続報、Windows 10のデスクトップ環境をDaaSのVDIで利用可能に――ライセンスの明確化Microsoft Azure最新機能フォローアップ(38)(1/2 ページ)

Microsoft製品およびサービスの使用権の説明資料である「製品条項(PT)」の2017年8月1日の改訂版に、「Windows 10マルチホスティング」の権利が追加されました。この権利が明文化されたことで、Microsoft Azureおよび認定クラウド上でWindows 10 Enterpriseを正式に実行できるようになりました。

» 2017年08月10日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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「Windows 10マルチホスティング」の権利とは?

 Microsoft製品およびサービスの「製品条項(PT)」ドキュメントの最新版は、以下のサイトから入手できます。

 また、今回の変更については、以下の公式ブログで説明されています。

 2017年8月1日の改訂で追加された「Windows 10マルチホスティング」の権利については、製品条項ドキュメントの「本書の説明および変更事項の概要 > ソフトウェア」(9ページ)、および「Windows > Windowsデスクトップオペレーティングシステム > 3. 使用権 > 3.5 Windows 10マルチテナントホスティング」(45ページ)に記載されています(画面1)。

画面1 画面1 2017年8月1日から利用可能になった「Windows 10マルチテナントホスティング」権利

 「本書の説明および変更事項の概要 > ソフトウェア」には、次のように記載されています。

Azure ADベースのライセンス認証を使用する、Windows 10 Enterprise E3/E5またはVDA E3/E5 Per User SLをお持ちのお客様が、Windows 10 Creators Update以降のCurrent Branchソフトウェアを、Microsoft Azure上で実行されている仮想マシン、または対象となるマルチテナントホスティングパートナーとの共有サーバーにインストールできるようにする、新しい使用権を導入しました。

 これまで、WindowsデスクトップOSをMicrosoft Azureや他社クラウドのマルチテナントホスティング環境にインストールして実行することは、ライセンス上、許可されていませんでした。WindowsデスクトップOSを導入できるのは、オンプレミスの物理コンピュータやオンプレミスの仮想化環境(サービスプロバイダーの顧客専用サーバ環境を含む)に限られていました。

 例外は、Visual Studio MSDN(Microsoft Developer Network)サブスクリプション契約者に許可された、Microsoft Azure上でWindows Enterpriseを、開発やテスト目的で展開、実行することだけでした。

 この制約が一部緩和され、Microsoft AzureのIaaS(Infrastructure as a Service)環境、またはMicrosoftの「Qualified Multitenant Hoster(QMTH)Program」の認定を受けたホスティングプロバイダー上のマルチテナント環境に、Windows 10 Enterprise(Creators Update バージョン1703以降)の仮想マシンを展開し、実行するライセンス面での許諾が正式に提供されることになりました(画面2)。

画面2 画面2 Microsoft AzureのIaaS環境で実行中のWindows 10 Creators Update(この画面は今回の権利を使用したものではなく、Visual Studio MSDNサブスクライバー向けの仮想マシン)

 今回、「Windows 10マルチテナントホスティング」の権利が許諾され、オンプレミス向けに購入したライセンスをクラウドに持ち込むこと(Bring Your Own License)が可能になったのは、ボリュームライセンスチャネルで提供される以下のサブスクリプションのWindows 10 Creators Update以降のバージョンに限定されます。

  • Windows 10 Enterprise E3 per User
  • Windows 10 Enterprise E5 per User
  • Windows Virtual Desktop Access(VDA)E3 per User
  • Windows Virtual Desktop Access(VDA)E5 per User

 「Windows 10 Enterprise E3」サブスクリプションは、以前は「Windowsデスクトップオペレーティングシステム用ソフトウェアアシュアランス(SA)」「Windows Enterprise with SA」と呼ばれていたソフトウェアアシュアランス(SA)契約であり、E5にはE3の全ての機能に加え、「Windows Defender Advanced Threat Protection」が提供されます。これらのライセンスは、先日発表されたMicrosoft 365 Enterpriseで取得することもできます。

 「Windows Virtual Desktop Access(VDA)」は、主にシンクライアントを対象とした、仮想デスクトップインフラストラクチャ用のWindows 10 Enterpriseライセンスです。

 「Windows 10 Creators Update以降のCurrent Branchソフトウェア」とは、「Windows Enterprise LTSB」(今後、LTSCに改称予定)ではないソフトウェアという意味であり、Current BranchとCurrent Branch for Businessの2つのサービシングモデルのCurrent Branchの方という意味ではありません。

 なお、クラウドサービスプロバイダー(CSP)が月額提供する「Windows 10 Enterprise in CSP(E3/E5)」についても、2017年9月6日から「Windows 10マルチテナントホスティング」の権利が利用可能になる予定です。

 Microsoft Azureにおけるセッションホストベースの仮想デスクトップ環境である「Azure RemoteApp」のサービスが廃止(2016年8月に新規受付終了、2017年8月31日に導入済み利用者への猶予期間終了)され、後継のサービスとして「Citrix XenApp Essentials」の提供が開始されたことは既報の通りですが、今回の製品条項(PT)に明記されたことで、ようやく運用環境向けに導入可能になりました。

 今回、Windows 10をクラウドで実行するためのライセンス条件が明確になったわけですが、「Microsoft Azure Active Directory(Azure AD)」ベースのライセンス認証が必要である点や、現状「Azureポータル」の準備が追い付いていない(Azure Marketplaceに用意されているイメージがWindows 10マルチホスティングの権利と関係のない「Azure EA」契約を要求される)部分があるなど、注意点が幾つかあります。不明な点は、導入する前に日本マイクロソフトのライセンス窓口やQMTH認定パートナーに問い合わせが必要でしょう。

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