富士通がプライベートマネージドOpenStackでミランティスと組む理由「日々進化するインフラ」とは

富士通は2017年5月8日、プライベートマネージドOpenStackの提供でミランティスと提携したと発表した。既報の通り2017年6月以降、提供を開始する。だが富士通は、既にOpenStackおよびこれに基づくサービスを複数の形で展開している。同社は何を目的として、さらにミランティスと提携するのだろうか。

» 2017年05月09日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

 富士通は2017年5月8日、プライベートマネージドOpenStackの提供でミランティスと提携したと発表した。既報の通り2017年6月以降、提供を開始する。だが富士通は、既にOpenStackおよびこれに基づくサービスを複数の形で展開している。同社は何を目的として、さらにミランティスと提携するのだろうか。

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 今回の提携における、富士通側の技術責任者である小口芳彦氏(富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部 基幹システムサポート統括部 シニアディレクター システム技術部長)に聞いたところ、「これまでリーチできなかったタイプの顧客に対応するため」と答えた。

インフラを積極的に更新していくような使い方を想定

 富士通はOpenStackで、「K5」というブランドの下にパブリッククラウドサービスやプライベートクラウドサービスを展開している。パブリッククラウドは、OpenStackを自社でカスタマイズしたソフトウェアを使っている。一方で同社は、レッドハットおよびSUSEのディストリビューションを用い、OpenStackを顧客に導入、運用してきた。インテグレーションによる導入は、顧客のデータセンターであることもあれば、富士通のデータセンターであることもある。

 このように、OpenStackで富士通は現時点で多様な消費形態を用意している。これらでリーチできないニーズとは、DevOpsや新しいサービスを提供していくための、大規模な社内クラウド基盤としての利用だという。

「インフラについてはいったん構築すると、更改まで例えば5年、そのままで運用するというのではなく、パブリッククラウドと同じように、日常的にアップデートしていくことで、サービスを進化させていくような用途を想定している。開発者は、セルフサービスでこれを積極的に活用していくような形態だ。こうした運用は手間がかかり、ノウハウも必要であるため、弊社側で担う価値が出てくる」(小口氏)

 ミランティスはこれまで多数のOpenStackユーザー企業に対し、遠隔運用代行を行ってきた。また、OpenStackソフトウェアを無停止でアップデートできる自動化メカニズムを持っている。同社は富士通がこれまで個別インテグレーションに適用してきた考え方や体制では実現できない、スケールする仕組みを持っており、これがミランティスと組む理由だという。

 今回の提携では、PaaSレイヤーを支えるソフトウェアコンポーネントについては、顧客のニーズに合わせて複数の選択肢を提供すると小口氏は話す。

 ミランティスは2017年4月、OpenStackにKubernetesやJenkinsを統合した新製品を、これまでの同社OpenStackディストリビューションの後継として発表した。その意味ではOpenStackだけのベンダーではなくなった。だが、富士通は基本的にIaaSレイヤーだけを採用するという。一方で「Kubernetesを直接使いたい」「Cloud Foundryを使いたい」といったようなニーズに個別に対応するという。なお、富士通はKubernetesやCloud Foundryにコントリビューションをしており、Kubernetesが属するCloud Native Computing Foundation(CNCF)、Cloud Foundryプロジェクトを運営するCloud Foundry Foundationの主要メンバーでもある。

通信事業者や大手製造業で、顧客のめどはある

 今回の提携で想定している具体的なユーザーおよび用途は、通信事業者や大手製造業における、モバイルやIoT関連サービスのプラットフォームなどとしての導入だ。また、自治体、官公庁におけるオープンなクラウドの基盤にもなり得るという。各顧客専用の環境を作るため、「物理サーバにして数十台以上の規模だとメリットが出てくる」(小口氏)。すでに一部顧客との話が進んでいるという。

 提供モデルは、一般的なIT製品と大きくは変わらない。富士通が顧客との接点となり、自社のリソースで対応する。ミランティスはバックエンドとして、エスカレーションする必要のある問題に対するサポートを行う。自動更新サービスは、当初はミランティスが実施。顧客の要望に応じて、富士通による遠隔更新、富士通による、更新も提供していくとしている。

 既述の通り、今回の提携では、OpenStack環境を顧客のデータセンターあるいは富士通のデータセンターに構築する。トレンドとしては富士通のデータセンターに構築する「ホステッド」形態の比率が高まりそうにも見えるが、小口氏は必ずしもそうとはいえないと語っている。ガバナンスなどの観点から、社内に構築したいという企業は多いとしている。

 今回想定しているのは、「日々進化するプラットフォーム」だと小口氏は表現している。こうしたITインフラ環境のニーズは、日本では全般的にいえばこれからだが、富士通が活発に事業を展開している欧州では、顕在化しているという。

 「OpenStackはようやく立ち上がり始めたところだと考えている」と小口氏は話す。OpenStack自体の普及という観点からも、今回の提携のような、静的ではなく、動的なインフラ基盤として使える選択肢は欠かせないという。

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