インテル、大規模なAI戦略を発表 AIプラットフォーム「Intel Nervana」を投入今後3年で、ディープラーニングの訓練時間を100倍高速に

インテルがAIの活用促進に向けた新しい製品、技術、投資計画を多数発表。AIの包括プラットフォーム「Intel Nervana」を中心に展開する。

» 2016年11月21日 12時54分 公開
[@IT]

 米インテルは2016年11月17日(米国時間)、AI(Artificial Intelligence:人工知能)の活用促進に向けた新しい製品、技術、投資計画と統合プラットフォーム「Intel Nervana」を発表した。

 インテルは2016年現在、AIが「今後のビジネスや生活の在り方を大きく変える」との考えから、小規模工場からドローン、スポーツ、詐欺検知、自動運転車まで、AIを利用するための多種多様な技術的選択肢を提供する事業に注力している。米インテル CEO(最高経営責任者)のブライアン・クルザニッチ氏は、「インテルは、AIの利用によるコンピューティングの変革をけん引するために必要な資産とノウハウを持っている。ビジネスや社会のためにAIを進化させることを目指し、技術や開発者リソースに大規模な投資を行っていく」と述べている。

photo AIとマシンラーニングの関係

AIプラットフォーム「Intel Nervana」とは

 インテルは、ディープラーニングのスタートアップであった「Nervana Systems」を2016年8月に買収。AIワークロードのための包括的なコンピューティングソリューションポートフォリオを提供するAIプラットフォームとして「Intel Nervana」を展開する。Intel Nervanaを、AIシステムに最適化されたAIソリューション基盤と位置付け、より多くのデータ専門家が業界標準技術を利用して、世界の困難な課題の解決に取り組むことを可能にすると述べている。

 2016年現在、AIワークロードを実行するデータセンターサーバの約97%で同社の技術が採用されており、同社はこれらの技術を、「柔軟でパフォーマンスに最適化されたソリューションポートフォリオ」とうたっている。例えば、「インテルXeonプロセッサー」や「インテルXeon Phiプロセッサー」、個別のワークロードに最適化させるFPGA(Field-Programmable Gate Array)などを用いたアクセラレータ技術、そして、Nervana Systemsの買収で獲得した革新的技術などが含まれる。

 インテルは今回、Nervana Systemsの技術を統合した最初のIntel Nervanaプラットフォーム製品「Lake Crest(開発コード名)」を2017年前半にテストし、2017年中に主要顧客に提供する計画を明らかにした。Lake Crestはニューラルネットワークに最適化され、最高のディープラーニング性能を提供すると共に、広帯域相互接続によって前例のないコンピュート密度を実現するとしている。併せて、クラス最高とうたうインテルXeonプロセッサーとNervana Systemsの技術を緊密に統合した同プラットフォームの新製品「Knights Crest(開発コード名)」も投入する。

 「Intel Nervanaプラットフォームは、画期的な性能を提供し、複雑なニューラルネットワークの訓練時間を大幅に短縮する。インテルは今後3年以内にこれを100倍の性能まで高め、ディープラーニング分野で行われるイノベーションのペースを加速させる」(インテル上席副社長兼データセンター事業本部本部長のダイアン・ブライアント氏)

 ブライアント氏によると、2017年のリリースを予定する次世代のインテルXeon Phiプロセッサー(開発コード名:Knights Mill)では、現世代比で最大4倍のディープラーニング性能を提供するという。また、次世代のインテルXeonプロセッサー(開発コード名:Skylake)の早期モデルを一部のクラウドサービス事業者に出荷する。統合型アクセラレーション技術の拡張版である「AVX-512」を搭載する次世代のインテルXeonプロセッサーにより、機械学習ワークロードの推論性能を大幅に向上できるという。詳しい機能や構成は、このプラットフォームファミリーが2017年半ばにリリースされる際に発表されるようだ。

幅広いAI資産を生かし、グーグルともAI/クラウド領域で提携

 インテルは、半導体製品以外のAI資産も取り上げた。その1つである「Intel Saffron Technology」は、メモリベースの推論技術と異種データの透過的分析を行い、ビジネスインサイトを提供する。この技術はIoTなどの小型デバイスに特に適している。

 さらにインテルは、AIシステムの展開を容易にする目的で、ネットワークエッジからクラウドまでのプロセッサポートフォリオ全体に適用される共通のインテリジェントAPI(Application Programming Interface)も提供する。例えば、画像認識技術の「Intel RealSense」、Vision Processing Unit(VPU)である「Movidius」、開発者に研修やツールを提供する「Intel Nervana AI Academy」、インテルプロセッサー上でのディープラーニングフレームワークを高速化する「Intel Nervana Graph Compiler」などが挙げられる。

 この他、インテルと米グーグルは、企業のIT部門がオープンかつ柔軟で安全なマルチクラウドインフラを確保できるよう支援することを目指す戦略提携を行った。両社はコンテナオーケストレーション技術「Kubernetes」、機械学習、セキュリティ、IoTの分野でAIに関する技術統合を進める計画だ。

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