Oracle DBアップグレード時のSQLテストの手法を知るデータベース運用管理をクラウド化する方法(3)(3/3 ページ)

» 2015年12月07日 07時00分 公開
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出力されるリポートから、問題のあるSQLを特定

 SQL Performance AnalyzerによるSQL単体性能テストで、最初のステップとなるのは本番環境でのSQLのキャプチャーだ。キャプチャーした内容はSQL Tuning Set(STS)と呼ばれる領域に蓄積されるので、これをテスト環境に転送して実行する。新旧それぞれのバージョンに対してテスト環境を用意した場合、両環境でSQLを実行し、その実行計画や性能を比較したリポートを出力できる。

 テスト環境が1つしかない場合でも、SQL単体性能テストを実施することは可能だ。まずテスト環境に旧バージョンのOracle Databaseをインストールしてテストを実施し、その後アップグレードして再度テストを行えばよい。

 また、1つの環境に新旧バージョンのOracle Databaseをインストールする方法もある。本番環境と若干構成は異なることになるが、性能への影響はそれほど大きくないと考えられる。もし、テスト環境を1つしか用意できないのなら、この方法もご検討いただきたい。

 実行計画を比較したリポートでは、トータルのSQL数や実行計画が変化したSQL数、エラーが発生したSQL数を確認できる他、実行計画が変化した個々のSQL文や新旧の実行計画なども表示されるので、実行計画の妥当性を確認することができる。

 一方、性能比較では、「性能が変化していないSQL」「性能が改善したSQL」「性能が劣化したSQL」の3つに分類された比較リポートが出力される。具体的な性能比較結果も明記されるので、そこからチューニング対象とするSQLをピックアップしていくことになる。

 なお、一概に「性能」と言っても、これにはさまざまな指標がある。例えば、レスポンスタイムやCPU使用時間、I/O時間などだ。そのため、SQL Performance Analyzerでは複数の性能項目で比較できるようになっている。それらの中でも比較項目としてお勧めしたいのが「buffer_gets」である。これはバッファ読み取りブロック数で比較するというものだが、ハードウエアの性能やOS、Oracle Databaseの状態に影響を受けにくく、安定した比較が行える。実際に評価する際には「buffer_gets」と「elapsed_time(レスポンスタイム)」を組み合わせて比較するのがよいだろう。

SQL Performance Analyzerでテスト工数を97%削減したケースも

 最後に、実際にSQL Performance Analyzerを活用して大きな成果を挙げた事例として、ある大手保険会社のプロジェクトを紹介しよう。

 このプロジェクトで対象となったのは、「新規契約」と「保険支払い」「業務端末管理」という3つのシステムである。SQLの数は、それぞれ2万5000、25万、1600であった。リテラルを使用したSQLが多いため、このように膨大な数となるが、実際のSQLの数は、これらの10分の1程度だと思われる。

 プロジェクトの内容は、Oracle Database 11.1.0.7を11.2.0.4にアップグレードするというものである。この中で課題となったのが、SQLの数を把握できないことと、性能変動がどの程度起きるのか判断できないため、チューニング工数を見積もれないことであった。

 そこで、同社はSQL Performance Analyzerを導入し、SQLのテストを行うことにした。実際の検証結果を見ると、テスト対象となった3システムの合計約28万のSQLのうち、文法エラーが発生したSQLは0.24%、正常に実行されたもののうち、実行計画が変化しなかったSQLが91.73%、実行計画が変化したのは8.03%で、そのうち5.37%のSQLの性能が向上し、0.62%は性能が変わらなかった。性能が低下したSQLは0.04%だったが、許容できないレベルだったのは、そのうちのわずか0.01%である。この結果から、アップグレードしても意外と性能劣化は起きないことが分かるだろう。

 SQL Performance Analyzerを導入した成果として、この企業では工数を97%削減できたとしている。当初、テストに188人月を見込んでいたが、SQL Performance Analyzerを利用したことにより、わずか4人月で同じテストを実施できたのである。

 ここまでに解説した通り、SQL Performance Analyzerを使えば、アプリケーション内に散在するSQLを見える化し、SQLを把握できていないシステムであっても本番環境でキャプチャーすることによって実際に使われているSQLを明らかにすることができる。

 また、それらのSQLを新旧環境で比較することにより、アップグレードによる性能面の影響を容易に確認することが可能であり、テスト工数の大幅な削減につながる。アップグレードプロジェクトで活用できるのはもちろん、索引の追加やパラメーターの変更などを行った際、SQLへの影響を調査するためのツールとして使える点も大きなポイントだ。

 アップグレードプロジェクトの成否を分けるSQLテストの効率化と精度向上に、ぜひこうしたツールもご活用いただきたい。

 以上、本企画では3回にわたり、Oracle Database 12cによるプライベートクラウド構築に向けたベストプラクティスを紹介した。Oracle Databaseには、クラウド技術を利用してデータベース環境を効率的に構築/運用することのできる実績のある手だてが、既に豊富に用意されている。これらをいち早く活用し、コスト効率と運用性に優れたプライベートクラウド環境を実現していただきたい。

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年1月6日

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