全ての情報システム部門、エンジニアに贈る、デジタルビジネス関連記事 FBシェアランキング2016 ベスト10AIとは何か、SI崩壊、「作業者」ではないエンジニア……デジタル時代の“今”とは?

収益・ブランド向上に対するIT活用の在り方、インパクトをさまざまな視点で取材・解説している@IT「System Designフォーラム」。Facebookシェア数ランキングで、デジタルトランスフォーメーションの動きが目立った2016年の社会と企業ITを振り返る。

» 2016年12月28日 05時00分 公開
[編集部,@IT]

デジタルトランスフォーメーションの進展を如実に反映

 およそ全てのビジネス/サービスをITが支えている近年、IT活用の在り方がビジネスのパフォーマンスを大きく左右する時代になっています。例えばUberのように、テクノロジーの力で既存の商慣習を変え、業界構造破壊までも引き起こしてしまう“デジタルディスラプション”に対する認識も広く浸透し、社会一般がテクノロジーの力やビジネスにおけるIT活用の在り方を見直すきっかけが増えたのが、この2016年だったといえるのではないでしょうか。

 @IT編集部において、IT活用の在り方やシステム設計、開発・運用スタイルのモダナイゼーションなどにフォーカスしてきた「System Designフォーラム」では、今年も多数の記事を公開してきましたが、そのFacebookシェア数ランキングを見ると、読者の方々の関心、ひいては社会一般の関心が浮き彫りにされる結果となりました。

 以下は「System Design」フォーラムの2016年 Facebookシェア数ランキングの一覧です。幾つか象徴的な記事をピックアップしつつ、この2016年を振り返ってみたいと思います。

順位 タイトル シェア・コメント数 掲載日
1 ディープラーニングは万能ではない:AIとは何か、人工知能学会会長が語った常識と誤解 1748 11月14日
2 特集:今、市場に求められるITアーキテクトの視点(3):アジャイル開発の第一人者、吉羽龍太郎氏が指南するSIerとエンジニアのあるべき姿 848 6月30日
3 ガートナーに聞く「デジタル時代に求められる人、ノウハウ、テクノロジー」(1):日本の企業とエンジニアが「クラウドでコスト削減」に失敗し続ける本当の理由 845 8月31日
4 特集:インフラエンジニアのためのハードウェア活用の道標(3):今どきCPUだけで大丈夫?ビッグデータや人工知能でGPU/FPGAを使う前に知っておきたい“ハード屋”と“ソフト屋”の違い 667 4月25日
5 独占ロングインタビュー:元三井物産情シスの「挑戦男」、黒田晴彦氏が語るAWS、情シスの役割、転職の理由 497 8月16日
6 実際に検証済み!OSS徹底比較(1)運用監視編:OSS運用監視ソフト 注目の10製品徹底比較 2016年版 437 4月25日
7 オープンソースとエンタープライズの関係(4):HadoopとFluentdは、国内企業のビッグデータにおける事実上の標準になれるか 317 8月30日
8 特集:アジャイル時代のSIビジネス(3):「ウオーターフォールかアジャイルか」ではなく「目的に最適かどうか」、“本質を見極める視点”が勝負を分ける――グロースエクスパートナーズ 298 3月16日
9 “黒船”たちがde:codeで語ったDevOpsの極意:もはやウオーターフォールだけでは戦えない理由 261 6月30日
10 特集:アジャイル時代のSIビジネス(4):エンジニアはクリエーター。大切なのは「人数」ではなく「能力」――ソニックガーデン 239 3月23日

AIとは何か?――人工知能の可能性が独り歩き

 「人工知能(AI)がブームになっているが、これまでとどう異なるのか。人工知能は、どのような発展段階にあるのか。人間の仕事を奪う「敵」なのか」――こうした問題提起から始まる「ディープラーニングは万能ではない:AIとは何か、人工知能学会会長が語った常識と誤解」が、2016年のシェアランキング第1位となりました。人工知能というと、「将棋や囲碁で人間に勝った」というニュースが社会一般の注目を浴びた他、「いずれは人の仕事も奪ってしまう」といった見解も広く浸透しました。

 ただ、ホラーストーリーのように語られることも多い人工知能ですが、「人を凌駕するAI」と「人を支援するAI」がきちんと切り分けられていないまま論じられる傾向も強いのが現実です。

 周知の通り、前者は「強いAI」、後者は「弱いAI」と呼ばれ、それぞれがもたらす可能性は切り分けて考える必要があります。例えば「IBM Watson」に象徴される、社会やビジネスの支援に役立つとして注目されているのは「弱いAI」です。本稿ではそうした切り分けの議論、AIの発展がもたらす今後の可能性、特に人の仕事や社会にもたらすインパクトについて詳細にレポートしています。2017年以降の社会、ビジネスの在り方の変容を考える上で、恰好の読み物となるのではないでしょうか。

