SUSEはOpenStack、OSSにおいてHPE、富士通とどう協業していくのかSUSE Open Forum Japan 2016

ノベルが2016年12月9日、「SUSE Open Forum Japan 2016」を開催。日本ヒューレット・パッカード、富士通と共に、今後の製品戦略を示した。

» 2016年12月13日 18時45分 公開
[丸山隆平@IT]

IT部門の課題を解決するのは、OSS技術

SUSE President of Strategy,Alliances and Marketing Michael Miller氏

 ノベルは2016年12月9日、東京の虎ノ門ヒルズでセミナー「SUSE Open Forum Japan 2016 〜オープンソースで構築するこれからのエンタープライズIT基盤〜」を開催した。

 冒頭、あいさつに立ったノベル 代表取締役社長 河合哲也氏は「本日は300名超の方々にお申し込みを頂いた。参観者、パートナー、協賛企業の皆さまに感謝申し上げる」と謝辞を述べ、当日のプログラムを紹介しつつ「SUSEは今、大きな広がりを見せている。オープンソースソフトウェア(OSS)の可能性を本日のプログラムから汲み取っていただきたい」と述べた。

 続いての基調講演「DEFINE YOUR FUTURE」には、SUSE社でPresident of Strategy,Alliances and Marketingを務めるMichael Miller氏が登壇。Miller氏はまず、「企業の技術予算の90%はIT以外の分野に投資されており、残り10%のみがIT予算として計上されている。この10%のうちの70%が保守、現状維持に使われている。この現状に対してIT部門は不満を抱いている」と問題提起した。

 現状IT部門は、社内ユーザーから新しいアプリの開発を要求されたり、市場への俊敏なアクセスに対してシステムを保守、管理したり、セキュリティとコンプライアンスの課題に対応したりなど、さまざまなことを求められているが、Miller氏は「SUSEをはじめとするOSS技術は、その課題を支援することが可能だ」と述べた。

パートナーシップや買収などで成長

 続いてMiller氏は、「フォーチュン100社の3分の2以上がSUSEを使用している。また、SUSEを活用しているアプリケーションやソフトウェア、コンフィグレーションは1000以上に上る」と紹介。「100万ドル以上の大型案件も増えていることはSUSEが成長を遂げていることを示している。これは価値のあるパートナーシップや買収などによるものだ」とし、その実例を挙げた。

 Novellは2016年11月、it-novumのSUSE向けストレージ管理ソリューション「openATTIC」の買収を発表した。openATTICはSDS(Software Defined Storage)のマネジメントフレームワークであり、Cephに対応する。これを「SUSE Manager Products」に統合した。Miller氏は「技術と人材を得たことによって、われわれが目指すSDS管理ソリューションのロードマップをより早く実現し、イノベーションを提供したい」と解説した。

 または2016年11月30日には、Hewlett Packard Enterprise(HPE)のOpenStack、Cloud Foundryの技術と人材の買収を発表した。Miller氏は「HPEは今後、OEMという形でSUSEのOpenStack、Cloud Foundry技術を提供していくことになる。これは非常にエキサイティングな出来事だ」とし日本ヒューレット・パッカードのゲストの登壇を促した。

SUSEパートナーとしてのHPEの戦略

 日本ヒューレット・パッカード エンタープライズグループ事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 執行役員の大月剛氏は、冒頭、「今後SUSEのパートナーソリューション企業として活動していく」と述べた。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズグループ事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 執行役員 大月剛氏

「このパートナーシップは、HPEがハードウェアメーカーとして、より投資を集中し、優れたソフトウェアと組み合わせることによって、両社で業界最高水準のソリューションを提供することを目指す施策の1つだ。今回の出来事は20年に及ぶパートナーシップから生まれたもので、単に案件や機能の対応ではなく、両者のラボレベルでの協業から生まれたものだ」と大月氏は補足した。

 今後の方向性について、大月氏は「特に日本市場で重要な高可用性システムの共同推進を、SAPを含む3社で進めていく。当社もHPEのサーバでSAPを動かすことを始めており、実績に基づいたパートナーシップによって調整されたソリューションを提供していく」と語った。

 市場環境が激変する中でHewlett Packardは大きく変化してきた。PC、WS、プリンターを手掛ける部門を切り離し、日本ヒューレット・パッカードとしてサーバ、ストレージ、ネットワークを中心としたビジネスを手掛けているが、大月氏によると、「2017年にはサービス部門、ソフトウェア部門を分割予定で、サーバ、ストレージ、ネットワークに特化した企業としてあらためて、生まれ変わることになる」という。

 また大月氏は、「2015年は、Wi-Fiの有力なベンダーであるAruba Networksを買収、2017年はSGI(Silicon Graphics International)の買収を発表した。HPEはハードウェアに特化し、さまざまな製品を投入していく」とし、各製品について解説した。

