloud Subscription
Professionalの年次払いが539ドルというのは、なかなか野心的な価格付けだ。というのは、VS Pro with MSDNの購入に躊躇(ちゅうちょ)していた層が、VS Cloud Subscriptionで年6万円くらいと思えば手が出せるようになるかもしれないからだ。

 月次払いの価格×12がほぼ年次払いの価格となっているので、年次払いにおトク感はないように見えるが、年次払いだとWindows/Windows Server/SQL Server/Office ProPlusなどを利用できるようになる(MSDN Subscriptionとの差異は不明だ。また、Office ProPlusを使えるのはVS Enterpriseの年次払いのみ)。

 「試し」にVS Professionalを月次払いで購入してみたところ、月々の課金額は4590円だった。ちなみに上で示したVisualStudio.comの情報ページの表示は変わらなかった。筆者としては「Visual Studio Dev Essentials」という表示の下に「Visual Studio Professional Cloud Subscription」などと追加表示されると予想していたのだが、そうではなかった。そうではなく、いわゆる「特典を確認するページ」に以下のようにVS Proのタイルが追加された。

VS Proを購入したよ! VS Proを購入したよ!
左下に「Visual Studio Professional」タイルが増えると共に、ページ最上部のバナーも「Welcome to Visual Studio Professional!」に変わっていることに注意。

 また、上の画像を見ると分かる通り、VS Cloud Subscriptionを購入すると自動的にVS Dev Essentialsに登録される。つまり、上で述べたVS Dev Essentialsの特典が自動的に付与される。これが意味するところは意外に大きいかもしれない。というのは、VS Cloud SubscriptionやMSDN Subscriptionの購入者は自動的にVS Dev Essentialsのユーザーともなるからだ。加えて、「無料だから」「どうせ入れるなら開発ツール全部入りにしよう」といった感覚で、単体プロダクトではなく、VS Dev Essentialsを多くのユーザーが選択することだってあるかもしれない。

 そうなったとき、これが多くの開発者が最初に選択するVSのサブスクリプションとなる。つまり、上で述べたようにVS Dev Essentialsがマイクロソフトの提供するVSサブスクリプションモデルのベースラインになるということだ。

 そう考えると、先ほどの画面に示したようにVisualStudio.comの情報ページに「Visual Studio Dev Essentials」と表示されることもうなずける。VS Dev EssentialはVisualStudio.comを使用する全開発者に共通の要素だからだ*2(単にVS Dev Essentialsのプロモーションという可能性もある)。

 VS Cloud SubscriptionでVS Proを購入した場合、追加の特典的なものは特に表示されなかったことも書き添えておく(ただし、購入前に表示されるページにはVS Cloud Subscription購入者向けの特典も示されるので、気になる人は[$xx/month]ボタンなどを押して、内容を確認しておこう。購入しなくても確認は可能だ)。

 なお、どのサブスクリプションでどんな機能が利用できるかについては「Visual Studio 2015 製品の比較」ページを参照してほしい。このページの最下部には「VS Dev Essentialのメリット」が「すべての開発者に無料提供」と書いてあることからも、全開発者に共通するベースラインというVS Dev Essentialsの位置付けが見えてくるのではないだろうか。

 VS Communityなど単体プロダクトをダウンロードして使うだけで十分なユーザーであっても、最終的にはこうした波に吸収される日がくるかもしれない。そしてその先にあるのは、VSの完全サブスクリプションモデル化とVS as a Serviceな世界かもしれない。

*2 そう思ったので、VisualStudio.comの情報ページにも自分のサブスクリプション区分を表すために「Visual Studio Professional Subscription」などと表示されるのでは、と予想したのだがその予想は現在のところハズれている。ということは、これはやはり筆者の勝手な妄想かもしれない。


まとめ

 本稿を書き始めた時点では、VS Dev Essentialsは「無料のパッケージと、お試し程度のサービスをかき集めたもの」というイメージであった。今でもこれはある程度正しく、これまでにマイクロソフト製品を使ってこなかった開発者にはそれなりのメリットがあり、マイクロソフトがそうした層にVSを使ってほしいと考えた上で実行しているある種のマーケティングプログラムであると筆者は考えている。

 その一方で、これはマイクロソフトが無料で提供する最小単位のサブスクリプションであり、今後のVSサブスクリプションモデルのベースラインとなるサービスという見方もできる。単体プロダクトは今後もリリースされるだろうが、将来的にはいくつかのプロダクトをまとめたVS Dev Essentialsが、開発者が手にする最小エディションという形になる可能性もある。開発者としては今後の動向に注目しておきたいところだ。

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