VMworld 2016直前に米NutanixがPernix Dataなどの買収を発表、その狙いはクラウドオーケストレーションツール企業も

米Nutanixは2016年8月28日、米国時間29日に開幕するVMworld 2016の直前に、Pernix DataとCalm.ioを買収したことを明らかにした。本記事では、2社の買収の狙いについてお届けする。

» 2016年08月29日 10時00分 公開
[三木 泉@IT]

 米Nutanixは2016年8月28日、米国時間29日に開幕するVMworld 2016の直前に、2つの企業を買収したことを明らかにした。本記事では同社のカンファレンスコールで得た情報、および過去の同社幹部へのインタビューに基づき、この買収の狙いについてお届けする。

 Nutanixが買収したのはストレージ高速化のPernix Dataと、クラウドオーケストレーションのCalm.io。

 Pernix Dataはこちらの記事で紹介しているとおり、仮想化環境のストレージを高速化するソフトウェア「FVP」を提供している企業。サーバのSSDおよびDRAMを活用し、複数サーバにまたがる統合的な仮想キャッシュを構築、背後の共有ストレージへのアクセスを高速化する。この製品はVMware vSphereと高度に統合されている。

 NutanixのCTOは、「ストレージはますます面白くなってくる分野」と筆者に話している。特に、NVMeや3D Xpointなど、インテルがサーバ側でのストレージアクセス高速化に向けて取り組んでいることに興味があるとし、ここにハイパーコンバージドインフラ製品の今後の進化の焦点の1つがあると語っていた。

 既に述べたように、FVPはVMware vSphereと高度に統合された製品だ。同社のKVMベースのハイパーバイザであるAHV(Acropolis Hypervisor)など、他のプラットフォームに関する対応はどうするのかという質問に、同社は「長期的な戦略」として対応を進めていくと答えた。つまり、当面はVMware環境の高速化のみを目的に、FVPをNutanixのソフトウェアプラットフォームに統合するようだ。

 Nutanixが最近、「ヴイエムウェア離れ」を進めてきたことを知っている読者の一部は、「それではヴイエムウェアに対抗するための武器として使いにくいではないか」と考えるかもしれない。確かにNutanixはこの1年余り、同社のAHVをVMware vSphere/VMware ESXiの代替選択肢の1つとして推進してきた。vSphere/ESXi以外の選択肢の提供はヴイエムウェアにはやりにくいことで、その意味では自社の独自性を示しやすい。だがこれは「選択の自由」というシンボリックな意味で強力なメッセージではあっても、現在のビジネスへの貢献度はまだ大きいとはいえない。2016年5月の同社イベント「Nutanix .NEXT」の時点では、Nutanix製品の8割以上がVMwareで使われている。言い換えれば、Nutanixの売り上げの大部分は、vSphereユーザーに依存している。

 Nutanixの幹部は筆者に、「まずVMware vSphereを使うユーザー企業にとって、最良の選択肢を提供していきたい」と話している。PernixDataの買収は、「ストレージ関連技術の最先端を常に追求しながら、VMware vSphereユーザーにとって最善な選択肢を提供し続ける」という同社の考えを、一般に印象づける手段の1つと考えられる。

 Nutanixが買収したもう1つの企業、Calm.ioは、PaaS/アプリケーションレベルでのクラウドオーケストレーションソフトウェアを提供している。コンテナ、VMware vSphere、パブリッククラウドサービス(Amazon Web Servicesなど)、ベアメタルサーバなどを対象として、APIの差異を吸収し、統合管理および移行を支援するソフトウェア。こちらの買収の目的はもっと分かりやすい。

 Nutanixは「Application Mobility」を推進してきた。これは「アプリケーション中心に考え、その基盤となるインフラについては臨機応変に選択・移行ができるようにしていこう」という考えであり、機能でもある。現在はESXiとAHVの間で、これを実現している。その先には当然パブリッククラウドがある。Nutanix幹部は以前より、パブリッククラウドも含めた形で適材適所のアプリケーション運用を実現していくと語っていた。Calm.ioの買収により、これが実現に近づいたことになる。

 ヴイエムウェアもマルチクラウド/クラウドオーケストレーションに関しては、VMworld 2016で何らかの発表をすると考えられる。NutanixによるCalm.ioの買収は、その機先を制することを狙ったものといえる。

 さて、ヴイエムウェアは今週のVMworldでクラウドオーケストレーション製品を発表するのか。そしてそれは、米ヴイエムウェア Software-Defined Data Center部門担当上席副社長兼ゼネラルマネージャ、ラグー・ラグラム(Raghu Raghuram)氏が以前筆者に話していたような、「APIにGUIをかぶせたものでない」ものなのだろうか。

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