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» 2017年02月06日 05時00分 公開

「鶴の一声」が通用しない現場――山本一郎氏が聞く、中小企業におけるIT導入失敗事例の傾向と対策開発残酷物語(2)(3/3 ページ)

[竹内充彦,発注ナビ]
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経営層と現場、両面へのアプローチが必用

 売り上げ5000万〜1億円規模の中小企業と仕事をすることも多い山本氏は、同様のケースを2代目あるいは3代目社長の会社で数多く目にしてきたという。

 創業社長は現場業務からたたき上げて創業していることが多く、業務プロセスにも精通している。しかし2代目や3代目は、学校を卒業後、まずは他の企業に武者修行に出るケースが多いという。修行先で経営を学んでから父親の会社を継ぎ、自社の弱点や欠点を改善するためにIT化を進めようとするのだが、現場経験がないために業務プロセス改善になかなか踏み込めないというのだ。

 「現場が強いというのは日本企業の大きな特徴。30年間、自前のExcelシートで業務を進めてきたというような人がたくさんいて、システムが導入されると、自分の仕事が取られてしまうのでないかと疑心暗鬼になっている。まずは、そうした現場の不安を取り除いてあげないと前に進まないですよね。

 これって、ベンダー側のプレゼンも必要なのではないですか? きちんとKPIを明示して、システムが導入されるとどういうメリットがあるのかを、しっかりと見せてあげる。そうして現場からの意見を引き出していくというのも効果的ではないでしょうか」(山本氏)

 「現場の意見にも、建前と本音がありまして。経営者の前では異論を唱えないけれど、現場の人間だけになると本音の部分が出てきたりすることもあります」(阿部氏)

 「あ、分かります。どこの会社にもそういう人はいます。そういう人を何とかして前面に引きずり出してきて、膝を詰めてしゃべらせないと、なかなか現場サイドは納得してくれませんよね」(山本氏)

 「後からあれこれと注文が付き、結果として業務プロセスの改善よりも、元のままがよいという結論になってしまうことも……」(阿部氏)

 「あぁ、なるほど。確かに現場の意見を全部聞き入れると、とんでもないことになりますよね。帳票の体裁が以前と違ってしまうとか、画面のボタンの位置を変えないでほしいとか、正直いって些末な話がどんどん出てくる。私もそういうシーンに出くわした経験があります。もっと他にこだわるべき所があるんじゃないのか、と」(山本氏)

しょっぱい話で盛り上がる2人

 本来、システム導入はトップダウンでやらなければいけないもの。「それでも変えていくんだ」という経営層の強い推進力が必要だという点で同意した2人だが、実際のところ、経営層が最初から最後までしっかりと関わるのは難しい場合もある。

 阿部氏は今回の反省を踏まえ、経営層に意識付けを促すと同時に、現場サイドには早い段階でシステムのプロトタイプを見せてイメージしてもらい、会話をしながら業務の勘所や希望を聞き出す試みを行うようにしているという。

 「人から業務をはがして標準化するのは、とても難しい仕事です。本当は、社長が『君にはもっと生産性高いところを任せたいんだ』と、しっかり現場の担当者に伝えてあげられれば良いのですが、それができていない企業が多い」(山本氏)

 「システム導入が失敗する原因の8割は、技術的な問題でなく、コミュニケーション不足だと思います。社内の全プロセスや業務プロセスを可視化することはもちろんですが、経営者の想いと従業員の想いも可視化していくことが重要です。『私たちで現場の意見を吸い上げて、経営層にフィードバックしていく』といった気構えでいかねばなりません」(阿部氏)

 同社は社員にITコーディネータの資格取得を義務付け、経営層と現場担当、業務プロセスとITソリューションをつないでいくビジネスモデルを構築中だという。

 「企業とITベンダー、経営層と現場、それぞれをつなぐ役割として、当社の力がより一層試されていくのだと思います」(阿部氏)

 企業とITベンダーだけでなく、経営層と現場との架け橋(ブリッジ)としての役割も果たすブリッジソリューションズ。限られた予算内で、経営改善や業務改善を目指す中小企業の強力な味方である同社は、今回の失敗を糧にさらなる成長を果たしていくだろう。

経営層と現場の意識が乖離(かいり)している場合のトラブル防衛法

システム導入失敗の原因は、コミュニケーション不足。業務プロセスに加え、経営者、現場、双方の想いも可視化する。

対経営層

  • 「システム導入には経営者の強い意志と推進力が必用」という意識付けを行う
  • 最後まできっちりプロジェクトに関与してもらう

対現場

  • KPIを見せる、メリットを説明する、などさまざまな手段を用いて不安を取り除く
  • プロトタイプを見せてイメージしてもらい、業務の勘所や希望を引き出す

次回も、山本一郎氏が「炎上」事例を斬る!

 次回以降も山本一郎氏が、発注ナビユーザーの炎上事例をぶった切ります。お楽しみに。

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