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» 2017年07月21日 05時00分 公開

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(1):Windows 10への移行計画を早急に進めるべき理由 (3/3)

[山市良,テクニカルライター]
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どのバージョンから始めるか?

 Windows 10の新しいバージョンがCurrent Branch向けにリリースされた直後は、既知および未知のバグが数多く残っていたり、特定のハードウェアに対応するドライバの準備ができていなかったりして、安定しているとはいえません。そのため、企業においては、その時点でCurrent Branch for Businessでサポート期間にある、より安定したバージョンを導入するべきです。

 特定のバグへの対応がそのバージョンではなく、次のバージョンで修正されるということもあります。そのため、Current Branch for Businessの中でもより新しいバージョンを選択した方がよいでしょう。

 また、Windows 10の新機能は、新しいバージョンで追加されるということにも注意してください。公式の比較表に掲載されているもの全てが、Windows 10初期リリースで利用可能になっていたわけではありません。以下に幾つかの企業向け機能について、実装された(される予定の)バージョンを示します。

Windows 10の企業向け機能 実装されたバージョン
Windows Hello for Business(旧称、Microsoft Passport for Work) Azure Active Directoryベースはバージョン1507〜、
スマートフォンサインイン(旧称、 Remote Passport)はバージョン1511〜、オンプレミス展開はバージョン1607〜(Windows Server 2016が必要)
Windows Store for Business バージョン1511〜
Windows Update for Business バージョン1511〜(1511、1607、1703で機能差あり)
Windows Subsystem for Linux/Bash on Ubuntu on Windows バージョン1607〜(ただし、β版)
クライアントHyper-V バージョン1607〜
Hyper-Vコンテナ バージョン1607〜
Windows Information Protection(旧称、Enterprise Data Protection) バージョン1607〜
Windows Defender Advanced Treat Protection バージョン1607〜(Enterprise E5のみ)
Windows Defender Application Guard Creators Updateの次のバージョンである「Fall Creators Update バージョン1709」で実装予定(Enterprise)

 Windows 10を導入後は、更新プロセスを適切に制御し、企業それぞれのサイクルで新しいバージョンへアップグレードしていくことが重要になります。Current Branchでは1年に2回のアップグレードを繰り返すことになりますが、Current Branch for Businessを適切に制御すれば、例えば18カ月(Current Branch for Businessの最低サポート期間)に1回のサイクルに緩め、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。

LTSBは選択肢として有効か?

 Windows 10には、サービスモデルには、Current BranchとCurrent Branch for Businessの他に「Long Term Servicing Branch(LTSB)」があります。ただし、Current BranchからCurrent Branch for Businessに切り替えるように、LTSBに切り替えて運用するということはできません。

 LTSBは、おおむね1年に1回リリースされる、Windows 10の長期サポートバージョンです。これまで、Windows 10初期リリース(バージョン1507、ビルド10240)をベースとした「Windows 10 Enterprise 2015 LTSB」、Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607、ビルド14393)をベースとした「Windows 10 Enterprise 2016 LTSB」がリリースされています。

 Windows 10 Enterprise LTSBは、ボリュームライセンスチャネルを通じて、永続的ライセンスとして購入できます。また、Windows 10 Enterprise E3/E5の契約者は、Windows 10 Enterpriseの代わりに、契約期間内に提供されたWindows 10 Enterprise LTSBバージョンをインストールし、契約期間後も永続的に使用することができます。

 Windows 10 Enterprise LTSBは、同じバージョンのWindows 10 Enterpriseをベースとし、ほとんどの機能を搭載していますが、Microsoft Edge、Cortana、ストア、ビルトインのUWPアプリを搭載していません(画面4)。

画面4 画面4 Windows 10 Enterprise 2016 LTSB。Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)ベースなので、通常のWindows 10と大差はないように見えるが、サポート期限となる2026年にはどのように見えるだろうか

 また、新機能を含む新バージョンが、機能更新プログラムとして提供されることもありません。同じバージョンのままで、従来の製品サポートポリシーと同様の最低10年サポートが提供されます。もちろん、ライセンスを購入すれば(または権利を持っていれば)、Windows 10 Enterprise LTSBの将来のバージョンにアップグレードすることは可能です。

 Windows 10 Enterprise LTSBはミッションクリティカルなシステムのプラットフォームとしての利用が想定されたもので、Webブラウジング、メッセージング、文書作成など、さまざまな用途で利用されるエンドユーザー向けではありません。導入時の仕様と機能で、そのまま長期間、安定的に運用したいという、基幹業務システムのクライアント(専用の業務端末など)プラットフォームとしては、Windows 10 Enterprise LTSBは有効でしょう。

 エンドユーザーのクライアントPCのOSとして、Windows 10 Enterprise LTSBを利用してはいけないということは全くありません。しかし、Windows 10では特定の不具合が次のバージョンで修正されることがあります。その場合、Windows 10 Enterprise LTSBの既存のバージョンに、新バージョンでの修正がフィードバックされることはないと考えた方がよいでしょう。今後、登場するであろう新しいテクノロジーやハードウェア、Web規格などへの対応も行われないかもしれません。導入直後は問題なくても、時間とともにその古さがネックになるような気がします。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


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