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» 2018年05月23日 05時00分 公開

羽ばたけ!ネットワークエンジニア(4):ネットワークエンジニアは自ら提案し受注しよう! (2/2)

[松田次博,情報化研究会主宰]
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営業では最初が肝心

 ツルハホールディングスの事例にも当てはまるが、営業ではお客さまとの最初の出会いが最も重要だ。2018年4月に受注した愛媛県西条市のコミュニケーションロボットによる見守りサービスの事例を紹介しよう。提案のきっかけは筆者が2017年7月に松山市で行った講演である。

 講演の2週間前に事務局から参加者名簿を送っていただいた。講演を聴く人に応じて内容を検討するためだ。ほとんどが松山市でIT関係の仕事に就いている人だったのだが、西条市の副市長が目に留まった。数少ないITユーザーの立場からの参加者だからだ。よし、この人のためのスライドを盛り込んでおこうと考えた。図2がそのスライドだ。

 高齢化が進み老人が増え続ける一方で、介護や見守りをする人の不足が地方自治体にとって大きな課題になっている。そこで一人住まいのお年寄りを当時話題になっていたAIスピーカーで見守る、というアイデアをスライドにした。

図2 図2 AIスピーカーを使った見守りサービスの考え方を示したスライド

 講演当時、話題になり始めていたGoogle HomeやAmazon EchoといったAIスピーカーを紹介した後で、有望な用途として1人住まいの高齢者の見守りサービスが考えられるということを話した。

 このスライドに副市長が強い関心を持った。講演終了後、筆者のそばにみえて提案を依頼されたのだ。もちろん図2はただのアイデアであり絵に描いた餅だが、AIスピーカーを見守りに使うという独自性に引かれたのだ。お客さまとの最初の出会いでこちらのアイデアやソリューションに強い関心を持ってもらえなければ、商談は始まらない。最初が肝心なのだ。

 すぐに「絵に描いた餅」を実現可能な提案にすべく検討し始めた。その結果、AIスピーカーよりユーザーインタフェースに優れ、見守りに不可欠な各種のセンサーを備えるコミュニケーションロボット「PaPeRo i」を使うことにした。この提案の独自性の第一はこのロボットにある。日本国内では10種類ほどのコミュニケーションロボットが販売されている。だが、センサーを備え、写真やビデオを見るために高齢者のニーズが強いディスプレイを接続できるロボットは、PaPeRo i以外に見当たらなかった。

 もう1つの独自性は、高齢者と家族以外の第三者が見守りに加わる仕組みを設けたことだ。自治体が主体となるサービスならではの機能であり、高齢者の介護で大きな役割を果たすケアマネジャーも参加できる。詳細は2018年3月のこのコラム「コミュニケーションロボット+クラウド型AIで、サービスを創ろう!」を参照してほしい。

 提案を始めて4カ月後には次年度(2018年度)に実証実験をすることが決まり、2018年4月に契約を締結した。4月27日には西条市主催で老人クラブの方や関係者への説明会が開催された。愛媛新聞に掲載された記事に説明会の写真がある(※1)。デモを手伝ってくれたおばあさんの笑顔で分かる通り、ロボットの親しみやすさや使いやすさをご理解いただき、質問もたくさん頂いた。「息子がニューヨークにいるが使えるか?」「ロボットに方言で話しても大丈夫か?」といった内容だ。どちらもYesである。


お客さまの立場で考えよう

 当たり前のことだが、提案はお客さまの立場に沿って考えることが肝要だ。西条市の例では提案活動は講演のスライド作りの時点で始まっている。西条市の副市長に関心を持ってもらうにはその立場に立って、興味を持ってもらえるユースケースを考える。その結果思い付いたのが「高齢者の見守りにAIスピーカーを使う」というアイデアだ。

 「AIスピーカーとはこのようなもので、音声で家電の操作ができて便利です」という一般的な説明をしても、副市長には響かない。副市長の立場に「当てはめた」使い方を提示したために、興味を持ってもらえて提案の機会が得られた。

 同じようにSDNを売ろうとして、一般的なSDNの特徴やメリットを説明しても効果は薄い。相手の企業ネットワークや組織の事情を踏まえた上で例えば次のような提案ができるだろう。「SDNを使うと親会社と子会社のネットワークを物理的に統合してコスト削減し、同時に論理的に分割して独立性を保つことが容易にできます。グループ全体のネットワークの見直しにSDNを検討しましょう」

 このようなアプローチを試みて、初めて具体的な提案の足掛かりができる。


筆者紹介

松田次博(まつだ つぐひろ)

情報化研究会主宰。情報化研究会は情報通信に携わる人の勉強と交流を目的に1984年4月に発足。

IP電話ブームのきっかけとなった「東京ガス・IP電話」、企業と公衆無線LAN事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」など、最新の技術やアイデアを生かした企業ネットワークの構築に豊富な実績がある。企画、提案、設計・構築、運用までプロジェクト責任者として自ら前面に立つのが仕事のスタイル。『自分主義-営業とプロマネを楽しむ30のヒント』(日経BP社刊)『ネットワークエンジニアの心得帳』(同)はじめ多数の著書がある。

東京大学経済学部卒。NTTデータ(法人システム事業本部ネットワーク企画ビジネスユニット長など歴任、2007年NTTデータ プリンシパルITスペシャリスト認定)を経て、現在、NECスマートネットワーク事業部主席技術主幹。


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