鳥取編:ITエンジニアの皆さん、鳥取を救ってくださいITエンジニア U&Iターンの理想と現実(27)(3/3 ページ)

» 2017年08月21日 05時00分 公開
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ITエンジニアが鳥取県を救う――田舎の経営者の妄想

 その点、企業向けのシステムの構築や導入を担当しているITエンジニアの皆さんは、クライアント企業に何カ月も張り付いて業務プロセスを確認したり、問題点を洗い出したりと、「企業の改革」に1番近い場所で仕事をされています。

 わが社のシステム構築の際も、SEの皆さんに、現場の目線で考えたり、IT技術で問題点をどう解決するか考えたり、社内の業務を根っこから見直したりしてもらいました。

 本来、この「見直す」という作業は、管理職が集まってあれこれ検討した上で実行するものです。しかし後継者不在率73.2%の鳥取の企業には、「改革を行う人がいない」「管理職が育っていない」という現実があります。

 そこで、ITエンジニアの皆さんに筆者からの提案です。後継者を探している企業の「経営者として」田舎に移住してみませんか

 ITエンジニアであれば、小さな企業の全体像はすぐに見えてくるでしょう。それを「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の経営資源で細分化し、プロセスを適切に仕分け、並べ替えヒモ付ける作業は、データベースの構築に似ています。実行しやすい作業に置き換えることは、取り扱いやすいUIを考えることと似ているでしょう。

 IT業界は、比較的若い段階でチームリーダーなどの役職に就き、スケジュールや予算、メンバーのマネジメントを経験されている方が多いと聞きます。先に挙げた会社の経営資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の中では「ヒト」が1番重要です。そして、そのマネジメントは、そう簡単なものではありません。しかし、問題解決のプロフェッショナルであり、ロジカルにものごとを考え、マネジメントを経験されているエンジニアの皆さんでしたら、「ヒト」を含む「会社運営」をうまくできるのではないでしょうか。

 皆さんにもメリットはあります。

 自分が作ったシステムがどう使われているのか、そのシステムを使うのはどういう人たちなのか、導入の際どんな苦労があるのか――実際に現場に入り現場の「リアルな課題」を把握することで、より適切な解決策が見えるようになるのではないでしょうか。現場でしか体験できない現実を知ることは、皆さんのスキルアップにきっと役立ちます。

 それでも、移住には抵抗がある人もいるでしょう。

 UIターンの人は鳥取に「永住する」以外の選択肢があってもいいのではないでしょうか。個人的には、1年とか3年とかの「期間限定」もありではないかと思います。

エンジニアに活躍してもらうために田舎サイドが準備すべきこと

 ITやインターネットがこんなに普及しているにもかかわらず、田舎に足りないものは「情報」です。限られた情報の中で絞る知恵には限界があると思います。

 「情報」には価値のあるものも無駄なものありますが、タダで良い情報が得られることはありませんし、待っているだけで情報が勝手に来てくれることもありません。お金を払ってでも良い情報をつかみに行くという姿勢や情報を見極めるノウハウも必要です。それらを養うものの1つは、やはり「教育」です。

 田舎側のやるべきことは、「教育」のプロセスを真剣に考え、準備することです。また、いろいろな意見を受け入れ、活用する「人の力」も必要です。

 田舎の人と都会の人が幸せに暮らせる仕組みや方法を考え、それを本音で語り合える関係性ができれば、「エンジニアに来てほしい田舎」と「経験を積みスキルアップしたいエンジニア」の組み合わせは、お互いの課題を解決し、より良い関係になるのではないでしょうか。

 「U&Iターンの理想と現実」、鳥取編は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。次回は愛媛編をお送りいたします。

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筆者プロフィール

蓑原康弘

ミノハラ製作所蓑原康弘

地方の町工場の2代目社長。異業種から製造業に入り、さまざまなギャップに困惑しながらも、プログラミングを習得し、山積みの経営課題をIoT導入で解決しています。

コラム:地方の町工場社長のマネジメントシステム論


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