日本企業の従来型IT活用とは、正反対のスタンスが求められる時代に

 一方、ランキング第3位に入ったのが、「日本の企業とエンジニアが「クラウドでコスト削減」に失敗し続ける本当の理由」です。ガートナージャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ バイスプレジデント 兼 最上級アナリスト 亦賀忠明氏にインタビューした本稿において、同氏が示唆したのは、変化が速く先を見通すことが難しい現在、「決められたことを着実にこなす」モード1の考え方から、「目的を見据えて、主体的にテクノロジーを活用する」「トライ&エラーをスピーディに繰り返しながら正解を模索していく」モード2の考え方に切り替えていくことの重要性です。

 特にこうした状況において、多くの読者に響いたのは、「デジタルビジネスをリードできるのは、手順書を見て手を動かすだけの『作業者』ではありません。自らスキルを高めサービスを発想・構築できる、創造力ある『エンジニア』です」という指摘だったのではないでしょうか。前述のように、IT活用の在り方が収益・ブランドを直接的に左右する現在において、「企業とエンジニア、双方にとって『ハイスキル、ハイリターン』の原則が当てはまる時代になっている」「エンジニアも、経営層も、『作業者』ではない『エンジニア』の価値を再認識すべきだ」といった意見にも、強い共感を覚える向きが多かったと思われます。

 ある意味、ランキング第5位の「独占ロングインタビュー:元三井物産情シスの「挑戦男」、黒田晴彦氏が語るAWS、情シスの役割、転職の理由」で紹介された黒田氏のセリフからも、「作業者」ではない「クリエーター」としてのスタンス、考え方を持つことの重要性が強く感じられる一編となっています。

“SI崩壊”の真意とは?

 テクノロジーの力を使って新たな価値を生み出すデジタルトランスフォーメーションが進む中、企業のビジネスニーズをITシステムに落とし込むSIerにも大きなスタイル変革が求められています。

 IoT、X-Techトレンドの高まりに象徴されるように、市場ニーズの多様化、変化の速さに伴い、顧客に継続的に使ってもらえる、社内のエンドユーザーに好んで使ってもらえるITサービスを、ニーズに応じていかに速くリリース・改善できるかが、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。もはやITは「効率化・コスト削減の手段」ではなく、収益・ブランド向上のための「攻めの手段」なのです。

 これに伴い、企業からシステム開発を受託するSIerにおいても、「言われたれたものを、言われた通りに作る」、いわゆるモード1のスタンスだけでは通用しなくなりつつあります。アプリケーション開発・改善のスピードと品質、コスト効率の全てを満たすことが求められている今、開発の内製化を見直す企業も増えつつある中で、SIerには「共にビジネスを考え、共にシステムを開発・運用する」クリエイティブなスタンスが強く求められているのです。

 ランキング第8位「『ウオーターフォールかアジャイルか」ではなく「目的に最適かどうか』、“本質を見極める視点”が勝負を分ける――グロースエクスパートナーズ」、第10位「エンジニアはクリエーター。大切なのは「『人数』ではなく『能力』――ソニックガーデン」は、まさしくこうした時代のSIerの在り方として多くの読者の共感を集めることとなりました。

 ランキング第2位「アジャイル開発の第一人者、吉羽龍太郎氏が指南するSIerとエンジニアのあるべき姿」も、エンジニアの在り方、企業とSIerのパートナーシップの結び方などを具体的に解説した一編として、多くの読者の注目を集めました。

 “SI崩壊”などと各方面で喧伝されていますが、その言葉の“真意”を早とちりしてしまうことだけは避けたいものです。ぜひこれらの記事を1つの参考として、今後の企業、SIerにおけるシステム開発・運用の在り方を考えてみてはいかがでしょうか。

                ◆ ◆ ◆ 

 いかがだったでしょうか。こうしてランキングを振り返ると、2016年という1年間が、着実に社会の人々の意識、ITにたずさわる人々の意識を変容させていることがあらためてうかがえるのではないでしょうか。ランキング第6位「OSS運用監視ソフト 注目の10製品徹底比較 2016年版」、第7位「HadoopとFluentdは、国内企業のビッグデータにおける事実上の標準になれるか」、第9位「もはやウオーターフォールだけでは戦えない理由」で紹介されるような、エンタープライズITにおけるオープンソースソフトウェアの積極活用についての意識も、それを象徴する重要な事象だったといえるでしょう。

 さて2017年、こうした時代の変容のさなかで、あなたはどのような“変革”を考えていらっしゃるのでしょうか?――@IT編集部は、2017年もあなたと共に考え、共に可能性を探るメディアであることをお約束します。2016年もご愛読くださり、誠にありがとうございました。

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