大阪駅のBad UX、マイルドヤンキー、反復プロセス、脱コミュ症、組織UX――UXデザインの今が分かる「UX JAM11」レポート(1/3 ページ)

UI/UXの情報を配信するメディア「UX MILK」が2016年8月31日にUXをテーマにしたイベントを開催。7つのライトニングトークの模様をレポートする。

» 2016年09月15日 05時00分 公開
[佐藤翔Jクリエイティブワークス]

 2016年8月31日、NHN テコラスの東新宿オフィスで「UX JAM11」が開催された。UX JAMはUI/UXの情報を配信するメディア「UX MILK」が主催するイベントで、UX(ユーザー体験)をテーマにした5分間のライトニングトークと交流会が繰り返される構成となっている。デザインやディレクションなどの現場で活躍するスピーカーたちの“生の声”を聞きながら、参加者が肩ひじ張らずに気軽に交流できるのが、このイベントの特徴だ。

 ライトニングトークの中には独特な視点によるものもあり、時折、会場は爆笑に包まれた。本稿では、ライトニングトークの様子を一部お伝えする。

総勢160人近くが参加。女性の参加者も多い

ユーザーは楽天の店舗ページを実際のところ、どう見ているのか

 NHN テコラスの清水竜一氏は、現在の会社で働く前は、受託制作で楽天市場向けのデザインを10年以上制作してきた。その過程で実施したユーザーテストによって覆された固定概念についての話を披露してくれた。

 固定概念の1つ目は、「楽天市場内の検索結果で上位になれば、店舗ページのアクセスが増える」という考えだ。実際、アイトラッキングによるユーザーテストの結果を見ると、下記の結果となった。

ピンクの丸い部分がユーザーが見ている箇所だ(清水氏の講演資料から引用)

 意外にも検索結果の上位だけに視線が集中するわけではなく、下の方までもユーザーは見ていることが分かる。必ずしも、上位表示すればいいというだけではないようだ。

 固定概念の2つ目は、「検索で上位表示&商品ページの作り込みのコンビネーションで商品が売れる」だ。

 先述の通り、ユーザーは検索結果の上位だけを見ているわけではない。さらに商品ページに遷移後も、実際はレビューを中心に見ていることが分かった。商品ページをとにかく長く作り込むだけでは商品は売れないとのことだ。

 3つ目は、楽天市場で多く見られるバナーについて。「バナーをたくさん置いておけば どれかに引っかかってくれる!」という固定概念があるが、実際はユーザーにはあまり見られておらず、自分が見たい箇所を見ていることがアイトラッキングのテストで分かった。

アイトラッキングのテストからそもそもバナーのエリアは飛ばしてコンテンツを見てることが分かる(清水氏の講演資料から引用)

 4つ目の固定概念として、「グローバルナビに『送料の案内』へのリンクがあるのは常識」と思われがちだが、実際は、そのリンクをユーザーが見つけられずページから離脱していることが多いことも分かったとして、ユーザーテストの重要性を強調した。

インハウスのデザイン室が取り組む「組織UX」とは

 KDDIウェブコミュニケーションズの高見祐介氏は、インハウス(内製)におけるデザインの取り組み方について、「組織UX」という言葉を使って解説した。

KDDIウェブコミュニケーションズ 高見祐介氏

 高見氏が所属するデザイン室では、各サービスの部署と連携し、印刷物の制作やブランド検証、モックアップ作成など、さまざまなクリエイティブを制作している。

インハウスデザイン室が行う アイデアの発想とコンセプト作成(高見氏の講演資料から引用)

 高見氏が「組織UX」として組織をデザインする上で取り組んでいることが、「共創」「共育」「よこぐし」の3つだ。

 「共創」とは、デザイナーもディレクターも開発者も自らのやれる範囲を広げ、プランニングを一緒にやれるような人材となり、柔軟なポジションチェンジができるようにすることである。「共育」は、教え合うことで自らも成長するということだ。「よこぐし」は、デザイン室が各サービスの部署と接する中で得た情報や知見、フィードバックをマーケティング部や他部署にも共有し、組織としてのUXをより充実したものにする試みだ。

 高見氏は、最後に「組織UXとは、インハウスにありがちなルーティン化を払拭し、社内で作るメリットを最大化するためのシクミとシカケ」とまとめていた。

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