連載
» 2017年09月11日 05時00分 公開

「The Next Platform」で読むグローバルITトレンド(10):Googleはインターネットを再構築したいのか(後編) (2/3)

[Timothy Prickett Morgan, The Next Platform]

既にGoogleはトラフィックの20%をEspressoで管理している

――Espressoは2年間運用されてきた。Googleのトラフィックのうちどれだけの割合を処理しているのか?

バーダット氏:20%だ。この割合は日増しに増えている。新しい実装は全てEspressoに移行している。つまり、Espressoは大規模にインストール済みだが、ポイントはネットワークの更新または拡張に合わせてEspressoを追加導入しているということだ。そのため、日々われわれのトラフィックの一部がEspressoに移行している。自然に割合が増えていくわけだ。

――他の80%のトラフィックはどう処理しているのか?

バーダット氏:従来のベンダー製の機器で処理している。

――Espressoに完全に移行するのにどれくらいかかるのか? 3〜4年くらいか?

バーダット氏:まだ分からない。それくらいかもしれない。はっきりとは答えられないが、われわれにとって、移行にどれだけの期間を要するかはあまり重要ではない。Espressoのメリットは完全に享受されており、Espressoが適用されるトラフィックも増えている。費用に関しても問題ない。既存のシステムは減価償却が完了しているか、ほぼ完了しているからだ。

――現実の世界にEspressoのような技術に取り組んでいる企業はあるのか? Googleは異世界に住んでいる。そのことはもちろん認識しているだろうが……。

バーダット氏:いや、われわれは現実の世界にいると思っている。だが、今の質問はいいところを突いている。それについて言えば、Espressoに近いものはどこにもないと認識している。存在しないと言うつもりはないが。

――あなたがそう認識しているなら、存在しないと確信できる。そのような技術があれば、Googleは可能なら買収するだろう。

バーダット氏:確かに。Espressoは、標準的なインターネットプロトコルの考え方からの大きな脱却だと私は思う。標準的なインターネットルーターの考え方は、非常にボックス中心型だからだ。2台のルーターが相互接続を確立し、プロトコルメッセージを交換し、パケット転送に必要なこれらの全データを相手に渡す。こうしてネットワーキングが行われる。これは教義のようなものだ。だが、われわれはこの枠組みを大きく壊している。他の誰もこうした取り組みを行っていなのは、これが理由なのかもしれない。こうした取り組みは、従来のインターネットプロトコルの考え方に反してしまう。

――こうした技術を推進したいと考えているのか? つまり、会社として総合的に後押ししていくのかどうか。論文を発表したり、ソフトウェアをオープンソース化したりという方法がある。こうしてEspressoを世界に寄贈したいのか? あるいはEspressoは権利を主張し、特定のニーズに合わせて特殊なハードウェアを作らせるためのものなのか? 社内で使う以外に、Espressoについて具体的にどのような計画があるのか?

バーダット氏:それは大きな問題だ。われわれはネットワーク機器を販売するビジネスは手掛けておらず、手掛けるつもりもない。だが、可用性の向上か高速化かにかかわらず、インターネットをより良くすることはわれわれのミッションに不可欠と考えている。

 われわれがこの技術を公開した理由の1つは、良いアイデアを他の人に採用してもらうことにある。アイデアの採用が進めば、われわれはこれらのインターネットプロトコルをISP間で展開できるようになり、より理にかなった運用が可能になる。現在も、全てを特別な方法で処理してメリットを得ているが、外部との通信ではまだBGPを使っているからだ。

――誰もがEspressoのようなものを使えるようになれば、有益だと思う。

バーダット氏:私も同じ意見だ。間違いなくそうだろう。包括的でグローバルな視点に立つことで、ネットワーキングは現状より大きく改善されるだろう。

 もう1つ説明を加えておきたい。Espressoの意義が一段と分かるはずだ。

 インターネットの歴史に関して言うと、われわれがインターネットをこれだけの規模に成長させることができたのは、原理に従ってきたおかげだ。言い換えれば、ペア接続を使用してきたおかげだ。例えば、「インターネットの1つのメンバーを見つけてそのメンバーにデバイスをつなぎさえすれば、たちまちこのグローバルネットワークのメンバーになれる」ことを考えてみよう。実に素晴らしいことだ。

 こうしたことが可能になるようにプロトコルが開発されてきたのは、もっともな理由があってのことだ。もちろんわれわれは、インターネットのこうした資産がなければこの新たなネットワークを構築できなかったに違いない。

 だが今では、インターネットはもはやサーバペア間の経路など、「経路が見つかればよい」というものではない。広い帯域を利用して、最高レベルの可用性、最も優れたパフォーマンス、最小のレイテンシが追求されるようになっている。こうした流れを背景に、プロトコルの設計方法は、ペアの決定からグローバルな視点の反映へと質的にシフトしている。

――先行きを予想してみると、誰もが常に最適化を行うようになったら、一種の競争に陥ると思われる。高頻度取引のように、お互いがお互いをつぶし合う状況が絶え間なく繰り返されるかもしれない。いったん誰もがやり始めたら、しばらくしても何か生産的なことがなされるとは思えない。誰もが常に動的な最適化を行えるようになったら、ネットワーキングははるかに複雑になってしまうのは?

バーダット氏:その可能性は確かにある。だが、集約も可能だ。もう1つ留意しなければならないのは、現在も誰もが常に最適化を行っているが、それは1台のボックスのローカルな視点に全面的に依拠していることだ。従って、われわれは実際には「人々が最適化を少し抑制してもらうことで、大きな視点から集約を行えるようにした」と考えてもらえればと思う。

――あるいは逆に、トラフィックを特定の方向に意図的にプッシュできるとしたら、それは実はパッシブではないと思う。最適な経路を見つけることと、実際には警官に行き先を指示してもらうこととは違う。

バーダット氏:その通り。それでは交通管制官になってしまう。

――なるほど、興味深い。では、現時点でEspressoについてはどのような計画があるのか? 論文は発表したか?

バーダット氏:まだ発表していないが、乞うご期待だ。

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