セキュリティは、DevOpsやアジャイル開発にブレーキをかけるのか――マネーフォワード流DevOps実践のポイントDevOps時代のテスト自動化カンファレンス(中編)(2/2 ページ)

» 2016年12月26日 05時00分 公開
[高橋睦美@IT]
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企画から設計、実装、そしてテストまでサイクル全体を支援

リックソフト ソリューション2部 主任 祖父江良二氏

 「JIRA」をはじめ、開発者を支援しDevOpsを後押しするツールを提供しているアトラシアン社。その認定代理店として導入や運用、サポートを提供しているリックソフトのソリューション2部 主任 祖父江良二氏は、「アトラシアン製品とテストマネージメントツール「Zephyr」を連携させたツールチェーンによるDevOpsとテスト自動化の実践」と題するセッションにおいて、アトラシアンの製品群にD Softwareのテストマネジメントツール「Zephyr」を組み合わせることでテスト自動化を実現し、DevOpsを加速できると説明した。

 「ITチームがビジネスの成功を強力にサポートする時代が到来している。一方で、さまざまなOSやブラウザ、デバイスへの対応が求められ、セキュリティやコンプライアンス上の要件も満たさねばならず、ITの難易度や複雑さもまた上昇している」(祖父江氏)。そんな中でDevOpsとテスト自動化は、PDCAサイクルをより速く回し、進化を加速させる基盤になるという。

 「ただし、そこには品質が不可欠だ。リリース前にしっかり検査することで、品質が良いものをリリースすることが重要だ」と祖父江氏。だが、この目的を達成するのにメールやスプレッドシートを用いた手作業による情報共有、管理には限界がある。アトラシアンの製品群とZephyrの組み合わせによって、チーム間の連携を支援し、テストやデプロイの自動化を実現できると説明した。

アトラシアンとZephyrによるツールチェーン(祖父江氏の講演資料から引用)

 具体的には、画面を共有しながら会議を行い、文書や資料作成を支援する「Confluence」、スクラムやカンバンに対応し、バックログ管理や優先順位付けが行えるプロジェクト進捗(しんちょく)の可視化ツール「JIRA」、Gitによるリポジトリ管理をサポートする「Bitbucket」、Webベースで設定可能な継続的インテグレーションツール「Bamboo」などがある。これらは互いに連携が可能で、企画や設計から実際の開発、テスト、デプロイに至るまで一連の流れをスムーズに行えるという。さらに、テストの作成や再利用、実施と結果を管理できるZephyrを用いてテストの自動化を実現すれば、一層の効率化が可能だ。

 他にも、顧客からの問い合わせ対応やサポートを支援する「JIRA Service Desk」やチャットツールの「HipChat」といった多様なツールがある上、リックソフト自身も、JIRA用アドオンツール「WBSガントチャート」を開発し、プロジェクトを円滑に進めるための情報や進捗共有を後押ししている。祖父江氏はこれらのツールを適切に活用して「まずは小さなところからでもいいので、DevOpsとテスト自動化基盤の構築を試してほしい」と呼び掛けた。

より良いテストデータを用意できればリリースサイクルが短縮できる?

アシスト データベース技術本部 ビジネス推進部 部長 岸和田隆氏

 データベースやミドルウェアソリューションの提供で知られるアシスト。そんな同社と「テスト」は縁遠い印象があるかもしれないが、実はテストを効率化し、タイムトゥマーケットの短縮に貢献できる役割があるという。アシスト データベース技術本部 ビジネス推進部 部長 岸和田隆氏は、「DelphixによるDevOps/アジャイルへの新アプローチ!」と題するセッションで、「必要なテストデータを、必要なタイミングで、必要なテストチームに提供する『テストデータマネジメント』の領域でテスト自動化を支援できる」と述べた。

 前編のサイバーエージェントの板敷氏が基調講演の中で挙げた「炎上案件」にもあった通り、せっかく労力を掛けて行ったテストが失敗してしまう原因の1つに、テスト環境と本番環境とで異なるデータを用いてしまうケースがある。岸和田氏自身、ある生産管理システムでパフォーマンスが極端に重くなる問題が発生し、原因特定に半年もかかったケースを目の当たりにしたことがあったそうだが、これも「本番データと同じものを使っていれば、問題をキャッチできていたはず」と振り返る。

 だからといって、本番データそのものをテストに使えばテストカバレッジは広がるが、データ容量やセキュリティ、テスト用にマスキングする作業の手間など、さまざまなハードルがあるのも事実だ。時には手続きだけで数日単位、数週間単位の時間がかかることもあるという。

本番データからテストデータを生成するプロセス課題(岸和田氏の講演資料から引用)

 「なるべく早く、リアリティのあるテストデータが欲しい。しかもコンプライアンスやセキュリティに配慮し、細かなデータを同時に提供できるものが欲しいといった要求がある。Delphixによって、こうした課題解決を支援できると考えている」(岸和田氏)

 Delphixは、一種のデータベース仮想化ソリューションだ。任意の時点のデータを切り出し、仮想データベースとして利用できるため、「必要なときに必要なテストデータを提供できる」と岸和田氏は説明した。しかも同一のデータベースを元にしながら、開発用には1週間前の、結合テストには4日前の、統合・受け入れテスト用には1日前のデータをそれぞれ切り出すといったことも可能だ。この結果「開発やテストにフルセットの本番データを利用でき、不具合を減らし、シフトレフトを支援できる」(岸和田氏)

 事実、米国のチケット販売サイト「StubHub」ではDelphixを活用した結果、手戻りが減ってリリーススケジュールを予定通りに進められるようになり、それまで月次だったリリースサイクルを日次に短縮する成果を挙げているという。このようにテストプロセスを合理化できることが、テストデータマネジメントがもたらす大きな効果だとした。

次回は、テクマトリックス、日本ヒューレット・パッカード、楽天の講演

 次回は、「DevOps時代のテスト自動化カンファレンス〜はやく、いいものを届けよう〜」の中からテクマトリックス、日本ヒューレット・パッカード、楽天の講演模様をお届けする。

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