SOMPOホールディングスは、機械学習/AI、クラウドをどう活用しようとしているか事業戦略に沿って選択と集中(2/2 ページ)

» 2017年08月29日 05時00分 公開
[三木泉@IT]
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事業に直結するデータ活用、機械学習/AIとは

 では、データ分析や機械学習を、どのように新しいビジネスへ結び付けようとしているのか。

 中林氏は、ヘルスケア分野における「デジタルヘルス2.0」に関する取り組みを、例として紹介した。健康に関する個人のデータを取りながら、数カ月後の健康状態を予測し、適切なアクションを提案するシステムの設計だ。

 こうしたシステムにおいてまず重要なのは、的確な予測モデルの構築だ。次に、これに基づくトレーニングや食事のメニューを構築し、提供することになる。

 だが、単に情報として提供するだけでは、人の行動に影響を与えにくい。このため、例えばトレーニングでは、Googleカレンダーなどと連携し、スケジュールの余裕がありそうな日に、会社のジムでのトレーニングを提案する、あるいは、食事メニューについては、冷蔵庫の在庫チェック機能と連動して、買うべき食材を合わせて提示するなど、踏み込んだ提案が必要になると話す。

 「データを活用するだけでなく、活用によってサービスの魅力を高めなければならない。そのためには現状を報告したり、過去を振り返ったりするだけでなく、将来の予測をして提案できなければならない」(中林氏)

「デジタルヘルス2.0」を例としたデータ活用と事業の関係

 機械学習/AIについては、「業務アシスト型AI」 と「特化型AI」の2種類に大別して考えているという。

 業務アシスト型AIとは、コールセンターなど、一般的な業務知識を持った社員を支援するもの。そして、特化型AIとは、自動運転や人の健康などに特化したAIで、専門的な知識を持つスペシャリストをサポートするものだ。

 SOMPOホールディングスでは、まず業務アシスト型AIに力を入れている、特に画像認識、音声認識、言語処理にフォーカスし、開発や事業実装を進めているという。

 AIのレベルについては、「人工知能は人間を超えるか」(松尾豊著)における、レベル2(ハンドコーディング)、レベル3(機械学習)、レベル4(ディープラーニング)の分類を引用。

 「よく話題に上るコールセンター型のAIは、入力と出力の対応を人手で行うため、コストが高い。レベル3以上でないと事業実装は難しい」と中林氏は話した。

データサイエンスおよびクラウドの活用は4階建て

 データサイエンスおよびクラウドの活用は「データソース」「データカタログ」「AI・アルゴリズム」「データサイエンティスト」の4階建てで考えているという。

 データソースを無理矢理統合することは考えていない。内外のデータソースからデータカタログを作成、目的に応じ、適宜仮想データベースを構築して活用するのが基本方針だ。

 「事業戦略を考え、どういうデータを使わなければならないかを判断、これに基づいて分析対象を確定する。

 柔軟性とスピードを重視した内製化志向で、データサイエンティストチームは分析対象や分析手法に精通した精鋭で構成しているという。

 データ分析、機械学習では、AWSともう1つのパブリッククラウドを併用している、プロジェクトによってAWSのみ、もう1つのパブリッククラウドのみのいずれかを使うパターンと、双方のクラウドを使うパターンがあるという。

 「最新のGPUをいつでも即座に使えるのは、クラウドの大きなメリット」と中林氏は話す。

 データ処理はほぼパブリッククラウドで行っているため、社内と同等のデータセットが使えるように、セキュリティ上の対策を行い、社内で了承をとっている。VPCは社内から専用線で接続。インターネット接続を遮断している。また、プロジェクトごとにVPCを分けているという。さらに、AWSアカウントとActive Directoryを連携させ、開発作業における自由度とセキュリティの両立を図っているという。

クラウド上に「デジタルサンドボックス」を構築。実証実験を容易に実行できるようにしている

 現状で最も大きな課題として、中林氏は適切な訓練を受けたデータサイエンティストが圧倒的に少ないという点を指摘した。これはもはや一企業を超えた課題だと話す。

 そこでSOMPOホールディングスでは、「Data Institute」を設立したという。「グループでデータ活用に関わる人材を総合的に養成する機関」というのが設立趣旨だが、グループ外の社会人や学生を対象とした講座、教育機関との連携による共同研究を通じた人材育成など、データ活用領域における日本企業の競争力強化に貢献していきたいとしている。

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