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» 2017年06月08日 05時00分 公開

de:code 2017基調講演(後編):AI、Deep Learning、「Mixed Reality」で未来のコンピューティングはどう変わるのか (3/3)

[柴田克己,@IT]
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「HoloLensの生みの親」も注目する日本のMR開発コミュニティーの熱気

Microsoft テクニカルフェロー Alex Kipman氏

 「12カ月前、HoloLensを米国とカナダで出荷して以来、デベロッパーの皆さんは、他のどのデバイスでも不可能なエクスペリエンスを作り出してくれた。約2万2000人のデベロッパーが作成したコンセプトは7万以上に及ぶ。私は、それらから多くの刺激を受けたが、中でも、最も感銘を受けたイノベーションは、日本で生まれたものだった」(Kipman氏)

 Kipman氏は日本のベンチャー企業であるHoloEyesによる、医療分野におけるMRの活用例を取り上げた。HoloEyesでは、高解像度の3次元画像を利用し、医師が実際に患者に対して手術を行う前の検討や準備を可能にする環境の実現に取り組んでいるという。

 「HoloLensの出荷からわずか1年にもかかわらず、既にこのようなシステムが作られているのは驚くべきことだ。世界中のMRデベロッパーが、日本のデベロッパーにインスピレーションを受けている。日本は今、一番速くMRの市場が成長している。MRをメインストリームにするためには、日本を含めた世界中のデベロッパーや企業が、共にこの流れを加速していくしかない」(Kipman氏)

 現在、「MR」に関連する略語としてVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)といった言葉も使われている。しかし、「こうした言葉上の区別にはあまり意味はない。これらは全て、MRの世界を別の角度から見た場合のラベルにすぎないからだ」(Kipman氏)

 「現実世界と重ねて仮想世界のオブジェクトを映し出す」場合、そのオブジェクトが目の前の現実世界に存在するものと正確にマッピングされているか、それとも仮想世界にのみ存在するものなのか、遠隔地の現実世界に存在しているものなのか、といったさまざまなレベルが考えられる。VRやARといった表現は、それぞれのオブジェクトについて、そのレベルがどの程度なのかを表すものになるため、「MRは、これら全てを包含した意味を持つ」というのがKipman氏の説明だ。

 「MRにおけるユーザー体験は、周辺の環境に基づいて生まれてくる。この技術によって、人の学習、遊び、コミュニケーション、仕事の仕方の全てが変わっていくだろう」(Kipman氏)

 ここで、日本の建設業におけるMR活用事例として小柳建設の取り組みが紹介された。小柳建設は、HoloLensを活用した、計画、工事、検査の効率化、アフターメンテナンスのトレーサビリティーを向上する「Holostruction」プロジェクトを推進しており、2017年4月に日本マイクロソフトと共同発表を行っている(参考)。

 設計図をはじめとする、建築業務に関わるあらゆるデータの活用と可視化を「MR」環境で行うことにより、例えば建築後のメンテナンス時には、壁の内部に設置されている配管の状況をHoloLensで直観的に把握できる。また、遠隔地にいる人と視界を共有することで、コミュニケーションの効率化も実現できるとしている。

 「Windows 10は、MRデバイスへの展開を考えて作られた唯一のOS。パートナーには、多くの可能性と選択肢を提供する。デベロッパーに対しては、標準化されたプラットフォームでMRコンテンツの開発を可能にする。Microsoftは、日本のgumiをはじめとする世界中のパートナーと協力しながら、MRに取り組もうとしているスタートアップを支援している」(Kipman氏)

 Kipman氏は最後に、「MR」が実現する将来のコンピューティングを表したコンセプトイラストを紹介した。コンテンツは、1つのデバイスや人に固定されるものではなく、任意の場所に現れるという。このイラストには、あるオフィスでのミーティング風景が描かれており、実際にそのオフィスに存在するメンバー、遠隔地からPCやXboxなどを通じて参加しているメンバーのアバター、キャラクター化されたAIのbotなどが混在する環境が作られている。この環境は全ての参加者に同じように共有されており、他のメンバーが「物理的に同じ空間にいないことを忘れてしまう」ほどのリアリティーを持つという。

 「MRはコンピューティングの将来の姿であり、それはWindowsのデベロッパーによって作ることができるものである」(Kipman氏)

あらゆる製品とサービスに「インテリジェンス」を組み込む

日本マイクロソフト CTO 榊原彰氏

 最後に登壇したのは、日本マイクロソフト CTOの榊原彰氏だ。榊原氏は、AIやDeep Learning、コグニティブサービス、MRといったトピックを振り返りつつ「私たちは現在から未来へつながる変化点の生き証人になっている」と述べた。

 榊原氏が特に注目を促したのは「Microsoft Graph」である。Office 365データへのアクセスAPIとしてスタートしたMicrosoft Graphは現在も機能強化が続けられており、Office 365に加え、Microsoft Dynamics 365、LinkedInなどさまざまなサービス上のデータにアクセス可能になっている。これらに「People(個人のプロフィール)」「Activities(行動ログ)」「Devices(IDにひも付いたデバイス)」といったデータが加わることで、デベロッパーは、従来は不可能だった新しい体験をアプリケーションに加えることが可能になるという。

 ここで、そのコンセプトを端的に表したものとして「iOSデバイス」と「PC」との間でクリップボードの内容を共有する「クラウドクリップボード」のデモが行われた。こうしたクロスデバイスでのデータ共有は、現在GitHubで公開されている「Project Rome SDK」を利用することで、今すぐに体験が可能だという。

 「Microsoft Graphは進化し続けている。デベロッパーはこれを使うことで、Office、Dynamics、デバイスなどの多彩なデータにAPIベースでアクセスし、新たなアプリケーションを開発することが可能だ」(榊原氏)

 榊原氏は、最後に基調講演のオープニングで示された「モバイルファースト」「クラウドファースト」から「インテリジェントクラウド」「インテリジェントエッジ」への進化について、あらためて強調。「Microsoftは、これから全製品、全サービスにインテリジェンスを組み込んでいく。デベロッパーは、インテリジェンスが組み込まれた製品、サービスを存分に利用できる。ぜひそれらを利用して、新たなアプリケーション、ユーザー体験を作り上げていってほしい」と述べ、2時間半以上にわたったde:code 2017の基調講演を締めくくった。

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