Skylake CPUに対するWindows 7/8.1の早期サポート打ち切りが撤回され、元通りにWindows 10 The Latest

最新の第6世代CPUのPCではWindows 7のサポート期限が短縮されるはずだったがキャンセルされ、元のサポート期限に戻った。だがCPUの種類によってはサポートされないOSもある。Windows 7/8.1のサポート期限を今一度まとめておく。

» 2016年08月19日 05時00分 公開
[打越浩幸デジタルアドバンテージ]
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連載目次

 本記事は当初「最新CPUはWindows 10でのみサポート、Windows 7/8.1のサポートは早期打ち切りに」というタイトルで公開しておりましたが、Skylake搭載PCに対するWindows 7/8.1のサポート期間が変更されたので、その内容を反映して記事を更新しています。


Windows 7/8.1のサポート期間は?

 Windows OSにはその提供時期に応じて「サポートライフサイクル」の期間があらかじめ決められており、その期間が過ぎるとセキュリティパッチなどが提供されなくなる。そのためユーザーは、サポートが終了するまでに次のOSへ移行するなどの対策を講じる必要がある。

Skylake搭載PCではWindows 7のサポート期間が短くなる!? Skylake搭載PCではWindows 7のサポート期間が短くなる!?
執筆時点で最新であるIntelの第6世代CPU(Skylake)を搭載したPC(システム)では、それ以前のCPUと比べるとWindows 7のサポート期間が短縮されるといったん発表された。だが後日、その予定は変更された。
  (1)Intelの第6世代CPUのPCにWindows 7 SP1をインストールした例。このCPUはCore i5-6500。Coreシリーズの場合、SkylakeのCPUは型番が6xxxとなっている。

 サポートライフサイクルには、製品が発表リリースされてからほぼ5年間の「メインストリームサポート」期間と、サポート終了までの5年間の「延長サポートフェーズ」の2つのフェーズがある。延長サポートが終了すると、以後はパッチなどが一切提供されなくなり、安全にPCを使うことができなくなる。

 具体的な延長サポートの終了時期は、Windows 7が2020年1月14日、Windows 8.1が2023年1月10日となっていた(Windows 8はWindows 8.1にアップグレードすることが条件)。現在Windows 7や8.1を利用しているユーザーや企業は、このサポート期限方針に基づいて、次期PCへの移行やリプレース時期などを計画していただろう。

●発表1:Skylake CPUに対するサポート期間を2017年7月17日までに短縮

 ところが2016年の1月になって突然、ある特定のCPU(Intelの第6世代CPU、開発コード名Skylake)を使ったPCシステムに対して、この方針を変更し、サポート終了を「2017年7月17日までに短縮する」という発表が行われた。

 この時点で、Skylake CPUやそれを使ったPCは販売開始から既に半年ほど経過していたため、該当するPCは、導入したばかりなのにサポート期間終了までわずか1年半となった。そのため、延長サポートの終了時期である2020年1月までWindows 7を使い、その時点で新システムへの移行を想定していたユーザーにとっては、大幅な計画変更を余儀なくされることになった。

●発表2:サポート期間を2018年7月17日までに、1年延期

 だが以上の方針変更は早急すぎるという顧客の声などに応えて、その2カ月後、該当するPCのサポート終了を「2018年7月17日までにする」という変更(発表1からすると1年間の延長)が行われた。

●発表3:サポート期間を2020年7月17日までに、さらに2年間延期

 その後、2016年8月になってサポート期限に関する方針変更がまた行われ、Skylake CPU搭載PCのサポート終了を「元々の延長サポート期限の終了時までにする」と発表された。これにより、Skylakeとそれ以前のCPUを区別せず、全て同じサポート期限が適用されることになった。

■CPUやOSごとのサポート終了時期は?

 何度か方針変更があったものの、結局は「Windows 7やWindows 8.1のリリース当初から決まっていたサポートプランに戻る」ということである。ただし「CPUの種類(世代)によってサポートされるOSが変わることがある」のは注意する必要がある。具体的には、使用しているCPUに対して次のような区別を行う。

  • 現行CPUのPC
    Intelの第6世代CPU(開発コード名Skylake)までを含む、既にリリース/販売されているCPUやチップセットを使ったPC
  • 次世代CPUのPC
    Intelの第7世代CPU(開発コード名Kaby Lake)、AMDの第7世代CPU(開発コード名Bristol Ridgeなど)といった、今後リリースされる予定のCPUやチップセットを使ったPC

 以上の発表内容をまとめて、Windows 7/8.1/Windows 10のサポートの終了時期などを図にすると次のようになる。

Windows OSのサポートライフサイクル Windows OSのサポートライフサイクル
従来はOSの種類によってのみサポート期限が決まっていたが、今後はCPUの種類(世代)によってはサポートされないOSがあることになる。

 具体的には次のようになる。

■現行CPU搭載PCでWindows 7/Windows 8.1を使う場合

  • Windows 7の場合、延長サポート期限は2020年1月14日まで
  • Windows 8.1の場合、メインストリームサポートは2018年1月9日まで、延長サポート期限は2023年1月10日まで
  • それ以降は(もしくは早期に)Windows 10への移行を推奨
  • 企業向けのEnterpriseエディションだけでなく、他のエディションも対象となる

■次世代CPU搭載PCでWindows 7/Windows 8.1を使いたい場合

  • これはサポートされない(サポート対象外)。当然、Windows 7/8.1プリインストールPCも販売されないだろう。

■現行CPU搭載PCでWindows 10を使う場合

  • Windows 10の場合、メインストリームサポートは2020年10月13日まで、延長サポート期限は2025年10月14日まで

■次世代CPU搭載PCでWindows 10を使う場合

  • 次世代CPU搭載PCは、その時点でリリースされている最新ビルドのWindows 10でのみサポート

新しいPCでもWindows 7/8.1を使い続けるには?

