教えて! キラキラお兄さん「どうしたらシリコンバレーでエンジニアとして働けますか?」プロエンジニアインタビュー(5)(3/5 ページ)

» 2017年06月19日 05時00分 公開
[齋藤公二@IT]

待遇、福利厚生、人材採用の本当のところ

 シリコンバレーというと、働き方だけでなく、給料や福利厚生についても一定のイメージが持たれがちだ。

 例えば、給料。

 個人の能力で大きな差がつき、「10倍高い生産性を発揮するスーパーエンジニアは、他の人の数倍の給料をもらっている」というように。しかし実際は、それほど大きな格差はないという。

 「給料を決めるファクタの1つは職種です。ソフトウェアエンジニアならいくら、電機工事ならいくら、と職種ごとに相場が決まっています。ソフトウェアエンジニアの中でも、どの分野で何ができるかで給料は変わります。有名企業だから高いというわけでもありません。もう1つのファクタは地域です。シリコンバレーのエンジニアならいくら、ボストンならいくら、とだいたい相場が決まっています。経験も多少は考慮されますが、日本の定期昇進のように年齢に合わせて給料が上がっていくわけではありません」

 逆に言えば、必要なニーズを満たすスキルを備えており、仲間としてやっていけると判断されれば、年齢だけで給料は大きく変わらないということだ。

 エンジニアが待遇に対する価値を判断する指標の1つが、前年からどのくらい給料が上がったかだ。

 「毎年、物価が2%くらい上昇していますから、その上昇分は給料に反映されます。だから、前年から給料が2%上がったらチャラ、2%以上なら勝ち、1%なら負けです。0%やマイナスは論外。もし1%だったら、夏休みの旅行や外食費を切りつめようなど、生活を見直すことになります」

 福利厚生はどうなのだろうか。

 シリコンバレーのIT企業は福利厚生が充実していることがよく知られる。実際、社食を無料で利用できたり、託児所を併設したりしている企業もあると聞く。福利厚生を充実させることで、優秀な社員を獲得することが企業の狙いだ。

 「ひどい言い方をすると、経営側にとって、エンジニアは動物やモノと同じなんです。まずい餌しか与えていなければ、どこかに逃げていってしまう。そこで、満足できる環境を与えて思いとどまらせる。もちろん、事業を進める上で必要がないと判断されればレイオフします。部門ごとレイオフすることが多く、エンジニア個人が優秀かどうかは関係ありません。レイオフされても次の職場がある。だから、クビになっても前向きに捉えようとします」

手書きコードから何を見る? 採用で一般的なホワイトボード面接

 では採用はどうするかというと、基本的には職場のマネジャーとなる人間やメンバーが直接、面談やテストを行って判断する。求職者は、企業の求人を見てメールや電話で応募する。この辺りの事情は、エル氏の寄稿「学歴=大学名ではない:「文系エンジニアは世界で通用しない」は本当か?〜シリコンバレーの常識」もご覧いただきたい。

 書類での審査を通過すると面談やテストが始まる。本番はここから。テストは、コーディングの能力を見るもので、課題が与えられ、その解答となるコードをホワイトボードに手書きする。時間は20〜40分ほどで、どんな解答をどう導きだすか、実際に手を動かすところを観察して判断していく。

 「コーディング面接と呼んでいます。私も転職する際にテストを受けたことがありますし、逆に採用側でテストしたこともあります。テストは、『午前に2本、午後4本』などと1日スケジュールを組んだり、2〜3日に分けたりして、合計複数回実施します。面接官はそれぞれ違う人で、課題もその人が選びます。人事の人間を含めて大体5〜10人くらいで採用の可否を判断します」

 かつて「Googleの人材採用の課題」が話題になったことがある。とっぴな質問にどう応えるかを見て、その人の能力を探るといわれていたが、実際の採用ではそういった奇抜な問題が出ることはないという。

 「課題は、クイックソートやバイナリツリーといったアルゴリズムの基本を問うオーソドックスなものです。コーディング能力を判断するには、そうした基本がしっかり身に付いているかを見るのが一番です。ホワイトボードを使って解き方をリアルタイムに見ることで、どのような考え方をする人かも分かります。面接官の中には、インデントをきっちりそろえているか、といった細かいところまで注意して見る人もいます。見た目の良いコードを書ける人はコード以外にも細かく気を配れることが多いですから」

 直接の面談が難しい場合は、Google Docsのリアルタイム編集機能やオンラインエディター「collabedit」を使って、リモートでコーディング面接を実施することもある。面接を通して考え方や話し方を知り、最終的に合格となったら、給与や待遇などの具体的な条件交渉に入っていくという流れだ。

コーディング面接

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