ヴイエムウェア、企業のハイブリッドクラウド化は日本が進んでいると説明サービス事業者の役割を強調

ヴイエムウェアは2016年11月7日、翌日の「VMware vForum 2016」開催を前に、東京都内で自社の事業戦略を説明した。この戦略において、日本ではvCloud Air Networkパートナーが大きな役割を果たしているといい、そのベストプラクティスを海外に広げていきたいとしている。

» 2016年11月08日 06時50分 公開
[三木 泉@IT]

 ヴイエムウェアは2016年11月7日、翌日の「VMware vForum 2016」開催を前に、東京都内で自社の事業戦略を説明した。この戦略において、日本ではvCloud Air Networkパートナーが大きな役割を果たしているといい、そのベストプラクティスを海外に広げていきたいとしている。

米ヴイエムウェアCEO、パット・ゲルシンガー氏

 米ヴイエムウェアのCEO、パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏は、同社のマルチクラウド戦略「Cross-Cloud Architecture」をあらためて説明した。

 同戦略ではまず、従来の延長線上で、一般企業やサービス事業者がクラウドを構築・運用するためにツールとして使えるインフラ製品・サービスを強化していく。サーバ/クライアント仮想化の「VMware vSphere」「VMware Horizon」と管理製品に加え、ソフトウェアストレージの「VMware VSAN」、ネットワークの「VMware NSX」などを提供する。

 一方、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud PlatformなどのVMware vSphereを使わないパブリッククラウドをユーザー組織が使う場合でも、社内ユーザーに自由を与える一方で、IT部門がセキュリティ、コンプライアンスを確保できるツールを提供する。ゲルシンガー氏は、「仮想化では『サーバからの自由』を実現したが、今回は『クラウドからの自由』を実現する」とも表現している。

 この戦略は今年春の発表以降、IBMがvSphere、VSAN、NSXなどで構成される「VMware Cloud Foundation」を採用したホステッドプライベートクラウドの提供を発表、またヴイエムウェアとAWSは、AWSインフラ上でヴィエムウェアがvSphere、VSAN、NSXによるホステッドプライベートクラウド「VMware Cloud on AWS」を2017年中ごろに提供すると発表するなど、vSphereベースのクラウドの選択肢がさらに多様化しつつある。また、パブリッククラウド利用のセキュリティとガバナンスを一括制御できるツールについては、8月下旬のVMworld 2016で、2017年中ごろに「VMware Cross-Cloud Services」を提供すると発表した。戦略はすでに具体化しつつある。

 日本では、vSphereベースのクラウドサービスを提供するvCloud Air Network(vCAN)パートナーの役割が大きく、今後もこれら事業者の支援に力を入れていくと、ゲルシンガー氏は話している。

 一方、日本法人社長のジョン・ロバートソン氏は、日本にはメインフレーム時代から、ミッションクリティカルなシステムの運用アウトソーシングが活発に行われてきたことを指摘。「日本では10年以上前からサービス事業者と協業しており、サービス事業者はプライベートクラウドとパブリッククラウドの双方のメリットを顧客に提供してきた。ヴイエムウェアが欧米でやろうとしているハイブリッドクラウドの姿が、すでに実現している」と話した。同氏は、「日本のサービス事業者が提供してきたベストプラクティスを、世界に持っていくことができる」といい、今後もヴイエムウェアのCross-Cloud ArchitectureとvCANパートナーのサービスを通じ、国内企業のハイブリッドクラウド化を推進していくと説明した。

日本のvCANパートナーは、すでにプライベートクラウドとパブリッククラウドのメリットを「いいところ取り」したハイブリッドクラウドを提供できているとロバートソン氏は言う

 事業戦略説明会にはIIJ、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティ、日本IBM、富士通のクラウドサービス責任者が参加。各社の提供サービスの内容は異なるが、vCANパートナーとして、今後もvSphereベースのクラウドサービスを充実させていくと語った。

日本の事業者のベストプラクティスとは? VMware Cloud on AWSの影響は?

 世界に通用する日本のサービス事業者のベストプラクティスとは、具体的に何を意味するのか。これを質問したところ、ロバートソン氏は次のような内容で回答した。

 日本ではクラウドサービスでも、何らかの障害が発生したときに根本原因を分析して報告書を提出するなど、サービスレベルが高い。米国などではこうしたことは行われていないが、ミッションクリティカルなアプリケーションがクラウドに載るようになればなるほど必要になってくる。また、クライアント仮想化、ネットワーク仮想化などの製品に関する国内サービス事業者の要求レベルは非常に高く、こうした事業者の声を、ヴイエムウェアではグローバルな製品機能の改善や新規開発に生かすようになっている。

 では、2017年中ごろにヴイエムウェアが提供開始するVMware Cloud on AWSが日本のvCANパートナーに与える影響について、どう考えているか。この質問をしたところ、ゲルシンガー氏は、まず日本での提供開始時期は、米国よりも後になると答えた。また、vCANパートナーは、今後ヴイエムウェアのCross-Cloud Servicesなどを活用して、それぞれが他のパブリッククラウドと連携することで付加価値を高めるケースが増えてくるだろうと話した。さらに、パブリッククラウドの普及はまだ初期段階と言え、vCANパートナーはさまざまな革新的なサービスを開発していくだろうと答えた。

 ロバートソン氏は、日本のvCANパートナーがVMware Cloud on AWSのようなサービスの登場を当然だと受け止めており、特にミッションクリティカルなクラウドの提供については自社サービスに自信を持っていると答えている。

IIJ、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティ、日本IBM、富士通のクラウドサービス責任者が、vSphereベースのサービスを今後も強化していくと話した

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