トヨタの人工知能開発子会社TRIの新拠点は、完全自律運転技術を開発気象条件の悪さがメリット?

 トヨタ自動車は2016年4月7日(米国時間)、人工知能技術の研究・開発子会社Toyota Research Instituteが、第3の研究開発拠点を設立すると発表した。気象条件の悪さが重要な理由かもしれない。

» 2016年04月08日 11時23分 公開
[三木 泉@IT]

 トヨタ自動車は2016年4月7日(米国時間)、「Toyota Research Institute, Inc. (TRI)」が、ミシガン州アナーバー(Ann Arbor)に第3の研究開発拠点を設立すると発表した。設立時期は2016年6月。人員規模は約50人を想定する。

 TRIは、同社が人工知能技術の研究・開発の拠点として2016年1月に米国で設立した会社。5年間で10億ドルを投入する計画で、人工知能、ロボティクス、自動・自律運転といった分野の研究開発を進めている。

 TRIはすでに米国のスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学とそれぞれ提携し、カリフォルニア州パロアルトで「Toyota Research Institute Palo Alto(TRI-PAL)」、マサチューセッツ州ケンブリッジで「Toyota Research Institute Cambridge(TRI-CAM)」を運営している。今回の「Toyota Research Institute Ann Arbor(TRI-ANN)」は、TRIにとって三番目の研究開発施設となる(ちなみにトヨタ自動車が4月4日に設立を発表したマイクロソフトとの合弁会社Toyota Connectedは、テレマティックス関連のサービス開発を行うものであり、TRIの活動とは直接連動しない)。

 既に2つの研究開発拠点を持っていながら、新たに拠点を開設するのはなぜか。TRIのCEOを務めている元DARPA Robotics Challengeのプログラムマネージャー、ギル・プラット(Gill Pratt)氏は、それぞれ役割が異なると説明している。

TRI設立記者会見でのプラット氏

 パロアルトのTRI-PALは、車両の運転支援を受けながらドライバーが運転するシナリオをカバーし、ケンブリッジのTRI-CAMはシミュレーションやDeep Learningなどに関する研究開発を主たる業務とする。そしてTRI-ANNは、完全な自律運転車の開発に注力するのだという。

 アナーバーを選択した理由については、ミシガン大学の関連研究における実績や、近隣に位置するトヨタの研究開発センターとのシナジーなどを挙げている。ミシガン大学の2人の教授が、マッピング技術、センサー/認識の分野を主導する存在として、TRI-ANNに入社するという。

 米Forbesの記事は、プラット氏が講演で、これまでの自律運転車の公道走行試験は、気候などの条件面でやさしい場所で行われてきたとし、「自律運転は、運転が困難な状況で、最も役に立つ。TRIの取り組みで難しい部分はここにある。トヨタの目標はあらゆる人々にとって、いつでも、どこでも、できるだけ安全な移動を実現することにある」と語ったと書いている。

 雪や雨、竜巻など、気象条件が厳しく、路面条件も悪いミシガン州で行われる公道走行試験は、自律運転車にとって最も厳しい部類に入るだろうという。

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