10日に8日は楽しめる「天職」を探せ――政治からテクノロジーへ転身した異色の社長が語るGo AbekawaのGo Global!〜Chris Barbin編(2/3 ページ)

» 2018年02月23日 05時00分 公開

今のAIフィーバーに重なる過去の「オンデマンド(クラウド)」

画像 阿部川”Go”久広

阿部川 創業から10年ですが、この先Appirioとしてやりたいことは何ですか?

バービン氏 できるだけ多くの地域にサービスを広げます。それが、今後のAppirioの成長を決めるでしょう。これから多くの技術がクラウドに乗ると考えていますし、まだクラウドを導入できていない企業をサポートする必要もあります。今も、11年後も、そうした状況は変わらないかもしれません。

阿部川 将来、AIやロボティクスといった新たな技術を扱いますか?

バービン氏 各業界で、AIのベストな事例を見極め、そこから得られた知識を顧客に役立てたいと考えています。AIは膨大なデータがあってこそ機能しますし、そうしたデータを提供できる業界は限られます。AIは今、かつてのクラウドと同じく、非常に混乱した立場にあります。その真価が明らかになるのは、優れた導入事例が出たときでしょう。

政治家志望のはずが一転、スニーカー販売からITへ

阿部川 学生時代からコンピュータに興味を持っていたんですか?

バービン氏 実は、当初は政界を目指していました。私はボストン郊外で生まれ、ボストンで育ちました。ベイツカレッジで政治学を専攻し、卒業してすぐ、メイン州でウィリアム・コーエン上院議員の事務所で働き始めましたが、半年で辞めてしまいました。

阿部川 なぜですか?

バービン氏 政界では物事の進むスピードが遅過ぎると感じたんです。両親はあまり喜びませんでしたが(笑)、ボストンの実家に帰ってスポーツ用品店で働いた後、友人の勧めでコンサルティング会社に入社し、産業向けの塗料や資材を扱う「W. W. Grainger(W.W. グレインジャー)」で、Grainger.comというeコマースサイトの立ち上げに関わりました。

 そこで突然、テクノロジーに魅せられてしまったんです。当時、eコマースは社会に出てきたばかりでしたが、私は導入した技術の1つを扱っていた「WebMethods(ウェブメソッズ)」という会社がシリコンバレーで急成長する姿を見て、転職を決めました。

阿部川 実際、WebMethodsはどのくらいの勢いで成長したのですか?

バービン氏 私が入社した1998年から3年間で、WebMethodsは時価総額100億ドルへ成長しました。2000年に上場した時は、やっと価値を認められたようで、社員同士ガッツポーズを決めていましたね。

Appirio起業に目覚めた「きっかけ」

阿部川 その後、「Borland(ボーランド)」に入社してから、Appirioを起業されたんですね。

バービン氏 Borlandでは、ワールドワイドのサービスを担当した後CIOになりました。当時の経験が、Appirioを立ち上げるアイデアにつながりました。

阿部川 具体的に、何が起業の決め手になりましたか?

バービン氏 Borlandで、社員全員をライセンス対象にしたSalesforceのサービスを導入した際、そのツールとしての推進力や可能性を目の当たりにしました。「将来、各業界の専門知識に合ったレベルでSalesforceを使えるサービスへのニーズが増える」と確信したのです。

 当時、クラウドは「オンデマンドソフトウェア」と呼ばれていて、中小企業向けでした。私たちは、クラウドがこの先テクノロジーの転換点になると考え、「大企業へクラウドを導入するテクノロジーを提供しよう」と考えました。

阿部川 Appirio設立は、正確にはいつでしたか?

バービン氏 2006年です。私とBorland時代の3人の同僚と立ち上げました。その時までに、私は10件ほどビジネスプランを書いた経験があり、いつも人に見せては笑われていたものですが、Appirioのビジネスプランを書いたときだけは、うまくいきました(笑)。

人間は、「10日のうち、8日は楽しめる」仕事を選ぶべき

阿部川 コンサルティングやITなどで得た経験のうち、Appirio起業に最も役立ったことは何ですか?

バービン氏 Appirioのビジネスには、それまで経験した全てのノウハウを活用しました。例えば、CIOを経験したおかげで、私は技術的な視点から顧客を説得する材料を数多く得ていたので、それをAppirioのセールス戦術に応用しました。

阿部川 あなた自身、Appirioのビジネスにどう向き合っていますか?

バービン氏 100%楽しんでいます。私は、10日のうち8日楽しめなかったら「何かがおかしい」と考えます。普通に仕事をしていて、10日間のうち2日くらいは、悪いことが起こる日や、大失敗をする日があるでしょう。でも、あとの8日間楽しいことがないなら、一度自分の方向性を振り返って再考すべきです。

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