IBM、16量子ビット/17量子ビットの汎用量子プロセッサの開発と実用化テストに成功初の商用量子システムのコアに採用へ

IBMが16量子ビットおよび17量子ビットの汎用量子プロセッサの開発と実用化テストに成功したと発表。16量子ビットプロセッサはクラウドインスタンスとしてIBM Cloudで技術者向けに無償公開。17量子ビットプロセッサは商用化を見込む初のプロトタイプで「IBM Q」の初期基盤となる予定だ。

» 2017年05月19日 11時00分 公開
[@IT]

 米IBMは2017年5月17日(米国時間)、汎用量子プロセッサ2種の開発と実用化に向けたテストに成功したと発表した。1つはアップグレードされた16量子ビットプロセッサで、「IBM Cloud」上のサービスとして無償で提供される。もう1つは、同社製として最も強力とうたう17量子ビットのプロトタイプ商用プロセッサで、商用汎用量子コンピュータブランド「IBM Q」のアーリーアクセス商用量子システムのコアに使われる。

photo 量子コンピューティングシステムが稼働しているIBMのトーマス J ワトソンリサーチセンター(写真:Andy Aaron, IBM

 2017年3月に発表されたIBM Qは、商用利用を想定した汎用量子コンピューティングシステムで、従来型コンピュータでは困難だった先端化学や物理学、金融などでの活用が想定されている。IBMは2016年5月に量子コンピューティングプラットフォーム「IBM Quantum Experience」をIBM Cloudで公開し、PCやスマートデバイスから同社の量子プロセッサにアクセスして実験を行えるようにしている。これまでの実験回数は30万回を超えるという。

 16量子ビットプロセッサは、これまで提供されてきた5量子ビットプロセッサより複雑な処理を可能とする。IBM Cloudのインスタンスとして開発者、プログラマー、研究者向けに無償提供され、量子アルゴリズムの実行や個々の量子ビットの操作、チュートリアルやシミュレーションに利用できる。2017年5月現在、「IBM Q experience」サイトで申し込むことでβ版の利用が可能。新しいSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)も、IBMのGitHubページで公開された。

 17量子ビットプロセッサは、商用化を見込むプロトタイプとして公開。IBMがこれまでに開発した中で最も強力な量子プロセッサだとしている。IBM Cloudで2017年5月時点で提供されている量子プロセッサと比べ、少なくとも2倍の性能となるように設計されており、IBM Qのアーリーアクセス商用システムの基盤となる予定だ。

 なお、量子プロセッサの計算能力は量子ビット数だけで決まるわけではない。IBMによると、「量子情報は“もろい”ことから、計算能力を向上させるには量子ビットの品質や、量子ビット同士がやりとりする方法の改良に加え、量子エラーの最小化が必要になる」という。

 IBMは量子システムの計算能力を表す指標として「量子体積」を採用している。量子体積は、量子ビットの数と品質、回路の接続性、演算のエラー率などから求められる。IBMは今後数年間で量子ビットを50以上に増やす計画を示しつつ、汎用量子プロセッサのあらゆる側面を改良し、将来のシステムの量子体積を大幅に拡大することを目指している。

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