AWSとセールスフォースの日本法人がHerokuの共同推進を発表共同IoTサービスプロダクトに発展?

セールスフォース・ドットコムとAmazon Web Services(AWS)の日本法人は2016年10月13日、両社がIoTなどにおいて、PaaS基盤サービスであるHerokuを共同推進していくと説明した。本社における未発表の取り組みを含めて、今後2社の間で具体的な連携がさらに進むことも示唆している。

» 2016年10月14日 16時46分 公開
[三木泉@IT]

 セールスフォース・ドットコムとAmazon Web Services(AWS)の日本法人は2016年10月13日、両社がこれまでの協力関係を強化していくことを説明した。プレスリリースという形にはしておらず、現時点での発表内容には若干曖昧な部分もある。だが、セールスフォース・ドットコムの常務執行役員でアライアンス本部 本部長の手島主悦氏は、今回の発表について「序章だと考えてほしい」と言い、本社における未発表の取り組みを含めて、今後2社の間で具体的な連携がさらに進むことを示唆している。

セールスフォース・ドットコムの常務執行役員でアライアンス本部 本部長の手島主悦氏(左)とAWSジャパン ハートなーアライアンス本部 本部長の今野芳弘氏(右)

 後述の「Heroku」はもともとAWS上で稼働している。また、米セールスフォースは2016年5月、「AWSを優先パブリッククラウド提供者として積極的に活用していく」と発表した。同社のAIサービスである「Einstein」も、AWS上で動いているという。今回の発表はこうした米本社同士の協力関係をベースにしているものの、基本的には日本法人同士の取り組み。

 2社は今回の協業の背景として、業務システムとIoT、ビッグデータなどを連携させたビジネスプロジェクトを、迅速に立ち上げるニーズが顧客の間で高まりつつあると説明。こうしたソリューションを一気通貫で設計・実装できるノウハウが求められているとする。そこで、IaaSとSaaSという、特徴の異なるクラウド技術をつなぐアーキテクトを育成し、これに伴ってクラウドエコシステムを拡大する必要が出てきたと説明する。

 そこで2社は、当面セールスフォースのPaaSであるHerokuを軸として、協業を進める。その柱となるのは、「クラウドデザインセンター(CDC)を設立してリファレンスアーキテクチャを提供」「ベストプラクティスを両社のパートナーに展開」「Heroku Enterpriseを軸とした営業協力」「共同マーケティングの実施」の4つだという。ちなみにCDCはすでに立ち上がっているという。両社のパートナープログラムにまたがる認定や新たなパートナープログラムは、現状では考えていないという。

 Heroku Enterpriseとは、米セールスフォース・ドットコムが買収した企業であるHerokuが展開しているPaaSのエンタープライズ版。インフラを意識せずにアプリケーションの開発と運用ができる。エンタープライズ版の特徴は主に、ユーザー専用のネットワーク空間を手に入れられる点にある。Herokuはサービス全体がAWS上で構築されていて、東京リージョンでもHeroku EntepriseのプライベートPaaS基盤を動かせる。HerokuはAWSのパートナープログラムに加入しているという。AWSとしては、今後もHerokuを正式にはAPNパートナーの1社として扱いながら、共同でできることを探していくということのようだ。

「迅速なIoTビジネス立ち上げ支援」の行きつくところ

 2社は、「IoT(などの)ビジネスの迅速な立ち上げ支援」をキーワードとして、PaaSの活用ノウハウの展開を進める。

 一方、IoTなどでは端末の接続からビジネスとしての管理まで、ビジネス構築に必要な全ての作業を抽象化・自動化することで、迅速かつ容易に利用できるような製品やサービスを求める人が増えるだろうことは想像に難くない。特に今後、セールスフォースの顧客がIoT関連のビジネス化を進めるとき、こうした顧客の多くはできるだけ「開発」なしにシステムを構築したいと考えるのではないだろうか。

 例えばマイクロソフトは、Azure IoT Suiteで、Microsoft Azureの各種サービスとDynamics CRMを組み合わせ、少ないステップでIoTを活用したフィールドサービスを構築できるようにしている。こうしたソリューションに対するニーズが増えてくる可能性は高い。

 マイクロソフトのあるAzure IoT担当者は筆者に、「マイクロソフトはCRMもIaaSでもナンバーワンでないかもしれないが、エンド・ツー・エンドのソリューション提供という点では唯一の存在だ」と話している。

 AWSとセールスフォースの関係者がAzure IoT Suiteをどこまで意識しているかは分からない。だが、「できるだけ開発をしなくて済むようなエンド・ツー・エンドのIoTソリューション」に対するニーズが大きな市場に育つと2社が認識するなら、2社はできるだけ継ぎ目なく2社のサービスを結びつけてまとめ上げ、抽象化された形で利用できるプロダクトを生み出す必要がある。

 本社で未発表の取り組みとは、こうしたプロダクトを指している可能性がある。

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