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» 2016年07月06日 05時00分 公開

特集:IoT時代のビジネス&IT戦略(6):コグニティブ技術も生きる、IoTの最新12社事例――製造業、自動車、ヘルスケア・医療、顧客対応、農業、建築・公共 (2/3)

[唐沢正和,ヒューマン・データ・ラボラトリ]

ヘルスケア・医療

 「ヘルスケア・医療」分野では、ミネベア、テクニコル、USA CyclingのIoT活用事例がピックアップされた。

【5】ミネベア

 ミネベアは、千葉大学医学部と日本IBMと共同で、「ベッドセンサーによる生体情報モニタリングシステム」の開発に向けた実証研究を行っている。このシステムでは、ベッドに後付けした荷重センサーによって、ベッドの上の患者の体重や小さな体動、さらに呼吸の回数や深さ、パターンなどの生体情報を収集しモニタリングする。何らかの異常が発生した場合は、アラートが通知され、早期発見・早期治療による医療の安全性を高めることができるという。

 なお、事前実証における生体情報の分析には、日本IBM東京基礎研究所の高度な機械学習技術が活用されている。

【6】テクニコル

 テクニコルは、IBM BlueHubの採択事業として、バイタルデータの解析によるストレスやワークエンゲージメントの可視化研究、サービス開発に取り組んでいる。具体的なソリューションとしては、スマートフォンなどから心拍数を取得し、そのデータからストレス状況や集中度を分析できる仕組みを実現している。これにより、心拍数を通じて、その人の精神状態を把握することが可能になる。例えば、教育現場で授業中の子どもの心拍数を管理することで、「算数の授業ではストレスを感じている」「国語の授業では集中している」などが分かるようになり、子どもの得意科目や苦手科目の理解に役立てることができる。

【8】USA Cycling

 USA Cyclingは、自転車競技パシュートの米国代表チーム。選手のトレーニング強化のために「Watson IoT Platform」を活用している。具体的には、レース中の自転車の状態や選手の心拍数、筋肉の酸素濃度などをモニタリングし、「Watson IoT Platform」でリアルタイムにデータ収集・分析を行う。これにより、コーチは、手元のタブレット端末から、自転車の状況や選手のコンディションを一目で把握でき、的確な指示を出すことが可能となる。USA Cyclingでは、次のオリンピック大会での金メダル獲得を目指し、IoTを活用した先進的なトレーニングに取り組んでいる。

【8】東京大学医科学研究所

東京大学医科学研究所 教授 理学博士 ヒトゲノム解析センター長 宮野悟氏

 ゼネラルセッションのパネルディスカッションでも、「ヘルスケア・医療」分野のIoT活用事例として、東京大学医科学研究所と日本IBMが進めているゲノム解析によるがん研究の取り組みが紹介された。

 東京大学医科学研究所 教授 理学博士 ヒトゲノム解析センター長の宮野悟氏は、「ゲノム解析では、生物の持つ遺伝情報を総合的に解析し、病気の予防や治療への理解を深めることができる。ゲノム解析を行うためには、30億文字の遺伝子情報を解析する必要があるが、スパコンの登場によってこれが可能になった。しかし、病気との関連性を探るためには、全世界で発表されている膨大な数の研究論文や臨床試験の情報を参照することが求められる。そこで、IBMの『Watson Genomic Analytics』を採用し、がん細胞のゲノム解析による新たながん研究を開始した」という。

ゲノム医療の時代に必要な情報解析

 「研究では、正常なゲノムとがん細胞のゲノムを解析し、そこからがん特有の遺伝子変異を特定する。そして、がんに関する研究論文や臨床試験の情報から、その遺伝子変異に適した治療方法を見いだし、患者に提供していく。現在、『IBM Watson』には、2000万件超の研究論文、1500万件超の薬の特許データ、100万件超のがんの遺伝子変異情報などが格納されており、『Watson Genomic Analytics』を利用することで、がんの原因となる遺伝子変異や有効な治療方法の候補を、30分程度で探し出すことができる。今後、がんに関する先進医療をさらに加速していくために、『Watson Genomic Analytics』を活用したがん研究は必要不可欠になる」(宮野氏)

顧客対応

【9】ソフトバンク

ソフトバンク 代表取締役社長 兼 CEOの宮内謙氏

 「顧客対応」分野のIoT活用事例については、ゼネラルセッションの特別講演で、ソフトバンク 代表取締役社長 兼 CEOの宮内謙氏が、同社が実践している取り組みについて言及した。

 「当社では、日本IBMと提携し、『IBM Watson』の国内販売を共同で推進しているが、これに伴い、社内でも『IBM Watson』を活用したプロジェクトとして、『SoftBank BRAIN』を立ち上げた。『SoftBank BRAIN』は、当社の顧客情報や商品情報、社内ドキュメント、問い合わせ情報などを『IBM Watson』に集約し、コンタクトセンターやショップのスタッフ、法人営業担当に向けて、迅速で的確な意志決定や顧客対応を支援する情報を提供していく仕組みだ。既にコンタクトセンターでの『SoftBank BRAIN』の活用が始まっており、高度な知識や経験が少ない新人オペレーターでも、あらゆる問い合わせに回答することが可能となった」としている。

 「今後は、コンタクトセンターでの実績をベースにして、全国約3800店舗のソフトバンクショップ、および約2000店舗の量販店にも『SoftBank BRAIN』の導入を拡大していく。これによって、全国各地のショップのスタッフが、ユーザーからの多種多様な問い合わせに、店頭で素早く対応できるようになる。また、2016年7月には法人営業向けの『SoftBank BRAIN』のシステムが完成する予定だ。このシステムを通じて、法人営業担当の顧客企業へのビジネス提案をサポートし、さらなる業務効率化を図っていく」と、コンタクトセンターからショップ、法人営業まで全面的にIoT活用を推進していくと述べた。

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