きっかけは「ITライフサイクルの効率化」――IDC Japan、国内企業におけるDevOpsの実践状況に関する調査結果を発表ITとそれ以外の業種で課題が異なる傾向も

IDC Japanは、国内企業によるDevOpsの状況について「5社に1社がDevOpsを実践」との調査結果を発表した。「ITライフサイクルの効率化とITコスト削減」が最多の実践理由で、最も実践率の高い業界はサービス業だった。

» 2017年11月02日 08時00分 公開
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 IDC Japan(以下、IDC)は2017年10月31日、レポート「2017年 国内DevOps市場 ユーザー動向調査」を発表した。同社によれば、DevOpsを実践している国内企業の割合は20%で、サービス企業の実践率が最も高かった。DevOpsを実践する理由としては、「ITライフサイクルの効率化とITコスト削減」と回答した企業が最も多かった。

画像 図1:DevOpsの実践状況に関するユーザー調査結果(出典:IDC Japan)

 DevOpsの実践状況について詳しく見ると、「(DevOpsを)IT組織全体で実践している」と回答した企業の割合は6.6%、「一部の部門/プロジェクトで実践している」と回答した割合は10.5%、「試験的に実践している」と回答した割合は2.9%で、「DevOpsを実践している」と回答した企業の割合は、全体の20.0%に上った。

 一方、今はDevOpsを実践していないが、「実践する具体的な計画がある(10.9%)」「実践するかどうかを検討している(19.4%)」「情報収集や勉強をしている(13.8%)」と回答した企業の割合の合計は、全体の44.1%だった。

 業種別に見た場合、最もDevOpsの実践率が高い業種は「サービス業(27.5%)」で、次いで「通信業、サービスプロバイダー業(22.7%)」、ソフトウェアベンダー、システムインテグレーターなどの「ソフトウェア、システム開発業(21.4%)」が続いた。

 DevOpsを実践している企業にその目的を尋ねた調査では、「ITライフサイクルの効率化(34.0%)」「ITコストの削減(31.1%)」との回答が最も多かった。IDCは、こうした結果について、「企業には、DevOpsを実践することで、開発や運用に伴うプロセスとコストを最適化する狙いがある」と分析する。

 同様の質問に対して、「IT部門とビジネス部門の関係の強化(29.1%)」「開発者の時間とスキルの有効活用(26.2%)」と回答した企業の割合も高かったことから、組織と人材活用の改善もDevOps実践の動機になっていることが分かる。DevOpsを実践する企業の34.0%が「CIO(最高情報責任者)/IT部門のトップによる強い推進があった」と回答したことも明らかになった。

画像 図2:DevOps実践における課題に関するユーザー調査結果の回答上位5項目(出典:IDC Japan)

 DevOpsを実践している企業に対してIDCが課題を尋ねたところ、最も多かった回答は「取り組んだ効果に対する評価指標が分かりにくい(27.2%)」「各部門間のコミュニケーションが取れていない(27.2%)」「各部門で文化(役割や作業スタイル、価値感など)が異なり統制がとれない(27.2%)」の3項目だった。とりわけIT業界では、「評価指標の分かりにくさ」を課題に挙げた企業の割合が高く、IDCは、「DevOpsの成果を評価できる仕組みが整っていない」と分析する。一方、IT以外の業種では、「コミュニケーションや文化の違い」を課題に挙げる企業が目立ち、IDCは、「(こうした企業で)IT部門とビジネス部門との間に壁ができている」と見ている。

 同社でソフトウェア&セキュリティ リサーチマネジャーを務める入谷光浩氏は、「DevOpsを実践しようとしている企業のIT部門は、ビジネス部門との連携を強め、DevOpsのプロセスに適合できる組織と人材の整備を進める必要がある。DevOpsの実践効果をしっかり示すことができるように、実践前後で比較できる評価指標を作ることも重要である。DevOpsの効果を経営層やビジネス部門に示すことができればDevOpsはさらに加速し、革新的なビジネスを生む下地になるだろう」と述べている。

 IDCはDevOpsを、「企業がスピードや生産性、品質などのビジネス能力を高めることを目標に、ビジネスを支えるアプリケーションの開発から運用までのプロセスを通して複数の組織や担当者が共同で取り組む際に必要な方法論と一連のプラクティス(実践)」と定義している。なお、今回の調査は、DevOpsの実践有無にかかわらず、DevOpsについて理解している企業を対象としたという。

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