中国のDNSサーバ稼働状況を探る――謎のバナー、そして北京の奇妙な管理者……統計で見るサイバーセキュリティ群像劇(2)(1/2 ページ)

中国のDNSサーバ情報を調べていくと、ある奇妙なバナー情報に行き着いた……。

» 2016年12月19日 05時00分 公開

 さまざまな統計データを基に、ニュースなどでは語られないサイバーセキュリティの世界を探求していく本連載。前回は、インターネット上の3000万台程度のDNSサーバのバナー(DNSサーバにバージョン情報を問い合わせたときに返ってくるメッセージ)を調べた結果を紹介しました。今回からは予告通り、DNSに関する公開情報を基に、より掘り下げた話をします。

 具体的には、インターネット大国の1つである中国を対象に、全土の統計情報から興味深い項目に着目し、データを絞り込みながら話を進めていく予定です。サイバーセキュリティ界隈(かいわい)で何かと話題に上ることの多い中国の状況を調べることで、何らかの発見を得ることが狙いです。

 というわけで、まずは中国全土のDNSサーバの稼働状況を見てみましょう。

とにかく多い中国のDNSサーバ

 中国で稼働するDNSサーバの台数はどれくらいあるのでしょうか。実際に調べた結果が以下になります。なおここでは、筆者が以前研究活動の中で収集した全世界のDNSサーバ情報をデータセットとして、データの集計と管理にはMongoDBを使い、国名が中国(CN)であるサーバ数をカウントしています。

> db.countries.find({"country":"CN"}).count()                                                                                                  
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 公開されている全世界のDNSサーバのうち、観測できるもので32万台程度が中国にあるようです。なお同様に調べた結果イギリスにあるものが12万台程度、フランスにあるものが8万5000台前後、韓国にあるものが2700台程度でしたので、これはかなりの数だといえるでしょう(ちなみに、日本にあるDNSサーバは24万台程度でした)。

 では次に、中国の都市ごとのDNSサーバ台数を整理してみます。

リスト1 中国のDNSサーバの稼働台数(都市別)
1 Henan 河南 99224
2 Fujian 福建 82543
3 Jilin 吉林 30241
4 Guangdong 広東 23276
5 Shanxi 山西 20388
6 Tianjin 天津 16496
7 Hubei 湖北 14693
8 Yunnan 雲南 10103
9 N/A 4457
10 Beijing 北京 3721
11 Shandong 山東 3058
12 Shaanxi 陝西 2963
13 Gansu 甘粛 2614
14 Jiangsu 江蘇 2388
15 Zhejiang 浙江 2084
16 Shanghai 上海 1808
17 Sichuan 四川 1318
18 Hebei 河北 1166
19 Anhui 安徽 843
20 Liaoning 遼寧 733

 北京、上海のような主要都市のDNSサーバが意外と少ない印象を受けますが、これは省名と都市名が混在しているためだと思われます(省の方が規模が大きい)。それにしても数が多いですね。

 前述の通り、フランスのDNSサーバが8万5000台前後、韓国にあるサーバが2700台程度ですから、河南(省)にあるサーバはフランス国内のDNSサーバよりも多く、北京(市)にあるサーバは韓国全土にあるサーバよりも多いことになります。中国のスケールの大きさを感じさせます。

北京へ

 さて、ここからはさらに「北京」に焦点を絞りたいと思います。というのも、Twitter上で北京はしばしば攻撃の発信源として話題になるからです。

 下記はTwitterのpublic streamから攻撃元として公開されているIPアドレスを集計し、中国の都市に限定してランキングしたリストです。他都市と比べてDNSサーバはさほど多くない北京ですが、攻撃の発信源としては存在感を発揮しています。

リスト2 Twitterのpublic streamから取得した攻撃発信源とされた都市
1 Beijing 北京 212
2 Jiangsu 江蘇 115
3 Guangdong 広東 57
4 Hebei 河北 40
5 Fujian 福建 25
6 Zhejiang 浙江 19
7 Shaanxi 陝西 17
8 Shandong 山東 12
9 Henan 河南 12
10 Liaoning 遼寧 10
11 Shanghai 上海 10

 サンプル数がそこまで多くないのであまり確かなことはいえませんが、北京は大都市であるためか、多くの攻撃の発信源を擁しているようです。というわけでここからは、調査対象をさらに北京市内の会社やドメインに絞っていきたいと思います。

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