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» 2017年09月08日 05時00分 公開

「実際のサービスでまず小さな成果を出せ」:Pivotal CEOが語るKubernetes、そして一般企業のデジタルトランスフォーメーション (2/2)

[三木泉,@IT]
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デジタルトランスフォーメーションの最新トレンドは?

――では、デジタルトランスフォーメーションの話題に移りたいと思います。大企業におけるデジタルトランスフォーメーションには、新たな方向性や変化が見られますか?

ミー氏 ええ。アジャイルなソフトウェア開発手法は企業で始まったにもかかわらず、2000年代前半に活用していたのはスタートアップ企業のみでした。こうした企業があらゆる業種における従来型企業のビジネスを破壊し始めたことで、従来型企業は「自分たちもやらなければ」「しかもすぐにやらなければならない」と考えるようになりました。

 2004年、2005年の頃は、顧客と必ず、「新しいやり方でソフトウェアを開発すべきです」「なぜだ」といった押し問答をしていたものでした。今では、業種にかかわらずあらゆる企業が、拒否することなく、どうすればいいかを知りたいと考えるようになりました。

 それは1つには「文化」「メソドロジー」であり、もう1つはPCFをはじめとする「技術要素」です。Pivotalはこれらをまとめて、一般企業がソフトウェア開発をコアコンピテンシーに変えるプロセスを加速するお手伝いをしてきました。

 その過程で、顧客企業が、ソフトウェア比率の高まり続ける自社製品を、より高速に、より責任が持てる形で開発できることに気付くと、企業における製品開発についての考え方自体が変わるようになってきました。

 製品を早く世に送り出せるので、例えば18カ月前に企画するのでなく、3カ月前に企画すればいいようになりました。フィードバックを得て、製品を進化させるプロセスも高速化しています。また、仮説を非常に高速に検証できるようになりました。

――ピボットもしているということですか?

ミー氏 ええ。スタートアップ企業のように、素早くピボットしています。こうしたことが、ファンディングの在り方にも影響を与えています。製品プロジェクトへのファンディングのサイクルが大きく変わりつつあります。また、「素早く立ち回りさえすれば、失敗することは問題ではない。(例えば)2年間、間違った製品を開発し続けるよりもよほどいい」ということも分かるようになりました。

 Pivotalの顧客は今、こうしたことを進めています。当社が急速に伸びている理由もここにあります。私たちはテクノロジーに関しては適切な抽象化を提供し、メソドロジーに関しては過去20年培ってきたものがあります。今こそ、あらゆる業種の企業が採用するのに適しています。ですから、私たちは歴史的な意味で、私たちの今の立ち位置について、非常に幸運だと感じています。

――どんどん新しい企業が参加してくるということですね?

ミー氏 (ここでPivotalのAsia Pacific and Japan担当バイスプレジデント兼マネージングディレクターであるライオネル・リム氏が話した)アジア太平洋および日本は3年遅れていると言われてきましたが、ここに来て顧客が非常に増えてきました。理由は当社の提供しているサービスが、平等な競争の場を生み出すことにあります。日本企業の中にも、これで再びグローバルな競争に打ち勝つことができると考える企業が増えています。中国、シンガポールでも同じことが起こっています。

「POCではなく、実際のサービスで成果を出せ」

――日本の企業で、デジタル変革のけん引役を任される人(「Chief Innovation Officer」とも呼べるのかとは思いますが)は増えていると思いますが、短期的なものの見方をせざるを得ない事業部門に、何をやるべきかを理解してもらい、協力を取り付けるのに苦労している例を見かけます。

ミー氏 まさにそうした点で、Pivotalがお手伝いできればいいと考えています。Chief Innovation Officerは事業部門に、投資額の小さな成果を素早く示すのがいいと思います。当社は非常に大規模なビジネスをやっていますが、一方でスモールスタートしたいと考えています。数カ月の間に、たくさんのイノベーションを起こすことができ、これまでにできなかったような製品開発ができるようになるということを示すお手伝いができます。

 成果を示せば、事業部門も「大きなコストを掛けずに短期間で新しいことができる。自分たちのやり方で将来に向けたビジネス拡大への取り組みができる」と考えるようになります。これは非常に強力です。素早い成果を出すことを、ぜひ助けさせてほしいと思っています。

――POC(Proof of Concept)をやるケースは多いですが、どんなに小さくても実際の製品・サービスをやるべきだと思いますか?

ミー氏 そう思います。私たちはPOCを実際のビジネスに昇華させられるという点に自信を持っています。最高の教訓は人々が使うサービスから得られるからです。

――大企業でイノベーションを起こそうとしている人たちに言えることはありますか?

ミー氏 リーンスタートアップのアプローチは非常に多くの成果をもたらしました。「リーンスタートアップ」という言葉になったのは残念です。スタートアップ企業でない、大企業にとってもよく当てはまることだからです。

 自分たちの経験を素早く検証し、次に進めるようにするには、本番サービスをやっていかなければなりません。このためには、製品開発に新たな能力が求められます。製品のビジョン、プロダクトマネジメント、デザイン、ソフトウェアエンジニアリングなどです。

 ですが、大企業の多くは、こうした能力を持っていません。非常に高速なソフトウェアの開発サイクルを回す能力を身に着けるのは、並大抵のことではありません。本を読んでどうすべきか考えるのでは習得が不可能です。

 だからこそ私たちは、「手を広げて暖かい、安全な環境にあなたたちを招き入れ、(アジャイルなソフトウェア開発が)あなたたちの本能の一部となるまで一緒にやります」と言っています。経験によって学ぶことができ、他のプロジェクトにも適用できるようになるからです。

 機械学習やAIについて話題になることが増えていますが、基本的な部分への言及が少ないことが気になります。単一のプラットフォームでソフトウェアが継続的に稼働する環境があり、ソフトウェアが他のソフトウェアと「会話」できるようにAPIを踏まえた作りになっており、さらにこのソフトウェアを非常に早く変更できるようになっていなければなりません。

 なぜなら、こうしたソフトウェアの作り方をしていないのに、「機械学習をやろう」と言っても、どのようにアルゴリズムに対してデータをフィードしてトレーニングを行い、どのように機械学習で得られた洞察を適用するのでしょうか? サービスとは切り離されたシステムに誰かが問い合わせを行い、「洞察が得られた」と叫ぶのでしょうか?

 そうではなく、API指向のソフトウェアがあり、これを高速に変更していく能力があり、機械学習/AIのような新しい機能にプラグインして洞察を直接ソフトウェアで活用していくことを求めているのではないでしょうか?

 当社は政府機関、軍隊などとも仕事しています。軍隊は「将来AIで戦争するようになる」と興奮していますが、当社では「ちょっと待ってください。ソフトウェア開発能力を身に着けない限り、こうした新技術を生かせませんよ、別システムとして構築するしかないのですから」と説得しています。

――日本という市場について今、どう思っていますか?

ミー氏 私は昔から、日本は当社が自然に取り組める市場だと考えてきました。私たちの、協力し合う、チームベースの開発手法は日本によく当てはまります。そして、日本はクラウドテクノロジーや当社の提供するようなプラットフォームを必要としていると考えます。

 日本での勢いもついてきました。システムインテグレーターなどのパートナーが増えてきたことをうれしく思っています。結局のところ、日本の企業が日本の企業を助けるということが必要だと考えています。

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