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» 2018年04月20日 05時00分 公開

久納と鉾木の「Think Big IT!」〜大きく考えよう〜(8):IT投資動向調査には現れない、「投資額が決まるまで」〜予算が余る/ひっ迫するしょうもない理由〜 (3/3)

[久納信之/鉾木敦司,ServiceNow Japan]
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「無理やり予算消化する」文化を改めるためには

 さて、このような状況を引き起こさないためにはどうしたらよいだろう。

 お勧めは、まずはIT部門としての短期、中期、長期の方向性と優先順位を明確化したロードマップを策定しておくことだ。そして、このロードマップとひも付く形でプロジェクトのポートフォリオ管理を実践することだ

 既に動いている、あるいは新たに起案される各プロジェクトについて、それぞれの期待される効果、必要リソース、概算予算と想定リスクをひも付けて可視化し、部門の垣根を超えて全プロジェクトを単一の議論のテーブルに載せる。その上でロードマップに照らし合わせてプロジェクトの採用順序を相対評価するのだ(※ポートフォリオ管理、ロードマップ策定の詳細についてはまたの機会に説明したい)。

 基本的に企業に意味のないプロジェクトなど存在しない。だから相対評価をして振るいに掛けるしかないのだ。ただし、書籍代と接待費の重要性の優劣が付けがたいのと同様、プロジェクトの選別においても、例えば攻めの新規のプロジェクトと、既存システムの機能改善プロジェクトとを比較しようとすると、甲乙付けがたいという状況が必ず起こる。この際に拠り所となるのが優先順位の付記されたロードマップと全体バランスの概観だ。これにより、(泣く泣くだが)何とかプロジェクトを選別していくのだ。

 そして、仮に予算が余る部署が出てきても、上述のポートフォリオ管理に提起されていないプロジェクトや、どのプロジェクトにもひも付かない製品、トレーニングなどは購入すべきではないだろう。ポートフォリオや計画に載っていないのならば、不急のものであり、思いつきと言われても仕方がない。

 こうしたプロセスを実現するためには、予算を余らせて非難されるよりも無理やり予算消化することを良しとする価値観を改める必要がある。期中の予実管理により余る予算が見えてきたなら経理部門と調整の上、予算の返還を行うべきだ。そうすれば補欠で順番待ちのプロジェクトに予算を回すことができる。年度内であっても常に企業目線でリストの優先順位の高い方から予算が(再)配布される仕組みを実現すべきだ。

 そのためには、支出(予算執行)の予実管理がタイムリーに行われることが前提となる。予算執行の計画、計測・可視化、共有が当たり前のこととしてできて初めて、企業目線の的確な再考ができる寸法だ。だから、個人がすぐできることとして、あるいは根底にある必要不可欠なこととして、経費のタイムリーな精算処理をすべきだと説いたのだ。

ポートフォリオ管理はまさしく「ビジネスとIT」をつなぐ行為だ

 話を当連載の主役である「あなた」に移そう。

 もしあなたがITベンダーに属しているなら、お客さまに請求する費用はタイムリーに提出しなければならない。逆に企業内IT部門で何らかの案件をITベンダーに発注しているのなら、請負側に対して正確かつタイムリーな請求書の提出と支払いを要求し、管理しなければならない。

 そして何より、もしあなたが企業内IT部門にいて、幸運にも自社のIT投資が増えるようであれば、まっ先にポートフォリオ管理を実現してもらいたい。なぜならその後に引き続く貴重なIT投資を、自社の方向性やロードマップに即したものにするためには、こうした仕組みが必要不可欠だからだ。IT投資が増えたとしても、それはあくまでも限りのある予算だ。長期視点の優先順位に沿って予算を的確に振り分けるプロセスを確立しておきたい。ビジネスイノベーションに予算を結び付けるために。

 このポートフォリオ管理の実装にあなたが関わることができれば、ビジネスとITが接点を持つ、最も肝の部分に携わることができる。それは企業内IT部門に所属していても、ITベンダー側にいても同じだ。これは必ずあなたのスキルアップにつながると思う。ITサービス財務管理に関わった者は皆、経験上その後ひと皮向けた印象を持った。

 最後に、世間において給与明細が電子化されている/されていない企業の割合というのはどの程度なのだろうか? 幸いにして弊社では電子化されている。給与の振込先に第2、第3口座を設けることもできる。なので、お小遣いの使い道についての妻からのポートフォリオ管理を受けても、第2お小遣いへの投資額をこっそり増やすことが十分可能だ。本連載の筆者2人はもちろんそんなことはしていないが……。

著者プロフィール

久納 信之(くのう のぶゆき)

ServiceNow ソリューションコンサルティング本部 エバンジェリスト

米消費財メーカーP&Gにて長年、国内外のシステム構築、導入プロジェクト、ITオペレーションに従事。1999年からはITILを実践し、ITSMの標準化と効率化に取り組む。itSMF Japan設立に参画するとともにITIL書籍集の日本語化に協力。2004年からは日本ヒューレット・パッカード株式会社、その後、日本アイ・ビー・エム株式会社においてITSMコンサルタント、エバンジェリストとして活動後現在に至る。「デジタルビジネスイノベーション=サービスマネジメント!」が標語・座右の銘。EXIN ITILマネージャ認定試験採点を担当。著書として『アポロ13に学ぶITサービスマネジメント』『ITIL実践の鉄則』『ITILv3実装の要点』(全て技術評論社)などがある。

鉾木 敦司(ほこき あつし)

ServiceNow ビジネス推進担当部長

日本ヒューレット・パッカード株式会社に19年間勤務。顧客システム開発プロジェクト、ハードウェア・プリセールス、ソフトウェア・プリセールス、プリセールス・マネージャー、ソフトウェアビジネス開発に従事。2017年より現職。一男三女の父であり、30年後も多くの日本企業が世界中で大活躍する野望実現のため、サービスマネージメント・プラットフォームの重要性啓蒙活動にいそしむ。電気情報通信学会発表論文に『OSS市場と市販製品の動向-市場成熟度が製品シェアに与える影響』がある。


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