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» 2016年12月05日 05時00分 公開

プロエンジニアインタビュー(2):教えて! キラキラお兄さん「プログラミングは視覚障害者にオススメの職業って本当ですか?」 (2/3)

[高橋睦美,@IT]

システム開発を志すも、プロジェクト単位の業務に困難さを感じる

 そんな外谷さんは大学で情報系の学部を専攻し、卒業後はシステム開発に関する仕事に就きたいと考え、2009年、当時のラックホールディングスの子会社であった「エー・アンド・アイ システム」に就職した。「現在は視覚障害者の進路というと大半がマッサージという状況ですが、情報系の仕事をすることも1つの選択肢だと考えていました」と振り返る。

 当時は「セキュリティの仕事」という意識ではなく、「情報システムに関する仕事」として選んだ会社だった。「たまたまラックホールディングスの人事部に全盲の方がおり、その人に関する記事を読んで『ここならば大丈夫だろう』と考え就職した」そうだ。

 エー・アンド・アイ システム入社後、希望通りシステムエンジニアとして働くことになった外谷さん。しかし3年ほど経験を積む中で、幾つかの壁にぶつかることになった。中でも難しさを感じたのが、開発プロジェクトごとにチームメンバーが変わってしまうことだった。

 開発プロジェクトにもいろいろあるが、外谷氏が関わることの多かったプロジェクトは数カ月単位。アサインされたら仕様に沿って開発を行い、完了すればチームは解散してまた別のプロジェクトに割り振られる、というサイクルでは、通常のエンジニアでも仕事の進め方やコミュニケーションのずれに悩むことがある。外谷さんの場合はなおさらだ。「視覚障害のある人と一緒に仕事を進めるにはどうしたらいいかをプロジェクトのメンバーに理解いただけてきたころにチームがばらけてしまうので、効率がどうしても悪かった」という。

 WordやExcel、Powerpointで作るプレゼンテーション資料の作り方にしても、「Excelで作られた設計書の中にクリップアートが入っていると、読み上げができず資料が読めない。だからテキストで入れてほしい」といったやり方を知っている同僚や先輩がいればいいが、プロジェクトが変わるたびに一(いち)からやり方を説明する必要があった。また、顧客によっては「資料は紙でしか渡せない」と言われ、お手上げということもあったという。「ペーパーレス化が進んでいるとはいっても、会社によってはまだまだデータよりも紙ということが多かったです」(外谷さん)

 こうしたことから、同一のチームで長いスパンで働けるプロジェクトがいいのではないかと考えて異動したのが、セキュリティ部門のシステム開発部だった。そこでログ解析システム「LAC Falcon」の開発に携わった後、現在の部署に移り新規システムの研究、開発に携わっている。

自分にできることを分かってもらうことが第一歩

「集中して仕事をして、家では仕事しない」と決めている外谷さん。趣味は社交ダンスや旅行で、同じく全盲の障害がある奥様と楽しんでいるそうだ 「集中して仕事をして、家では仕事しない」と決めている外谷さん。趣味は社交ダンスや旅行で、同じく全盲の障害がある奥様と楽しんでいるそうだ

 「新卒で入社したときには、セキュリティに関しては『アンチウイルスは入れた方がいいよね』程度の知識しかありませんでした。グループ研修に参加して初めて、『あ、ラックってセキュリティの会社なんだ』とびっくりしたほどです」という外谷氏だが、空いた時間に自力でさまざまな資格を取得し、セキュリティに関する知識も身に付けていったという。

 意外なことに、視覚障害者が働く際にツライのが「暇なこと」だという。新入社員は全般的に、まずはさまざまな雑用――資料作成やフォーマットの見直し――といった業務から始め、業務に慣れたら徐々に本格的な仕事を任せていく、というやり方が定石だ。しかし視覚障害があると、資料チェックなどの雑用を任せてもらうのは難しい。でも他に何を任せたらいいのか分からない……という結果、暇を持て余す視覚障害者が多いのだという。

 「初めて視覚障害者に接する場合、どのように扱ったらいいか、どのような仕事を任せたらいいか分からないというのはどうしてもありますから、ある程度やむを得ないことだと思います。ただそこで、性格にもよると思うのですが、その時点で暇であることに負け、モチベーションを保てずに辞めていく人もいると聞きます」(外谷さん)

 外谷さんは「まず『自分が何をできるのか』を分かってもらうこと、示すことが必要だと思います。プロジェクトマネジャー側にも「理解しよう」という気持ちを持ってもらえれば、『こういう仕事ならばやりやすいのか、それなら任せるよ』ということが共有され、仕事を進められると思います」と述べる。

 同氏の場合は、暇な時間を使ってとにかく勉強し、次々と資格を取得することでこの問題を解決していった。TOEICの他、IT分野ではJavaやSQL、セキュリティプロフェッショナルに至るまで、さまざまな分野を学び、その成果を示す資格を相次いで取得した。「自分に何ができるかを分かってもらうのに、資格はとても役立ちました。ただでさえ新卒はできることが少ないので、とっかかりとして資格はとてもよかったと思います」という。

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