「3年待たずに転職」はアリか?――自身の成長とともに“やりたいこと”も成長するまだ君は間に合う! 現役エンジニアに聞く、学生のときにやっておくべきこと(7)(2/2 ページ)

» 2016年05月13日 05時00分 公開
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自身の成長とともに“やりたいこと”も広がっていった

 1社目のゲーム会社では、入社後に、プログラミングの基礎から、Webアプリケーション開発の実務まで学び、ゲーム内で発生するイベントを、企画から開発までトータルに手掛けることも経験した。

 「社会人最初の2年間で本当にいろいろなことを学び、短期間のうちに密度濃く成長できました。1社目の会社には、今でも感謝しかありません」

 しかし、そうしてソーシャルゲームの知見が広がるに連れ、次第に、自分の“やりたいこと”についても範囲が広がっていった。

 「自分の力をもっと高めたい、新しいことをもっとやってみたいと思うようになりました」

 石田さんが新卒で入社した2013年から、翌2014年にかけてといえば、ちょうどソーシャルゲームに新しい波が押し寄せた時期だった。

 その筆頭がスマートフォン向けのネイティブアプリの台頭である。2012年にガンホー・オンライン・エンターテインメントからリリースされた「Pazzle and Dragons(パズドラ)」が人気を集め、ソーシャルゲーム各社も、それまでのブラウザアプリからネイティブアプリに移行しようとしていた。ミクシィの「モンスターストライク(モンスト)」(2013年)、コロプラの「白猫プロジェクト」(2014年)など、根強い人気を持つゲームが、この時期に多数リリースされている。

 また、Webアプリベースのソーシャルゲームも、この時期からグローバル展開が本格化する。2011年にはDeNAが、ソーシャルゲームプラットフォーム「Mobage」のグローバル版を英語圏に展開。2012年には、グリーも国内向けと海外向けを統合したワンプラットフォーム「GREE Platform」の提供を開始する。

 こうした流れを受け、ソーシャルゲームを開発・運営するSAP(ソーシャルアプリプロバイダー)各社も、海外市場を視野に入れたタイトルの開発が加速していった。逆にいえば、プラットフォームを持たないSAPは、どのプラットフォームに自社のタイトルを載せるかでビジネスが大きく左右されるという悩ましい課題もあった。

 そうした時期だけに、ネイティブアプリ、グローバル展開など、石田さんの眼前に、就活時には見えなかった新しい世界がどんどん広がっていった。

 「新たな領域で活躍するためには、当時の会社では難しいと判断し、転職に踏み切りました」

 モブキャストを選んだ理由は、Webアプリとネイティブアプリの双方に強みを持つ企業であり、かつソーシャルゲームプラットフォーム「mobcast」を運営する、いわゆるプラットフォーマーであることだった。

 そして何よりも、70億人をワクワクさせる企業を目指すという目標に石田さんは共感した。この1文から、同社がグローバル展開を視野に入れていることが、とてもよく分かったからだ。

3年待たずに転職はアリ?

 現在、石田さんが所属しているのはモブキャストのルミネス開発チームだ。ゲームファンの中には「ルミネス」という名前にピンと来た人もいるだろう。現在は慶応大学客員教授でもある水口哲也氏がプロデュースし、PlayStation Portable向けにリリースされ、全世界で100万本を超えるヒット作となった「音と光の電飾パズル」ゲームだ。

 現在、石田さんのチームは、そのルミネスのスマートフォン向けネイティブアプリを全世界に配信するため開発を進めている。

 「水口さんと直にお会いして打ち合わせたり、ネイティブアプリの開発に携わったりして、充実した毎日を過ごしています」

 1社目で本当にやりたいことが新たに見つかり、2社目のモブキャストでそれがかなった石田さんに、就活生たちへのアドバイスをもらった。

 「やりたいことを仕事に、と考えるのは誰しも同じだと思います。でも、やりたいことは、どんどん成長していく。変わるのではなく、自身の成長に応じて広がったり、大きくなったりするものです。もし、自分のやりたいことが、会社の事業領域からはみ出してしまったなら、3年を待たずに転職するのは“アリ”だと思います。“第二新卒”は、そのためにあるようなものだと思います」

 今の経験値を持って就活時に戻れたらという仮定の質問に対しては「その時やりたいことだけではなく、将来の可能性も見据えて会社選びをしたかもしれない」と正直に答えてくれた石田さん。しかし、それが難しいことは誰もが承知している。では、就活生は今の段階で何ができるだろうか。

 「志望する企業のIR情報を見ること。過去にさかのぼってみれば、企業の成長の勢いが分かります。匿名掲示板などのウワサだけで判断するのではなく、その裏付けとなる情報ソースにきちんと当たることは、とても大切だと思います」

 また、志望する企業の雰囲気を知るためには、その企業の「複数」の社員と会うべきだという。

 「会って話をするのが1人だけだと、その人の印象に左右されてしまいます。入社後に、その人と一緒に仕事をするとは限りません。複数の人に会って、いろいろな視点からの話を聞くべきだと思います」

 企業の説明会では、人事担当者だけではなく、現場の社員と話す場を設けている企業も増えつつある。そうした機会はぜひ活用しておくとよい。また、出身校のOB・OG訪問ができれば、確実に押さえておきたい。

 そして、最もやっておくべきだと石田さんが考えるのが「トップの志に共感できるか」を確認しておくことだという。

 「企業のトップは、中長期的なビジョンを語ります。その話を聞いたり、著書があれば読んだり、企業理念に目を通したりすると、企業が将来どういう方向を目指していくのか、ある程度うかがい知ることができます」

 将来の“やりたいこと”を今の段階で予測するのは難しい。しかし、やりたいことが“広がる”可能性を念頭に置いて会社選びをすれば、根本の方向性にズレがない限り、一緒に新しいやりたいことに向かえるのではないだろうか。

 そして、石田さんのように、自分の成長に合わせて会社というプラットフォームを変えていくという方法も、また“アリ”だ。彼が3年を待たずに会社を辞めたのは、逃げでも負けでもなく、前進のためだったからだ。

次回も、トップエンジニアに就活のアドバイスを聞く

 本連載では、今後もIT企業の最前線で活躍するトップエンジニアに、学生時代に行った就職活動の内容や、これから就職活動を行う学生へのアドバイスを聞いていく。ぜひお楽しみに。

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