 サポート方針の変更が二転三転したが、結局、既に最新の第6世代CPU(Skylake)搭載PCを購入してWindows 7/8.1を使っている場合でも、以前の世代のCPUを搭載したPCと同じ期間だけサポートされることになった。

 これにより、Skylake搭載PCだけ早期にリプレースしたり、Windows 10にアップグレードしたりする必要がなくなった。

 Skylake搭載PCだけサポート期限が短縮されるため、PCベンダーによっては、旧世代のCPUを搭載したシステムを新たに販売するようなこともあった(次のリリース参照)。

 執筆時点では、上記リリースのPCを選ぶ必然性は薄まった。だが前述の通り、Kaby Lake以降を搭載したPCではWindows 7/8.1がサポートされないことになった。そのため、リースアップや故障によってPCのリプレースが必要になった場合、Windows 7/8.1を使い続けるにはSkylake以前を搭載したPCを調達しなければならない。Kaby Lake以降も、上記リリースと同様に旧世代CPU=Skylake以前を搭載したPCが提供されることを期待したい。

 なお、Skylake搭載PCにWindows 7をクリーンインストールしようとすると、デバイスドライバの不足により、うまくインストールできないことがあるので注意が必要である。詳細は次のColumn「SkylakeシステムへのWindows 7のインストールは難しい!?」を参照していただきたい。

Column「SkylakeシステムへのWindows 7のインストールは難しい!?」

 IntelのSkylakeシステムでは、新たに「Intel 100シリーズ」のチップセットが使われているが、このチップセットにはUSB 2.0のEHCIコントローラが含まれておらず、代わりにUSB 3.0のxHCIのみが用意されている。このようなシステムにWindows 7をインストールしようとすると、途中でUSBデバイスやキーボード、マウスなどを認識できなくなってインストールが中断することがある。Windows 7のインストールメディアにはUSB 3.0のxHCIドライバが含まれていないからだ。

 これを解決するには、DVDドライブを直接SATA経由で接続してインストールするか、USB 3.0用のドライバを組み込んだインストール用のUSBメモリを作成する、などの対策がある。具体的なインストール方法については次の記事を参照していただきたい。

 Windows 10をインストールする場合は、このようなドライバの不足などの問題はほとんど起こらないので、新しいPCでは、やはり新しいOSを利用するのが望ましい。


サポート期間の短縮はWindows 10への移行を促す施策か?

 マイクロソフトは、最新CPU搭載PCに対してWindows 7やWindows 8.1のサポートを短縮した理由を、先のブログで幾つか記している。

 まず、先のブログページでは、「Windows 7 を最新のチップで実行すると、割り込み処理、バスのサポート、電力状態などの Windows 7 の想定環境をデバイス ドライバやファームウェアでエミュレートする必要があり、Wi-Fi、グラフィック、セキュリティなどの面で問題が生じます。」としている。

 だが、方針変更はSkylakeシステムの発売から半年以上経過してから行われたため、既にWindows 7用に購入済みのユーザーも少なくなかった。本当に問題があるなら、Skylake搭載PCの販売前にユーザーに対して告知したり、問題を解消するようにシステム側で対応すべきことだ。

 また「Skylake と Windows 10 を組み合わせると、Windows 7 PC と比較してグラフィック性能が最大 30 倍、バッテリー駆動時間が最大 3 倍に向上し、チップのサポートによる仮想化をベースとした Credential Guard によってこれまでにないレベルのセキュリティが実現されます。」ともしている。つまりSkylakeでWindows 7を使うと不具合が想定されるというよりは、Skylake搭載PCならWindows 10の方がその性能をより発揮できると想定し、誘導しているようにも見える。

 だが、ノートPCユーザーでなければバッテリーは関係ないし、高いグラフィック性能は必要としない用途も多い。

 Credential Guard(サインインに必要な特権情報を、OSカーネル内で高度に隔離する技術。Windows 10の新機能)に至っては、64bit版のWindows 10 Enterprise+ドメインのような企業環境でしか使えない機能である。個人ユーザーやSOHO、WindowsプリインストールPCを活用している中小企業にはあまり関係がない(通常、Enterpriseエディションは市販PCにプリインストールされない)。

 Windows 10への無償アップグレード期間が終了した途端、サポート期間の短縮を止めて、元通りのサポート期間にするというのは、ユーザーに対してとても不誠実だろう。今後はこのような無理な予定変更(特に既存ユーザーにとっていくらかの不利益が生じるようなこと)は、その影響もよく考慮してから決断してほしいものだ。

■更新履歴

【2016/08/19】最新状況を反映して、内容を更新しました。

【2016/05/25】初版公開。


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