 「インフラストラクチャでは、『コンポーザブル』として束ねるだけではなく、必要に応じて分解し、再度組み立てることができる環境を強力に進めている。ソフトウェアでは、いかにお客さまに柔軟な環境を提供するかが課題だ。SDSでは、HPE ApolloサーバとSUSE Enterprise Storageを組み合わせて展開し、可用性が高いシステムとして今後ますます力を入れていく。また、汎用的なサーバでも随時、SUSEに適した環境をセットアップして皆さまに提供していく」(大月氏)

 最後に、大月氏は「ハードウェアに特化したHPEは、SUSEの世界でもハードウェアの視点から技術革新を進めていきたい。この場は、その1歩を踏み出したものと、認識している」と結んだ。

「OPEN OPEN」の意味するところ

 再登壇したMiller氏は「OPEN OPEN」というテーマについて解説した。「OPEN OPENには、OSSを提供するだけではなく、よりフレキシブルにビジネスを行うことが含まれている。OSSをさまざまなアーキテクチャのレイヤーで提供する。異種混合な環境で、複数のOSSを組み合わせることもあると思うが、われわれはそれをサポートしたい。単なるOSSではなく、皆さまがオープンに使えるもの、それを“OPEN OPEN”と呼んでいる」。

 またMiller氏はOSSへの技術的な貢献にも言及。「バグの修正やセキュリティ対策だけではなく、新しいイノベーション、例えばスナップショットの技術などを提供する。またLinuxのカーネルには、常にパッチを提供している。こうした技術面での貢献に加えて、われわれはOSSのガバナンスの面でも貢献している」という。

富士通は2017年1月からSUSEとの協業をグローバルで展開

富士通 プラットフォームソフトウェア事業 本部長 田中克枝氏

 続いてMiller氏は「多くのパートナーと世界中で協業しており、パートナーを重要視することがSUSEのDNAだ」と述べ、その有力な1社として富士通を紹介した。

 特別ゲストとして登壇した富士通 プラットフォームソフトウェア事業 本部長 田中克枝氏は、まず「プラットフォームソフトウェア事業本部はOSおよびOSを制御するソフトウェアを作っている部署だ」と紹介。「富士通はメインフレームの時代から脈々とソフトウェア開発に注力してきており、メインフレーム、オープンの時代でも“ミッションクリティカル”に対応することを求める顧客に対し、最高のサービス、製品を提供してきた。現在、オンプレミス、クラウドを管理するソフトウェア、ストレージを管理するソフトウェア、仮想化ソフトウェア、プライベートクラウド、パブリッククラウドなどに展開しようとしている」という。

 OSSへの取り組みについて田中氏は「われわれの考え方は単純だ。常に顧客が中心にいて、顧客のシステムの安定稼働を保証するサポートサービスを提供している。ソフトウェアの“機能”に加えて“品質”が極めて重要だ」とし、2005年からのOSS開発のグラフを示して「どんなものでも浸透するには10年程度の年月が必要だ。富士通は10年かけてOSSに貢献してきた」とした。

 次に田中氏は、「この技術をもって、いよいよSUSE社と協業を始める」と述べ、2016年11月に発表したSUSE社との戦略的提携について解説した。

 「SUSE社と富士通は、それぞれの強みを組み合わせて提供していく。PaaSとIaaSでは、統合ソリューションを共同提供する。ハードウェアは富士通で、サポートはそれぞれの良いところを生かして提供していく形だ。さらにコンテナも共同開発する。両社が協業することでOpenStackのコミュニティーにおけるランクアップが図れる他、Linuxコミュニティーへの貢献度はますます広がる」(田中氏)

 協業によって具体的に何が提供されるのか。田中氏は「両者の技術、製品、サービスを組み合わせたOpenStack統合ソリューションが提供される。SUSEのOpenStack、クラウドベースのプライベートクラウド環境を提供する。ハードウェアは富士通のPRIMERGYを使い、そこにストレージ、ネットワークを組み合わせる。その上にSUSE OpenStack Cloudを載せ、その上に富士通のOpen Service Catalog Managerを組み合わせることにより、顧客に最適なプライベートクラウド環境を提供する」と解説した。

 「スケールアップや冗長化に非常に柔軟に対応可能。設計、構築、運用に至るまでワンストップでシステム全体をサポートする。2017年1月からグローバルに提供を開始する」(田中氏)

 また、Linuxシステムのライフサイクル最適化については、高いSLA(サービス品質保証)、長期のサポートに対応した商品を提供するという。

 最後に田中氏は「SUSE社と富士通のコラボレーションにより、お客さまの運用の負担、稼働時のリスク、長期運用のコストを低減し、お客さまのシステムの安定稼働を進める。SUSE社との連携で富士通はお客さまシステムが安心して、長期にシステムを稼働できるように努めていく」と結んだ。

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